私は呆れたように溜め息を吐いた。
ああ、流石はこの子だと。


新学期だからといって、私は浮かれることはしない。
今日から2年だの、誰がどう変わっただの、正直どうでもいい様な気がする。
そうは言っても、私の“クラスメイト”だと呼ばれる生徒達は皆、そんな会話をしていたのだが。

「愛実ちゃーん!」
「…あ、来たわ」

入り口から、小さく手を振っている私の“親友”咲野 春菜。
ぽやぽやとしているが真面目でしっかり者。
愛実というのは紛れも無くこの私の事であり、
フルネームは折琴 愛実。

幼稚舎からの仲である彼女とは、クラスの違う今でも、
変わらず良い関係を築いている。

「それにしても…本当春菜って危なっかしいわね」
「えっ…そんな事無いよ?」
「…今だって転びそうになってたじゃない」
「み、見てたの…!?」

それにいつもの事だから予想もつくの、と笑いながら付け足せば、
「酷い!」と恥ずかしげな表情で言われた。
本当、この子の表情は見てて飽きないわ。

それにしても、今に誰かにぶつかられそうで心配だ。
春菜の背が低く、目に付かないのではないかというのも理由ではあるが、
その前に彼女が、自他共に認めるアンラッキー少女である事が一番の理由だ。

…というのも、元旦には毎年階段から落ちたり、
祭りでは必ず迷子になり絡まれたり、楽しいイベント事には雨が降るのだから、
心配するのも当たり前だ。

「…きゃっ」
「え、あ…悪い!」

彼女の事で何やら考えていれば、目の前で起こったその出来事。

男子生徒と春菜が衝突、
…とそこで冒頭に至るわけだ。

何より彼女にとって不運だったのは、

ぶつかった男子生徒が、私のクラスメイトこと、宍戸亮だったことだろう。












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