▽72.





次の日、グラウンドに書かれた大きな文字。

“日本一にします。“と一言。



学校の七不思議の一つとして
噂されるようになったが

誰が書いたか知る人から言わせれば
まるわかりなそれ。



ちょうど正面から来る彼に、何時ものように
『おはよう。』と声をかける。

少し遅れて「おはようございます、ななさん。」
とふわりとした笑みで返してくれる彼に

何時もとは違う『日本一に、しようね。黒子君。』と
言う言葉をかける。




「はい、もちろんです。」



と笑う黒子君の瞳に映る少しの不安が
取り除かれることを祈った。


君なら大丈夫だよ。と思いながら。


















その日の部活。

スキップしながらニッコニコのリコちゃんが
体育館へ入ってきて

怯える日向君達を他所に
「キセキの世代がいるところと練習試合くんじゃった。」
と笑顔で廊下を抜けて行く。


驚いた皆の顔を見ながら、もちろん私も驚いた。

東京都内…だと、緑間君か。

それとも、青峰君か。

黄瀬君という線もありうる。



悶々と悩んでいると横からひょんと黒子君が
「青峰君が来ることはないと思いますよ?」
と私の心を読んでかそう、呟く。

『うひゃっ!』と声をあげおののくと


火神君が「お前でも驚くことあんだな。」と
笑っていて『たまにはね。』と言い返す。

するとフォーミングアップ中の火神君が
スリーポイントからシュート練をしながら


「案外可愛い所もあんだな。 」

と笑い気味に言うものだから、少し気恥ずかしくなり
戸惑うとすかさず黒子君が

「火神君…変態発言は控えてください。怒りますよ。」

と火神君にボールを投げつける。
「いって!既に怒ってるじゃねーか!!」なんて
怒る火神君に「怒ってません。」と言い張る黒子君は


私なんかより可愛かった。




それから数日。









練習をしながらリコちゃんが
練習試合を組んだ学校の話をようやくしてくれる。

ニコニコするばかりで
なかなか話してくれなかったのだ。




対戦高校は海常高校。








「相手にとっては不足なし!!
 一年もガンガン使っていくよ!!」

と、ぐっと握りこぶしを作るリコちゃんは
やる気満々だ。

「格上じゃねーか。」と言う日向君はどんな学校か
皆に説明している。


「それよりカントク帰ってきた時に言ってた
 あれマジ?」

と少し震えた声の日向君が問うと
ニコニコしていたリコちゃんもピリッとした雰囲気で

「もちろん!海常は今年キセキの世代
 黄瀬涼太を獲得したところよ。」


リコちゃんの言葉に「あの!?」と驚くなか
日向君は「しかもあいつモデルもやってる。」と
物凄く僻んでいる。

その、姿に笑みが溢れるが名前ですごまないのは
彼らの二先生の余裕か。


すると、ざわざわと賑わい出す体育館。

気がつくとギャラリーが増えていて

「あーあ、こんなつもりじゃなかったんだけど。」

と聞き覚えのある声が聞こえる。
これは、間違いなく



黄瀬君の声だ。


それに気がついた面々は驚き黒子君は
小さな声で「お久しぶりです。」と呟く。


「いやー次の対戦相手が誠凛だって聞いて
 黒子っちが入ったの思い出したんで

 挨拶に来たんスけど…ななっちも
 いただなんて思わなかったス。

 もう、身体は良いんスか?」


気まずそうに目を伏せる黄瀬君。

別に黄瀬君達が悪いわけでないのに。
黒子君もそうだが川に落ちてから彼らは私を
腫れ物の様に扱う節がある。

『大丈夫だよ?ごめんね連絡もしないで。』

と笑えば直ぐにパーっと顔を明るくし
「ななっち!!!」と激しいタックルを
してきたと思えばぎゅーっと抱き締められる、


しかし、まぁ、彼らしい感情の表しかたと言うか
なんというかと呆れてしまうが
笑ってしまうのも事実で。

黙って見ていた黒子がついに
私と黄瀬君を


「やめてください、黄瀬君。
 黄瀬君のせいでななさんがの体調に害を 及ぼします。」

と引き離したのはこの、数秒後のことだった。

反対に皆は月バスの黄瀬君の特集を見ながらわいわいしていて
純粋に彼の能力に驚く一年と

黒子君と仲が良いだの悪いだのとか
下っぱだったからイジられただどうだとか

そんな話を黄瀬君達はしていて

人知れず溜め息を吐くと

火神君が黄瀬君にボールを投げつけて挑発する。
乗り気ではなかった黄瀬君も、
「いいもん見せてくれたお礼。」と称し挑発を受ける。


勝敗は火神君の負け。


黄瀬君の完全模倣。

しかし、パワーとスピードは火神君のそれを
上回るものだった。


「…こんな拍子抜けじゃ。
 やっぱ黒子っちください。

 ウチにおいでよ。
 また、一緒にバスケ……『ごめん!』。」


黄瀬君が黒子君を誘う、その声より大きく
その言葉を切る。

「…ななっち…。」

もちろん驚いているのは黄瀬君だけじゃなく
視線がチクチクと刺さるが気にしない。
すると表情を変えなかった黒子君が
頭を下げて



「そんな風に言ってもらえるのは光栄です。
 …丁重にお断りさせて頂きます。」



「!?文脈おかしくねぇ!??」







と、きっぱり、ぱっさり、パッキリ断られていて
トホホーと落ち込んでいる。

しかし、断られたことに苛立ったのか
はたまた、焦ったのか

「らしくねぇっスよ!
 勝つことが全てだったじゃん!
 何でもっと強いとこいかないの!?」

と声を荒らげる。

それでも黒子君は動じない。



「あの時から考えが変わったんです。
 何より火神君と約束しました。

 君達を…キセキの世代を倒すと。」


淡々とではあるが意思のこもった言葉。

雰囲気

表情に

さすがの黄瀬君も空気を張りつめる。



「やっぱらしくねぇっスよ。そんな冗談言うなんて。」


いつもより低い声、
緊張感が走る中「ハハっ!」と火神君の笑い声が
体育館に響く。

彼は負けたこを、楽しそうに受け止めているのだ。


「ったく、なんだよ。俺の台詞とんな黒子。」

火神君の言葉に、誠凛の士気が上がるのが
良くわかる。
彼の言葉が与える影響は大きいのだ。


黄瀬君は
「…こんだけはっきり黒子っちに断れたんなら
 仕方ないっスね。

 喧嘩も売られたことだし練習試合…楽しみにしてるっス。」


と踵を反し背を向け手をヒラヒラさせてかえって行く。
その背に、向かい私は


『ねぇ、黄瀬君。』と静かに話しかける。

その声に彼は気づき振り返る素振りを
一瞬見せるも振り返らないまま立ち止まる。














『…勝つことが全てだったのは、いつから?』









どうか、どうか、彼が思い出しますように。


青峰君に憧れて始めたあの時の気持ちを。


寂しかった風の音が聞こえなくなった日を。









君はまだ、戻れるんだ。































▽▲














部活の途中に監督と笠松先輩から
次の練習試合を誠凛とすることを聞いて

居てもたってもいられず体育館を飛び出した。



誠凛に黒子っちが入ったのを思い出したからだ。




もしかしたら、ななっちもいるかもしれない。
そうも同時に思ったからで
俺らキセキの世代と呼ばれた仲間達はななっちの
行方をよく知らない。


彼女が川に落ちてから

気まずくなってしまい


なんとなく、



なんとなくだか、話せなくなっていたのだ。



彼女が川に落ちた日から
目に見えるほど変わった部内の雰囲気。

幾度となく彼女がいれば…と
寝てるななっちの病室に足を運んだ。

そんな風に彼女逃げていたのに再会したのは
最低、最悪のタイミングで。


そうだ、それ以降から話さなくなったんだ。


そう思い出して誠凛高校の門をくぐった。



そしたら、どうっスか。

体育館にいるななっちの姿見て
俺柄にもなく緊張したんスよ?


セーラー服に萌えたとかじゃなくて

純粋に会えて嬉しくて

拒絶されるかと思ったら

ふんわりと笑いあっさりと受け止めてくれる。


でも、正直俺から見た誠凛高校は拍子抜けで
黒子っちを誘うも断られ
しぶしぶ帰ろうと思ったスのに

凛とした声が俺を呼び止める。


振り返ろうと、、思ったのに
俺の脳が振り返るな。と警告し途中で止まる身体。




次に聞こえてきた言葉は












『……勝つことが全てだったのは、いつから?』








と俺に問いかける言葉は
あんなに振り返っちゃ駄目だと思ったのに
その声に、言葉に俺は振り返ってしまう、




目があった彼女は



泣きそうな顔で笑っていて

あぁ、俺ら彼女を傷つけいたことには
変わりは無いんだって

誰かにいわれているような気がした。




























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