▽68.








全中が終わってから程なくして黒子君が
人知れず退部届けを提出していた。


誰も、それに触れはせず引退となり
皆と話すことも減ったような気がする。






私はと言うと、

あの日から学校に来なくなった黒子君へと
毎日メールを送り今日の一日を送る。

本当に他愛のない内容ではあるが


バスケットボールの話は一切していない。





たまに、黄瀬君や紫原君、さつきちゃんとは
相変わらずだけど話もしているが

緑間君は後ろめたさからか、

はたまた罪悪感からか

私に話しかけてこようとはしなかった。



ちなみに青峰君はこの間、
偶然の出会いによって話すことになったんだけど

久しぶりに見た青峰君の驚いた顔に
つい笑みが出たときは自分でも驚いたなと懐かしく思う。








そう、あの日は今吉さんが帝光に来ていたのだ。


青峰君を勧誘しに。




丁度廊下で青峰君を勧誘する今吉さんに会って

「お?ななやないか。久しぶりやな?」

とナチュラルな態度の今吉さんとはうって変わり

「は?何知りあいなのかよ?」
と青峰君が驚いていてそれを面白がった今吉さんが
「まぁ、幼馴染…みたいなもんか?」

と私の頭を撫でる。


『今吉さん!お久しぶりです!
 最近今吉さんとも花宮君とも、
 なかなか会えなかったですもんね?

 部活は順調ですか?』

なんて暢気に話している私の近くで青峰君が
「タイプ違いすぎんだろ。」
と毒づいていたが、

私からしてみれば、さつきちゃんと青峰君も違いすぎると思う。


「まぁー、ぼちぼちやね。問題あらへんよ?
 …強いて言うならななにふられたことくらいやろーか?」

と冗談めかして笑う今吉さんに『もう、からかって。』と
言い返すも気にしていない様子。

そう、高校生になるにあたって今吉さんと花宮君から
何処の高校に行くのかって問い詰められて
両方ともの学校を選ばなかったため、

花宮君はすっかり拗ねてしまったのだ。








まぁ、私が行くと言った高校が
気に入らなかった…と言うこともあるのだろうが。



すると何やら気まずそうに青峰君が

「…お前、」

と呟くものだから、おそらく今吉さんが私に告白でもして
それを私がふった、とかなんとかと勘違いしてそう
だったので急いで訂正すると

その様子を今吉さんは笑ってみていて
青峰君に

「桐皇に行くのは良いけど今吉さん意地悪だから気をつけてね!」

と言い伝えジト目で見る。

その視線に気づいて

「ちょっとした悪戯心や。
 ほんまは優しいんやでーワシ?」

なんて、おチャラける今吉さんに

『知ってます。』と笑い返せば一瞬驚いた顔をして

「…なんや、自分の方がよっぽど怖いで。」

と頭をかいていて
その日は結局今吉さんと返ることになった。




この、やり取りを見た青峰君が
今日のことをきっかけに桐皇に行くことを決めた

…なんていうことは知らずに。










最後に一人


赤司君についてだが、赤司君とも緑間君同様
あの日以来、話していない。


むしろ、私から若干避けてしまっている。



自分を僕と言う赤司君はきっと
俺と言う赤司君にしか止められないと思うからだ。


私には出来ることは残っていない。






そんな感じで残りの中学校生活を過ごし
卒業式の朝を迎えるわけなのだが、

私は朝早く黒子君の家に来ていた。


今日彼が学校に行くことを私は知っているから。



まぁ、それでなくとも通常の学校であれば
特例でもない限り卒業式を休めば卒業できないだろうが。








深呼吸していざインターフォンを鳴らそうとすれば
タイミング良く開かれえる玄関。


出てきたのは黒子君本人で、
凄く驚いた顔をしている。







『お、おはよう…。』

とぎこちなく手を上げれば困ったように笑う黒子君。


「おはようございます。

 …まったく貴女って人は。
 いつも驚かされてばかりです。」

とこちらに近づく。


『今日は来るだろうと思ってたし、
 黒子君に直接伝えたいことがあって。』


と言えば首をかしげる黒子君。

「ほぼ毎日メールをくれていたときに
 書けばよかったじゃないですか。」


二人で並んで歩きながら学校に向かう。


当たり前のことなんだけど、
そのことが久しぶりすぎて少し照れくさい気持ちにもなる。


『まぁ、そうなんだけど…って
 黒子君最後のほうは返信くれてたよね。

 ありがとう。』


最初はなかった返信も少しずつ増えていって
今では久しぶりに会うというのに

話は普通に前のようにできている。


「…さすがに無視し続けれるほど僕は鬼じゃありませんし、
 気持ちの整理もついたので

 …これ以上心配かけさせれないですよ。」

と前を向く黒子君は確かに強い目をしていた。

自分を貫き通すことを決めたのだろう。



『そっか…良かった。

 私もね?決めたんだ。』



春になる前の少し肌寒い風が抜ける。





『私ね?帝光卒業したら誠凛高校へ行くことにしたの。』


そう言うと驚いた顔でこちらを振り返る黒子君。





『…良かったら私に黒子君の覚悟を支えさせてもらえないかな?』






黒子君が誠凛高校に行くことは
メールで聞いていたし知っていたが、

その前に私は誠凛に行くと決めていた。

明洸中との試合のあとからずっと。






ふと黒子君に目をやると薄っすら涙を浮かべながら


「……本当に貴女って人は。」



と笑う。




それを肯定と受け取り私も笑う。



学校に着き教室に入り体育館へ行き卒業式を終える。


友達との別れを惜しみながら
人生二回目の中学校生活はなかなか波乱万丈だったな。

と空を仰ぐ。










私が皆に出会うのに、あと一年。





































高校生になりました。















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