▽78,






後日、視聴覚室で行われた
正邦の試合観賞。




正邦のバスケは独特な動きで
普通のバスケとは違う息の取り方。



リコちゃんいわくバスケとは全く別の
「古武術」と言うらしい。



一概に「古武術」と言われてピンと来ない私は
スポーツにさほど詳しくない。
それでも、そんな私から見て分かるほど
彼らは独特でめんどくさそうな雰囲気で
いっぱいだった。

げんに
皆、正邦の試合を見つつ
顔が引きつっているような気もする。


対象の方法が分からない「古武術」に

どうしたものかと悩んでいると
おもむろにスクリーンを見つめながら
日向君が

「…あのさ、作戦ってほどじゃねーけど
 ひとつ思い付いた。」

と呟き雰囲気は一転。




日向君から提案された作戦は日向君らしい
作戦内容で反対する者もおらず賛成し
そこからの話はとても早かった。





私はせめて皆がうまく出来るようサポートしか
出来ないけれど作戦を練っているこの時間が好きだ。



『…作戦、上手くいくといいね。』


何気なく近くに居た黒子君にそう声をかけると
当たり前だと言わんばかりの顔で

「えぇ。勝つ気しかしません。」

と言われ二人で笑っていると

「気しか、じゃねぇ。勝つんだ!」

と熱く火神君に突っ込まれて『そうだね、』と
返し勝利を確信する。

言葉は形になるって言うけど
火神君に関しては本当だなって何度も思う。

彼の言葉は力だと。








それからは練習を正邦の対策メニューを
中心とし行う日々が続いた帰り


「今日は一緒に帰りませんか?」


と黒子君から誘われてマジバでシェイクを2つ
購入しストリートバスケットコートのベンチに座る。


『どう?練習のコツは掴めてきた?』

ズズッとシェイクを啜りながら訪ねると
「えぇ、まぁ。順調ではあります。
 あとは、実践あるのみなのですが…。」
と返事をし黒子君も、
前を見つめながらシェイクを飲んでいるのだけど


なんだか、少し怒っている?
そんな様なぴりりとした雰囲気が
漂ってくる。

これは、どうしたの?
と聞く方がいいのだろうかと
悩んでいる内に黒子君から話し出す。


「先日、珍しく緑間君からメールがありました。
 …貴女が正邦の一年生に絡まれていた。
 そう書かれていました。」

そこまで言うと黒子君はシェイクを自分の横に置き
私の肩に手を置き、くるりとこちらを向く。




「どうして、もっと早く言ってくれなかったんですか?」




「僕は、僕達はそんなに頼りないでしょうか?」




黒子君に捕まれた肩から彼が少しだけ
震えている
…そんな気がして言葉を返せずにいると

ポツリ、ポツリとまた黒子君が話し出す。


「中学の時からそうです。
 ななさんはいつも誰も頼らない。

 いつも一人で抱え込んで気がついたときは
 いつも僕達は遅い。

 そんなの…もう嫌なんです。

 何も出来なくて、何も気づけなくて
 貴女を一人にしたく、ないんです!」


言い切ると黒子君は息を整えつつ
シェイクを手に取り直す。


『…いつも、かぁ。』


気にしたことは無かった。

それが重荷だと思った事もなかった。

何故だかそれが自分のしなければならないことだと
思っていたから。


そうでないと


どうして、自分がこの世界に来たのか


そうでないと

どうして、自分がここに彼らと居るか



理由が解らなくなって

自分が押し潰されそうに、なるから。




『…別に黒子君達を頼りないって、
 思ったことないよ?

 それに、一人で抱え込んでいるつもりも
 、なかった。

 でも、それで黒子君達を傷つけていたんなら
 ごめんね?』


静かに聞く黒子君は困ったように笑いながら

「そうゆう性格だと知っていますから
 今すぐとは、言いません。
 頼って、ください。

 力になれなくても助けにならなくても
 駆けつける事は出来ます。」

と、笑みを向けてくれる彼に

『ありがとう。』と返し家路を急ぐ。



帰りの途中で


「とりあえず、正邦の津川君には
 腹を立ててるので必ず勝ちます。」

と、意気込む黒子君が
とても可愛らしかったけれど
言ったら怒りそうなので


言わないことにし帰った。







そんなこんなで迎えた当日。





控え室は想像通りどんよりした雰囲気で
王者との二戦に緊張していて
どうしようかと悩んでいると
リコちゃんも同じ様に悩んでいたようで

「元気の出るご褒美をひとつ思い出したわ。」

とゆっくり立ち上がると

「次の試合勝ったら
 皆のほっぺにチューしてあげる!
 これでどーだ!」

とウインクするリコちゃん。

凄く無理してる感が否めない。


その証拠にメンバー総出で突っ込む。

何とか止めようとするも
その前にリコちゃんがぶちギレてしまい



「ガタガタ言わんとシャキッとせんかーい!
 ボケー!!

 去年の借り返すんだろ!ええおい!
 一年分利子ついて
 えらい額になってんぞこらー!」


『り、リコちゃん…!!』

息を切らしながら怒るリコちゃんを
水戸部君と急いで止めに入るも
それを日向君達は笑って見ていて
「わりー。」と言いながら一度深呼吸をし
前を見据える。


「行く前に改めて言っとく。
 …試合始まればすぐ体感するけど
 一年はちゃんと腹括っとけよ。

 正邦は強い!!

 ぶっちゃけ去年の大敗で
 俺らはバスケが嫌いになって
 もうちょいでバスケやめそうになった。」


「けど、去年とは同じには絶対ならねー。
 それだけは確信できるくらい強くなった
 自信はあるからな。

 あとは、…勝つだけだ!!行くぞ!!」


その日向君の声に合わせて皆が「おおー!」と
声をあげる。

これは、負けられない、

先輩達の戦いなのだ。


雪辱を晴らすための。


私も気合いを入れねばと
一人意気込み歩き出す。





まずは打倒、正邦。










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