きみの声は魔法のよう | ナノ



※フロンティアS



(……これで、終わりか)
 鎮まり返った周囲を見渡せば鏡磨は深く息を吐き、緊張を解きほぐしながら抱えていたガトリングを地面へと降ろした。呆気なく終止符が打たれたこの闘いに何か意味はあったのだろうか。頬を掠める生温い風を受けながら鏡磨は此方に駆け寄って来る同胞に目を向けた。流石は我らが王【ロード】、と褒め称える声が幾つも聞こえる。お疲れ様です、と先程まで同じくして前線で激しい死闘を繰り広げていたとは思えない程の落ち着いた、柔らかなしづねの声が下から聞こえる。その全てに応えるものの、何かが足りない、と鏡磨は満たされぬ心に首を捻る。自身の強さを見せ付け、同胞達に称えられ、気分は最高潮の筈なのに。
「ーー……兄貴!」
 腕を組ながらしづねと他愛のない会話を交わしているとよく通る凛とした音が鼓膜を揺らした。この世でただ一人、自分をそう呼ぶ少女の声に鏡磨は心が掻き乱され、満たされていく感覚を覚える。嗚呼、これだ。この声が聞きたかったのだ。どんな言葉よりも彼女が自分を呼ぶそれが、欲しいのだ。
「お疲れ様です、鏡華様」
「うん。しづねもお疲れ様っ」
 ぺこりと頭を垂れるしづねに鏡華は無邪気な笑顔を向け、次いで鏡磨に視線を向けた。そこにしづねに向けたような笑顔はなかったが、微かに赤らんだ頬と何処と無く泳ぐ瞳は自分にだけ向けられる特別なものであると鏡磨は知っている。
「……兄貴も、お疲れ様」
「おうっ。マイスウィートシスターにそう言ってもらえると疲れも全部吹き飛ぶぜ!」 
「はいはい」


140121
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