花束を抱えて | ナノ




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「兄貴、その花束どうしたの?」
「さっき廊下を歩いてたら貰ったんだが、花とか興味ねえんだよな……」
 卓上に置かれたそれに目を向けながら溜め息を吐く鏡磨に鏡華は苦笑する。兄が生徒から花束を始め様々な物を個人的に貰う事は日常茶飯事で、恐らくそれは兄を慕う女子生徒によるものなのだろう。そこにどんな想いが秘められているのかも鏡華は察しているが肝心の本人は気付いていないようで、首を傾げる姿を幾度も目にしてきた。今もまた、花束をどうするべきか考えているのだろう。
「……つーか、俺が花束持っても似合わねえだろ」
「確かに。でも薔薇を選ぶ辺りは兄貴のこと分かってると思うけど」
「そうか? まあ、俺は鏡華がいればどうでもいいんだがな」
「またそれ?」
 棚から花瓶を引き出しながら鏡華は口元を歪める。その反応を予想していたのであろう、鏡磨は特に気にも留めず花束を手にすれば立ち上がり鏡華の元へと向かう。彼女から花瓶を承けとり、花束を差し出すと案の定、首を傾げながら見上げてきた。
「ちょっと持ってみろ」
 言われるがまま、鏡華は花束を抱える。自分よりも色素の薄い彼女には薔薇の赤はよく栄える上にやはり花束は鏡華にこそ似合うものだと改めて感じ、鏡磨は鏡華の頭を撫でながらうんうんと頷く。
「やっぱりこういうのは鏡華の方が似合うな」
「だって私は兄貴と違って何でも似合うからしょうがないでしょ?」
 兄の手を振り払い、くすくすと笑う鏡華を見つめながら、この子には白い花も似合いそうだなーー嗚呼そうだ今度白い花束でもプレゼントしよう、と鏡磨は考えながら花瓶に水を入れるべく備え付けのキッチンへと向かった。



140120
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