▲いつも

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いつも、私が先に貴方を見つけて

貴方は私に気がついてくれたことはない。



そして、行動に移すことのできない私は


臆病で。

自分でも嫌気がさす。










  
 
 


『緑間君ってあんなに電波なのに彼女いたんだー。』



昼時に、高尾君と緑間君とご飯を食堂で食べてたいると
綺麗な女性が近くまで近づきペコリと頭を下げる。

それに、気がついた緑間君は席を立ち
その女性の方に行ってしまったのだ。


まさか、とは思ったが


高尾君に『緑間君の彼女?』と聞けば
「そー。高校ん時の先輩。」と
羨ましそうに見ていた。


どうやら、一つ上の先輩で学校でも人気があったんだとか。



そして、緑間君といることで分かったのは
おは朝占いをこの上なく信頼している。


と、言うこと。



『綺麗な人だね。しかも、可愛らしさも兼ね備えてるとは
 向かうとこ敵なしじゃん。』

綺麗な薄い茶色のふんわりロング。

柔らかい雰囲気をかもし出す守ってあげたい系の女の子。





何でもサバサバと決めてしまう私とは縁遠いタイプだ。





『…−本当に、きれーな人。』

とポツリと呟けばなぜか緑間君と彼女さん二人で
こちらに戻って来る。



何事??と高尾君を見ると
さあ?と手をあげる。



すると、緑間君の彼女さんが
「こんにちわ。私、鈴屋ちづって言うんだけど…
 柚木ちゃん?で、よかったかしら?」

と話しかけられて、ドキリと鼓動が鳴る。



『え、あ、はい!』

なんて完全に動揺しきって話すと
ふんわりとした笑みを浮かべる彼女さんこと
鈴屋さん。


「いきなりごめんね?高尾君も久しぶり。
 お願い事があって…、」


と、歯切れ悪く話す。


「先輩から俺らにっすか?」

と話すところを見ると、やはり高尾君も知り合いなのか。
すると、黙っていた緑間君が見かねて先輩の代わりに話し出す。


「高尾には話していたが今度バスケの集まりがあってな。
 旧友との集まりなのだが、

 彼女をつれてこいと馬鹿どもが騒ぎ散らかすので
 困っているのだよ。


 …まあ、それでなんだが、高尾と柚木も来い。」


やや、最後の方はなげやりに来い。と言い放つ緑間君。
「まじ、真ちゃんは真ちゃんだな。」
と、呆れる高尾君の横で現状理解ができず
ポカーンとしていると

鈴屋さんがパンと手を合わせて



「高尾君、柚木ちゃん、本当にごめん!
 でも、私だけだと心細いし
 誰か同じ立場の人が一緒にいてほしいの。」

と彼女さんからも頼み込まれて
とうとう、断りづらくなる。




「俺は別に知らない仲じゃないんでいいっすけど
 柚木にはちょっと辛いんじゃね?」


と高尾君がフォローしてくれるも
鈴屋さんが「女の子があんまりいないそうなの。」と
言われて『じゃ、じゃぁ…。』と

と言うと嬉しそうに微笑まれて
ぐさりと胸に刺さった。



せめて、貴女の性格が悪かったならば…と。















そうして迎えた集まりの日。









皆でストリートバスケをするらしい。

私は人並み程度にルールは知っているが
運動神経はさして良くない。

それに、皆とまざってバスケをするにしても

緑間君と高尾君以外は初対面だし
無理だな。と判断し見学に徹しようと思った。




『…しっかしまぁ、圧巻ですな。こんなにカラフルだと。』


どこかで聞いたことのある言葉だと高尾君は笑っていたが
本当にカラフルなのだ。

赤、青、黄色、緑、紫、水色、ピンク、
鈴屋さんは茶色だし、

ちらほら、黒色もいるけれど
大人数過ぎて目が回りそうだ。


すると、ピンクの女の子がこちらに駆け寄ってくる。



「始めまして!みどりんの友達だよね?
 私は桃井さつき、さつきでいーよ?」

とニコニコ話しかけてくれて
すごく可愛い。

なんだって彼の周りは綺麗な人が多いんだか。



『よろしく。私は…』

と言うと手をずいっと出されて


「知ってるよー。大野柚木ちゃん。
 学校ではクールビューティで通ってて
 隠れたファンもいるって話だよ?」


なんて言われるが初耳だぞ。こら。


『そう?始めてきいたけど…。でも、ありがとう。


 そっか、一応大学は皆同じだったね。』


と、笑えば「学科が多いから会うことも少ないけどね?」と
さつきちゃんは笑っていて。


「でもー、みどりんがこんな可愛い彼女と
 綺麗な友達作るとは思わなかったよ。

 きーちゃんならともかく。」




『きーちゃん?』






と聞き返せば、あの黄色の。と一緒にいてくれた
高尾君が教えてくれる。


『あー、…モデルの黄瀬君。』


何処かで見たことあると思っていたけど
そういや、友達がキャーキャーと騒いでたな。

キセリョが、同じ学校だって。



「あれ?意外ときーちゃんには興味なし?」

とさつきちゃんに顔を覗かれ
緑間君への気持ちがバレるかと思いどきりとするも
高尾君が

「柚木はミーハーじゃねーの。」

とフォローしてくれる。
この間から高尾君には助けてもらってばかりだ。

すると、緑間君と彼女を冷やかしていた取り巻きを掻き分け
緑間君が「ーっ高尾!いい加減助けるのだよ!!」と
叫んでいて「へーへー。全くいつもマイペースなのなー。」

と文句を言いながら助けにいく。




『困った人達だね。』とさつきちゃんと顔を見合わせて笑い
「私たちも行こう?」と二人で輪に入ると


「…もしかして、柚木?」


と言われ声が聞こえた方に目を向けると
なつかしい知り合いがいて。


『…征十郎君?』


つり目の赤い綺麗な髪。

何歳かわからない落ち着きぶり。

間違いなく赤司征十郎君で。



「久しぶりだね。まさか、こんなところで会うとは。」

とふわりと微笑まれる征十郎君の笑みは
昔に比べて柔らかくなったような印象で。


すると、緑間君が

「知り合いだったのか!?」と驚いている。

…と言うより鈴屋先輩以外は驚いている。

何か変なことをだっただろうか?


「ああ、昔に何度か一緒にバイオリンのコンクールに
 出てもらっていたんだ。
 俺の伴奏としてね。」

そう、自分のピアノの練習と一緒に伴奏も
行っていたが征十郎君とは
講師が一緒という理由で良く一緒に出ていた気がする。




『本当に久しぶりだね。…そっかバスケやってたんだ。』


と懐かしさと感傷に浸っていると


「赤司君のことを名前で呼ぶ女性がいるとは
 …レアですね。」

と、何処からともなく男の子が現れビクッとするも
良く見れば高尾君に紹介してもらった影薄い子だ。
 
『びっくりしたぁ。』なんて言いながら
話せば、突如さつきちゃんが、

「テツくうーん!」と叫び激しく体当たりをする。


『さ、ささささつきちゃん!?あと影っ子大丈夫!?』

激しい体当たりに耐えきれなかった影っ子は
さつきちゃんと共に倒れていく。

横で高尾君は爆笑中。


「あれは、いつもことなのだよ。お前が気にかけてやる
 必要はない。」

と、緑間君は言っていたが本当に大丈夫だろうか?



『緑間君の友達って皆濃いね。
 でも、暖かくって優しくてもてそう。』


と呟けば
「さぁ?あまりそう言ったことには興味はないが
 柚木もかなりもてると高尾が言っていたのだよ。

 俺はそんなに自分を卑下せずとも、良いと思うのだかな。

 それに……」



「お前に至っては優しすぎるくらいだ。
 もっとわがままを言うのだよ。」





不意に言われた言葉に胸がきゅんとする。

深い意味はない。

ましてや、そこに恋愛感情も彼にはない。



それでも、甘えてもいいんだよ。と私に対して言われたことが
嬉しかった。


『…緑間君ギザ。』と照れた顔を誤魔化すように言えば
「むっ?」と眼鏡のブリッジをあげていて

彼もまた少し顔が赤くなっていた。



しかし、そんな甘い時間は簡単に過ぎて行き



「緑間っちー!大変っすー!青峰っちが
 緑間っちの彼女にセクハラ発言してるっす!」

と少し慌てて黄瀬君が叫んでいて


「何!?ーっあーおーみーねー!」と
先程より顔を赤くした緑間君が走っていく。

「は?黄瀬てめぇ!…ちげーよ緑間!話せばわかる。」

と、青峰と呼ばれた青い人も慌てている。
私は緑間君の彼女、鈴屋先輩の所までいき

『鈴屋先輩大丈夫ですか?』



と声をかける。



「大丈夫よ?…ただちょっとバストサイズを聞かれて」と
困ったように笑っていて
初対面の人にそれはないわ。と絶句したが

「これも、いつもの事です。」

と影っ子に心の中の声に突っ込みを入れられる。



『おおぅ!?また、びっくりしたぁ。
 …てさつきちゃんは?』

さつきちゃんに押し潰されていたはずの影っ子は
いつの間にはさつきちゃんの手をすり抜けていて。


「桃井さんなら青峰君をシバきに行きました。
 あそこの二人は幼馴染みなので。

 …あと、影っ子ではありません。
 黒子テツヤです。」

と真顔で言われ「は、はい。」と頷く。


影っ子意外と物怖じしない強い性格だな。

すると、鈴屋先輩も「テツヤ君ね?わかったわ。よろしく?」と
スマートに手を出して握手を交わす。流石だ。



すると「黒子っちー。」と黄瀬君が皆の輪から
抜けてくる。

「さっきからずるいっス!一人だけ上手いこと逃げてー。
 俺ずっと皆に巻き込まれてー。」


と眉を下げている。


『おっきい、ワンコね。』とこれまた誰にも聞こえない程度に
呟いたはずなのに

「的は得ています。」

と影っ子…じゃなかった黒子君が言う。


『何?君読心術に長けてるの?』

と聞けば
「そうゆう、ポジションですからね。」
と今日初の黒子君の笑みを見る。


「黒子っちから笑うなんて珍しいっすね!
 えーっと、どちらさん?」

黒子君と話しているとへぇーと声を漏らしながら
黄瀬君が話しかけてくる。



『あー、えっと友達の大野柚木。
 よろしく。あと…』と先輩の紹介をしようとすると

先輩から少し前に出てきて


「私は鈴屋ちづ、真太郎の彼女なの。」
とふんわりと笑う。


チクリと傷む心。




名前で呼べることが


彼女と言う響きが



こんなにも痛い言葉だとは思いもよらなかった。



やっぱり今日はくるんじゃなかったと









緑間君は優しいと。そう言ってくれたが
私はこんなにも汚いのだと。




そう思った。















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