▽69,







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「これからお互い、敵同士だ。

 次は高校の、全国の舞台で会おう。」







「まぁ、そうスけど、そんなすぐ殺伐しなくても。」







「たまたま、ばらけただけだしねー。」








「たまたま?…違うな。

 強豪となれば、数はそう多くはない。
 だが、あえて同じ学校に行こうとは全員、微塵も思わなかった。

 そもそも僕らはキセキの世代などと
 ひとくくりに呼ばれるのを嫌悪している。

 もし、戦えば必ず優劣がつくはずだし、
 自分より上がいる筈がない。

 それを証明する為に自分以外を淘汰しなければ、
 気が済まない。



 理屈ではなく、本能が。」










「まぁ…そうッスよね。」










「だろうよ。」










「否定する気はないのだよ。」










「黒ちんにはわかんないだろうね。」








「…いや、目指すものはまったく違うが、
 テツヤも必ずこの戦いに加わるはずだ。

 答えがまだ全て出たわけではないだが、
 それでも決めたようだからね。」

















「ななと共に自分のバスケを曲げない覚悟だけは。」



















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心地良い春風と共に迎えた入学式。

正直私は既に疲れきっている。

本来ならば黒子君と一緒に登校したかったのだが、
朝から花宮君に電話で呼び出されて
花宮君の家に寄っていたのだ。





しかも、ちゃっかりと今吉さんまでいて。

どうやら、ブレザーの帝光から
セーラー服に変わった姿が見たいとかなんとか。

少し面倒ではあったが花宮君は用件だけ伝えると
一方的にきっちゃうし

仕方なく行くと私の格好を見た花宮ママさんが

「息子も良いけど娘もほしかったわ。」


と一番喜んで?くれて、まぁ良かったかとも思う。


花宮ママさんにはお世話になってるし。



今吉さんも今吉さんで
「似合っとるよ?」と笑いかけてくれて
心配はしていなかったが少し安心する。

すると、ずっとだんまりを決め込んでいた花宮君が

「…スカートが短い。」

としかめっ面でポツリと呟く。



はっとし言われてみて確認するも
この世界ではこの短さは意外と普通だと私は思う。

膝上やや10センチ程度。

いや、10センチもないかもしれない。

だって、さつきちゃんより長いもの。





"そんなことない"と
言い返そうとすると今吉さんが

「ワシはもう一段短くてもえぇと思うけどなー?」



嘘か、

本当か、

いつもの調子で言うと
今吉さんを花宮君が睨み、

その眼光のままこちらにくるりと振り返る。


「いいか、なな。
 変な男にはついて行くな。

 スカートもそれ以上短くしても駄目だ。
 …周りに迷惑かけんだろうが、ばぁーか。」

と軽く頭を小突かれる。

『なんだとぅ!!周りに迷惑!?

 …確かにスタイルが飛びぬけて良い訳じゃないけど!』

と私が怒っている横で
「男の独占欲は怖いわぁ。」と
今吉さんが呟いていたことは露知らず。





そんなこんなで朝から花宮君と
くだらな言い合いのおかげで疲れいるわけだけれども

今日私は行かなければならないところがあるので、
そうも言っていられない。










勧誘の先輩達や新入生を掻き分けて歩くと

周りの人より頭一つ二つ飛びぬけている
長身の男の子が目に入る。

ぴりぴりとした雰囲気を隠そうともせず

野生の生き物のような勇ましさ。
間違いなく、あれは火神大我。




丁度バスケ部のブースで入部届けを書いていたようで
その姿に自然と笑みが出てしまう。

火神君が立ち去った後私も急いでバスケ部のブースに行き

『すみません。』


と控えめに声をかけると
「あら?女子バスケはあっちよ?」
とショートカットの女の子にさらりと返される。

『あ、いえ。あの、
 男子バスケ部のマネージャー希望なんですけど…。』

と再度控えめに言うと驚いた顔する面々。



「マネージャーは募集してないんだけど
 …話だけでも聞かせちょうだい。」


と椅子に座るよう促される。

「ちょ、カントク!」
と止める短髪の男の子に一礼し座る。


「紹介が遅れたわね?
 私は誠凛高校2年男子バスケ部の監督
 相田リコよ。よろしく…でこっちが、」


と隣に目配せするリコちゃん。


「俺は主将の日向順平だ。よろしく。」

と固めの挨拶をする。


『監督に主将、ですか。…よろしくお願いします。
 私は帝光中出身の浅葱ななです。』



と言えば目に見えて分かるほどリコちゃんの顔が光る。


「あなた!帝光出身!?…まさかマネージャー経験が!?」

息巻くように話すリコちゃんに少し気おされながらも
『…は、はい。』と答えれば手を握られ
「合格!!」とぶんぶん上下に手を振る。




「おい、カントク嬉しいのは分かるが落ち着けって!
 …えーっと浅葱さん?だっけ?」

と日向君が申し訳なさそうに頭を掻く。

『ななで大丈夫です。』
と笑えば「おう。」と笑い返される。


「えーっと、じゃぁななはさ、
 なんでわざわざ新設校のうちのマネージャーに?」

と聞かれなんと答えようか迷っているときに見えた
一枚の入部申請書。

それを持ち上げ差しだし








『彼を支えるため。』








と言えばその紙に視線を落とす二人。




「えぇぇぇぇー!帝光ぉ!!!?」


「もしかして、今年の一年ヤバイ?」


きっと、この用紙に書かれている名前…黒子君に
直接会ったらもっと驚くんだろうなと

思い一人笑みがこぼれる。





ここから、再スタートをきるんだと
自分に言い聞かせながら。















翌日、さっそくリコちゃんから連絡があり

「放課後体育館集合ね!
 でも、その前に更衣室によって行ってねー!」
と可愛らしいメールが入っていた。


その内容に一人微笑みながら
携帯をカバンにしまい更衣室へ向かった。




帝光中に比べれば小さめの体育館に
数が比較的少ない更衣室。

しかし、どれもこれも真新しく
綺麗で新設校というだけはある。






バスケ部と書かれた更衣室を覗くと
丁度日向君が出てきて

『あ、日向く…さん。』

と君と言ってしまいそうなところを何とか飲み込む。

日向君は
「お、来た来た。」
と私の顔を確認するとまたしても更衣室に戻っていく。




どうしたんだろ?と思っていると

「おおおおおお!女子マネージャー!!」
と茶色い髪の猫っぽい少年がバンと勢い良くドアを開く。


その少年を後ろから
「はしゃぐなダアホ!!」と日向君が叩く。

「痛いっ!」と言いながらも笑顔のままこちらに近寄り

「おれ小金井!よろしくな!!」


と満面の笑みで挨拶され自分も名乗り握手する。

「わりぃ、今までマネージャーとかいたことなかったもんで
 こいつらはしゃいで。」
と何故だか日向君が申し訳なさそうにしていて


「んで、こっちが水戸部ね……ん?
 水戸部もよろしくってさ!!」


と定番ではあるが、
こちらも何故だか意思疎通の図れる二人を生で見れて
少しテンションがあがる。



『よろしくおねがいします。』
と言えば笑ってうなずく水戸部君。



「…じゃ、最後は俺だな。」

と皆の後ろからひょこっと現れたのは
残念なイケメン代表組の一人。

すると小金井君が

「伊月ー!可愛いマネージャーだぞ!」

と肘でつんつんと茶化すようにつつく。

もちろん、それによりこちらを向くわけで
バッチっと目が合う。






ところまでは良かった。


しかし、彼の残念な部分は直ぐに表に現れる。




「はっ!!…可憐な花は枯れん花!キタコレ!」


とガッツポーズをする。

それも、満足げに。


とりあえず、どうしていいか分からず黙っていると


「黙れ伊月。むしろ枯れろ。」

と日向君の突っ込みが入り私はついに我慢できずに
声に出して笑ってしまう。

『ふふふ、皆仲が良いんですね。』




特別なことはない。


彼らにとっての日常。




それでも、殺伐とした帝光での
雰囲気を知ってしまっている者からすれば







ここはとても暖かく、優しい。




日向君は少し照れくさそうに頭を掻いていたが
周りの皆もつられて笑っていて

「たっく、そんなんじゃねーよ。
 …ほら、カントクに怒られっから行くぞ。」

と日向君が照れくささからか

スタスタと歩き出し


「日向はいつもあんな感じだけど良い奴だから
 …あと俺は伊月俊。行こっか?」


と伊月君に手を引かれ日向君の後を追う。


このあとは、恒例の数値検査があるわけで。



緩む顔を人知れず引き締め体育館へ入った。

































































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