▲始まりは,

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始めて緑の彼と出会ったのは小学生の時だった。
習い事で行っていたピアノの発表会だ。


しかし出会った、と言っても私が一方的に覚えていただけだけれども。


しかし、忘れられるだろうか?

綺麗な手で綺麗に奏でられる音。

素直に凄いと思った。

私もそれなりに色んなコンクールで表彰されはしたが彼に敵わないと直感で、
そう思った瞬間。

憧れて練習も続けたが手首の筋を痛めてしまった
私はピアノを続けることが出来ないと医者に宣告され音楽から離れ

もう、彼と会うこともないだろう。

そう思っていた。


そう、思いながら過ごしてきた。



大学に入るこの瞬間まで。












▽▲






















私が入った大学はスポーツや医療、政治にインテリア学科
各色んな方面への希望や夢も担う大きな大学で学科が豊富だ。




そして言い換えれば


別に成績が優秀でなくとも学科によれば入れると言うわけだ。




ちなみに、私は総合学科。


バランス良くとれ自分で組み合わせがきくのだ。
大きくは将来の夢がないから
とりあえず、といったところなのだが。






そんなことを考えながら屋上でぼんやりしていると
下からキャーキャーと黄色い声が聞こえる。

なんだなんだと思いながら下を覗くと

何ともカラフルなメンバーが歩いていて


遠くからなので、しっかりと顔は見えないが
女子があれだけ騒ぐのだ。相当人気はあるのだろう。


『…目に悪い色。』



率直な感想がポツリと声に出てしまいハッとするも
周りに人はいなし、まぁいいかと思っていた。

が、突如聞こえる笑い声。




「め、目に悪いって!
 ぶぶっw真ちゃんに聞かしてやりてぇー。」

と笑い転げる男が一人。


同い年くらいだろうか?




「はー。笑った。キセキの世代のこと
 そんな風に言う女の子始めて見たわっ。」


と、ひとしきり笑いこけると彼は私の横に並び下を覗く。


『…キセキの世代?』

薄っすらと聞き覚えがあるが
理解が出来ず尋ねると少し驚いた顔をされ


「そっかー。バスケ知んねぇーと
 キセキの世代を知らない奴も普通にいんのな。」

と笑いながら説明してくれる。

どうやらバスケで有名な人達らしく女性に人気があるんだとか。




「あの赤いのが言わばリーダー的な奴で、

 黄色は真似っ子モデルだろ。青はすげぇ点取り屋で、
 紫は見た目通りパワーがあって、ほんで緑が俺の相方超変人。

 …あとは、後ろのちっこいのが影が薄いシックスマンね?」

と指差しながら話してくれるがなんとも独特な説明だ。


『うわぁ、影薄子分からなかった。』


と言えば「慣れんのに時間かかったんだよなー俺も。」
なんて笑っていて。


「おっと、最後は俺ね?俺は高尾、高尾和成。」

よろしくと手を差し出され

『…私は大野柚木。
 自分もけっこう変人な部類なんじゃない?』

と言えば「真ちゃんと一緒に居ればこーなんの。」
と笑われてしまった。










こうして私は緑の彼へ一歩近づく。





あの日から少しずつ高尾君と
絡むようになり平凡な日常を送っていた。







今日までは。だが。


とある学科の選択授業で私は後ろの席を陣取りノートを広げる。

別に友達がいないとか、そうゆうんじゃないけどね。

常に誰かと一緒じゃなきゃ駄目なタイプでもないし、
この授業は友達は取っていない。それだけのことで。






すると「お!?柚木じゃん。」と声をかけられ
顔を上げるとそこにいたのは高尾君と緑色の男。


『高尾君最近良く会うね…って同じ選択のが多いだけか。』

と話している中、横に座る高尾君。
本当に何と言うか女慣れ、人に慣れている。





「んー?そっかもね。考えたことなかったや。

 …あ、そうそう、こちらがキセキの世代こと緑間真太郎。」

と隣の緑君を紹介してくれ緑君はちらりとこちらを見やる。



「…最近、高尾が話してい人か。いつも馬鹿がすまない。」

と取っ付きにくそうな雰囲気の割には案外普通に話してくれていて。


『……緑間?、真太郎?あの?』

と聞き返せば
「あれ?柚木はキセキの世代知らないんじゃなかったけ?」

と高尾君に言われうなずくが
確かにバスケでの彼は知らない。あくまでバスケでの、だ。


『いや、バスケのことは知らないけど私、
 昔ピアノ弾いてたから…それで。』


そう言えば高尾君は少し理解していなかったが
緑間君は納得していたようで。


「ああ。昔ピアノを確かに弾いていたが、
 ずいぶん昔のことなのだよ。良く覚えていたな。」

と指摘され自分だけ覚えていたことに恥ずかしさを感じるが

『まぁ、当時は天才だとか騒がれていたしね君。』

と何とか切り返し逃げる。
横で高尾君が

「まじ、何やらせても天才とか嫌味でしかねーよな。」

と拗ねていたので

『でも。超変人なんでしょ?』

と聞けば凄い顔して緑間君が怒っていた。








それからだ。




私と緑間君と高尾君、三人で一緒に居るようになったのは。



そして、昔の憧れの気持ちが恋心へと
変わるのにも時間は要しなかった。





また、その気持ちが折れるのも。





時間はかからなかった。











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