▲見つめている

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始めて会ったのは屋上でのことだった。


生きる気もなければ死ぬ気もない
無と言った感じが似合う

そんな女の子だと思った。




何かに見限られ、見限り

投げ捨ててしまった様な。






俺は中学から高校、今大学にかけて
バスケやってんだけど

こうゆう雰囲気の奴は、万と見てきた。


特に俺らの時代は"キセキの世代"っつー化け物がいるし?

そいつらと戦って心折れて
辞めていったやつらと似たような投げやりな雰囲気だった。


ただ、違ったのは



『目に悪い色…。』





そう言う風に悪態つけることだと。

















「柚木!おっはよー。」



大きい大学内で人数も多いこの学校。

一目で分かるのは同じバスケをしてた連中と
柚木くらいだ。

柚木は自販機でいつものジュースを片手に
『おはよう高尾君。』
と手を振る。

周りの男子が少し俺のことをチラチラ気にしているあたり
彼氏かどうか見極めてんだろうな。と思う。


けど、お前らにはやんねーよ?と言う
目つきで軽く睨めば引いていく腰抜け。



俺、これでキセキの世代と良くつるんでんだから
お前らごときじゃ怯まねぇーつーの。



『怖い顔して、どした?』

と首をかしげる可愛らしいこの馬鹿に

「変な虫がいたのっ。」
と軽く頭小突く。

どんだけ鈍感なんだよ。と言う気持ちもこめて。


『そういえば今日は一人なんてめずらしいね?』

とあたりを見渡す柚木。


「あー真ちゃん今日は遅れるって言ってたぜ?
 鈴屋先輩とこ寄って来んみたい。」




ま、

今日の朝の出来事なんだけど
真ちゃんからメールがあって

「ちづ(鈴屋先輩)の具合が良くないのだよ。
 俺は様子を見てから大学には行く。

 高尾、お前は先に行っててくれ。」




と、何時もよりはるかに多い文字数の真ちゃんに
苦笑しつつ「おっけー。」と返事をしたのだ。




『…そう、先輩のところに。』

と、何だか情けなさそうに笑う柚木を見て
チクンと痛む心。

分かってる。



真ちゃんや鈴屋先輩は気がついてねーだろうけど
柚木が真ちゃん好きなのは

分かってる。





昔っから柚木は真ちゃんのこと
知ってたみたいで

いつから真ちゃんのこと好きだか
わかんねーけど、


だけど

真ちゃん忘れちゃってるし?彼女いるし?



てか、この大学で柚木見つけたの
俺が先だしね。


なんとかして、こっちに振り向かせたいわけですよ。




でも、まぁ真ちゃんが恋敵となれば
こりゃ前途多難だなと自分でも思うさ。



でも、好きなんだよな。


どうしても。



「ま、待ってりゃそのうち来るっしょ?
 気長に待とうぜ?」

とふわふわした髪の上に手をおき撫でると
気持ち良さそうに少し目を閉じる柚木。

ゆっくり目を開けると
『ふふ、そうだね。』と笑う。


どうか、どうか、そんな顔を俺の前でしないでほしい。

そんな言葉は伝えられず喉を通り飲み込み
「落ち込みすぎっしょ。」と冗談っぽく言うと
『そ、そんなんじゃないから。…もぅ。』と
むくれる。


『じゃ、一緒に行こう。
 次の時間の学科一緒だったでしょ?

 緑間君は取ってなかったし
 調度良いいわ。』

と笑う無邪気な彼女の幸せを純粋に

望めない

望んであげられない俺は



既に歪んでいるんだろうか。














でも、真ちゃんも、柚木にも

傷ついてほしくない。



なんて、思う俺もいる。





それは、どうゆうことか
もう結果を弾き出しているのに

気付かないふりをして彼女の横を歩いた。















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