001~010 | ナノ



Twitterに投げた文章まとめ。
特に表記のないものは全て鏡磨×鏡華です。






「うん、それでね!」
 頬を赤らめて満面の笑みを浮かべる鏡華の視線の先には必ずあの少年がいる。決して自分に向けられる事のない笑顔は眩しくて、心が抉られるようで。
(なあ、俺に笑顔を見せてくれねぇなら誰にも見せるなよ。不公平だろーが)
 嗚呼、我ながら酷い我儘だ、と鏡磨は静かに嘲笑った。

(お題:いえない我儘)



「兄貴ってさ」
「あァ?」
「本当は臆病者なんだね」
 私が兄貴の想いを受け入れた途端、私に触れる事を躊躇い始めて言動にも迷いが出てる。ずっと兄貴といれば分かるものなの。そっと私が身を乗り出して顔を近付けたらーーほら、逃げた。その挙げ句、押し退けられた。
「ねえ、兄貴は何に怯えてるの?」

(お題:愛する臆病者)



 先程転んだ際に捻ったのであろう、左足首の激しい痛みに鏡華はその場に座り込んで項垂れていた。
「鏡華、立てるか?」
「た、立てるもん……」
「そう言って何分経ってると思ってんだよ」
「うっ……」
 ぽん、と頭を撫でられ何事かと顔を上げれば兄は背中を向けていた。
「たまには俺を頼れって、な?」

(お題:甘えてよ)



「……っ、たぁ」
 弾丸を避けたものの勢い余ってコンクリートの壁に激突、びりびりと痛む肩を押さえながら鏡華は身悶える。すぐ傍でガトリングを構えていた兄が顔色を変えて駆け寄って来るのに気付けば唇をきゅっと噛み締めて顔を上げた。
「私は平気だから早く戻って!」
「け、けどよ……!」
「うるさい!」

(弱い姿は見せたくない)



「鏡華様と鏡磨様ってなんだかんだでバカップルですよね」
「はあ?どの辺が?」
「鏡華ー!」
 溜め息混じりのしづねに問い質そうとした瞬間、背後から兄の声と共に腰に腕が回ってきた。反射的に振り払おうとするも勝てる筈などなく、気恥ずかしさで頬を赤らめながら兄に振り向けば何を思ったのか鏡磨はそのまま自分を抱き締めてきた。勿論、その全てをしづねは見ている。
「離してバカ兄貴!」
「今日も鏡華は可愛いよなあ」
「しづねが見てるから!」
「あァ?じゃあ二人っきりの時ならいいのか?」
「えっ?あ、あー……」
(あーほら鏡華様ってば顔を真っ赤にして頷いてるし……そんな反応すれば余計に鏡磨様止まらなくなるっていうのに。はあ、なんでそう人前でイチャイチャしてるんですかねえ)

(お題:無自覚バカップル)



 堪え切れずに目尻から溢れ落ちた雫は熱い頬を伝う。些細な事で感情的になってしまうのは悪い癖だな、と自己嫌悪に唇を噛み締めていればふいに頭を押さえられ、視界が黒に染まった。何事かと顔を上げようにも自分を捕らえる腕のせいで身動きひとつ出来ない。
「胸貸してやるから、気が済むまで泣けって」
「うるさい……そういうの、いらない」
「素直じゃねえよな、お前は」
 自らも顔を押し付け、頬を擦り寄せるのは泣き顔を見られたくないだけで、決して甘えているわけではない。そう言い訳の言葉を取り繕うも、兄はくつくつと笑いながら優しく後頭部を撫で回してきた。其れが心地良いなんて、言えない。

(お題:黙って泣きやがれ)



 昨夜もまた、睡魔に見舞われる事なく、カーテンの隙間から射し込む光に鏡磨は目を細めた。最低限の睡眠時間を確保しなければ身体が重く、辛いというのに一向にその兆しは見えず。ふらつく足取りで部屋を出ればまるで待ち構えていたようにきっちりと身なりを整えた妹の姿があった。
「おはよう、兄貴」
「あ、ああ……おはよう」
「昨日はちゃんと眠れた?」
「いや、あんまり」
 頭をわしわしと掻きながら答えれば鏡華は溜め息を吐き、その細腕を此方の胸元に伸ばし、部屋に押し戻そうとしてきた。突然の事に狼狽える鏡磨など気にせず、鏡華は急かすように兄を睨む。
「きょ、鏡華?」
「ね、寝れないなら添い寝くらいしてあげてもいいわよ?」
「……鏡華?」
「な、何よ。王が倒れてもみなさいよ、みんな困るでしょ? まあ、私は別にどうでもいいんだけど」
 ぱたん、と扉を閉めながらそう言う鏡華の頬は仄かに赤く、どこか悲しげに見えたのは気のせいではないのだろう。

(お題:幸福な朝/鳩麦家の兄貴は不眠症気味だったり)





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