▽38.






まさかのヒーロー登場した虹村さんをぽかーんと
見つめていると

ちゃらけた男の子二人組の一人が
もう一人の肩を揺さぶりながら

「虹村って、あの虹村かよ!」と焦っている。

いったい何をやらかしているんだ虹村さんは。





そんな、私の心情を察してか
揺さぶられている片一方が

「ああ、あの虹村だ、喧嘩して勝った奴を
 見たことがねぇ。あいつとは喧嘩はしねぇ方が
 いい。間違いなく殺られる。」



そう言いながら、かなり怯えていて
反対に虹村さんは彼らを睨んでいる。



その睨みにからか、虹村さんと言うことがあるのか

二人は無言でアイコンタクトをとると
ダッシュで逃げて行く。

走りながら
「くっそー!」と叫んでいたような気もしないが
なんだ、本当に悪役のやられ台詞だな。と

少しおかしくなる。



いや、しかしあの虹村ってどの虹村さんか教えてほしかった、と
思うのも束の間。



「大丈夫か?」

と、虹村さんがこちらに来る。


突然なことで『ひゃいっ』とへんな返事をしてしまう。

しかも、それをふにゃっと虹村さんが笑うものだから
少し恥ずかしくなってしまう。




「本当に大丈夫か?見たところ在学生って感じじゃねーし。」


私の身長が低いこともあり中腰で話をしてくれていて

『大丈夫です。今日は学校見学で。』
と笑えば「そうか、」と微笑まれる。


なんだか妹のような扱いで笑ってしまう。




すると虹村さんが来た方から優しそうな見た目の
少し年のいった男性が「虹村。」と
呼びながらこちらに来る。


その男性を見るや否や
「やべっ、」と虹村さんは呟いていて少し焦っている様に
見えなくもない。





「虹村、ボールを追いかけに行ったと思ったら
 なんだ、女の子を追いかけていたのかい?」

と笑う男性。


「いや、これは、、」と珍しく口ごもる虹村さん。
そうとう、偉いさんなのか?と思うと
さらに男性は笑い



「冗談だよ、さっきそこで見ていたしね。」
と、こちらに近づいてくる。


ならば、私が絡まれて虹村さんが助けてくれていた所を
見ていたと言うことか。

なかなか、意地悪だな。この人。


そう考えていると男性も中腰になりこちらに笑みを向ける。



「君は、秋山ななさんだね?
 話は聞いているよ。」

そう言って微笑まれるが知っていことに驚き頷く。
見た目からして偉い人の雰囲気は出ているし
納得はいくが。

まあ、虹村さんは何のことか分かっていない様子だけれど。




『…はい、そうです。今は浅葱ななですが。』

話を聞いている、と言っていたから
わざわざ訂正しなくてもいいかな?と思ったが念のためだ。


「ああ、その事もしっているよ。
 これから大変だろうけど、頑張るんだよ?」

と言うと頭を撫で立ち去る。

去り際に「ほら、虹村行くぞ。」と声をかけており
虹村さんは「白金監督、待ってください。」と

追いかけてしまった。





ん?あれが白金監督?と焦るも
時すでに遅しで二人の後ろ姿を見つめていた。


まさか、このときに




「監督、あの子なにかあるんですか?」

と虹村さんが私のことを根掘り葉掘り
聞いていたとは露知らず。だ。








大人しく家路についた私はポテポテと短く、
なれない足で
マンションまで歩く。


実は家から学校にかけての道のりの間に
ストーリバスケが出来るところがあり

そこの前を通っていくのが日課だ。


別に皆を探しているとい訳ではない。
いや、いたらいいなとはおもっているけど。



しかし、まあこの地域というか区間というか
バスケ出来るところが
とても多い。



こう、バスケットコートをボケーと見ていると
花宮君達とバスケしたことを思い出す。

そんなに日はたっていないのに少し懐かしく感じられ
案外寂しがりやな時期に入ってしまっているのかもしれない。






すると、コートの方から

「止めてください!」という
少し高めの女の子の声が聞こえてくる。


何事かと思いコートに近づくと
ちゃらけ男の子二人組が女の子を一人囲っているのだ。


『え?、なにこれデシャブ?』


なんだなんだ、この辺の地域は輩が多いのか?


見てしまったからには止めないわけには
いかないよなぁー。

と若干諦めモードで
もめてる方を良く見ると

女の子がピンク色の髪をしているじゃないか。


これは、もう百パーセント無視できない。


しかも、こうゆう時に限って青色は見当たらない。


致し方ない。と勇気を出してバスケットコートに入る。




『何してるんですか?この子嫌がってますよね?』
出来るだけ大人っぽく話し威嚇する。

なめられないようにと、思ったのだ。

しかし、それはあまり意味はなったようで。



「はぁ?なんなのお前?」


と男の子はややキレ気味だ。
一方でピンクの髪をした女の子はどうしたらいいのか
分からずオドオドとしていて


『だから、嫌がってるの分からないんですか?』

再度強めに言うとカチンと来たのか
男の子の一人が胸ぐらガッと掴んでくる。

その行動に驚きながらも、睨むことは止めない。



その態度が更に男の子の勘に触ったのか
片方の手を大きく振り上げる。


殴られると思い流石にこれはと、
目をぎゅっと閉じるが


いつまでたっても痛みは来ない。
代わりに聞こえたのは男の子の「うっ」という
呻き声。

恐る恐る目を開けると
少し肌の黒い、青色の髪をした男の子が

私を殴ろうとしていたチャラ男のその手を掴んでいて

めっちゃ、にらんでいる。


「っ、大ちゃん!」と
安心したよな声も同時に聞こえ
私までも何だか安心してきた。



「お前ら何やってんだよ?」

ぎりっと掴んでいた手に力が入る音が聞こえる。



年的にはおそらく、私達の方がしたなのだろうが
男の子達は怯んでいて

ちっと、舌打ちをするとバスケットコートから
出ていってしまう。





そのタイミングで、
「大丈夫ですか!?」とピンクの少女が駆け寄ってきてくれて

『私は大丈夫だよ?追い払ってもらったしね、』 と笑う。




すると青色君が
「ったく、さつきもあんな奴等の相手すんなよな。」 


と頭をガシガシしているが

いやいや、さつきちゃんほどかわいければ
向こうから来るの、向こうから。

君には幼馴染みマジックがかかって
そうは見てないだろうけど



さつきちゃんも
「大ちゃんに言われたくないよ!」と

ぷんぷん怒っているが、ほら見よ、かわいいじゃないか!



二人のやり取りが落ち着くと
さつきちゃんはこちらに振り向き丁寧に

「先程はありがとうございました。私、桃井さつきって
 言います。こっちは幼馴染みで青峰大輝。」

と、紹介をしてくれる。




『ううん。なんにもできなかったし。
 えっと、私は浅葱…なな。よろしくね。』

と笑えば満面の笑みで返してくれるさつきちゃん。

紹介された青峰君も全然ぐれてなくて
「よろしくなっ」と、返してくれる。




そのあと、三人で少し話をしたあと
家に帰ったのだが


この日の二つの出会いが


こんなことになろうとは




入学するまでは知るよしもなかった。












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