* どきどき、 そんな音ばかりが、今のうちの胸には響いていた。 転校生が一番勇気を振り絞るところ、 それは自己紹介だとうちは思う。 うちはそれ以外で人見知りはあんまりしないし、 寧ろ人よりも馴染みやすいほうだ。 そんなうちでさえ緊張してやまないから、というのが理由だ。 先生に教室の前で待ってるように言われてから、 何だかやけに時間が経ったような気がする。 室内からのざわざわという音が、またうちの心臓を刺激した。 「入ってきていいわよ」 中から綺麗な女性、基担任の合図が聞こえ、うちはひとつ、大きく息を吸った。 『緊張したときには深呼吸でもしとけ』 そんな美樹の声が頭に響いた。 ゆっくり教室の扉を開けば、小さくあがる歓声。 わああ…あんまり性格には期待して欲しくないなー…。 先生に導かれるようにして教卓の傍へ寄れば、ぺこりとお辞儀をした。 「い、泉友加梨です…!すっ好きな言語は英語です!」 「日本語じゃねぇのかよ!」 「あはは、泉さんおもしろーい」 うちの言葉に1人の男の子がずっこけると、 いかにも最近のギャルって感じの女の子が笑いだし、 それに続いてみんなも楽しそうに笑ってくれた。 「ふふ、仲良くなれそうね?泉さんの席は窓際の一番後ろよ」 まぁ、そうでしょうね。 …なんて心の中で思いながらも、本当に仲良くなれそうだと、 思わず頬を緩ませながら席に着いた。 |