▽64,



『そうゆうの良くないと思うの。』





監督が倒れて真田コーチが監督を引き継ぎ
早くも数日がたった。

無事三年生は卒業を迎え

二年生は三年生へ。



卒業証書で虹村さんに頭をぽかぽか殴られたのは
良い思い出だ。




ちなみに虹村さんは一日と待たず
直ぐに日本を発たれるようで

少し、いやかなり寂しく

出来れば空港まで見送りたかったものだ。




帝光バスケ部と言えば

主将、赤司征十郎

副主将、緑間真太郎

と落ち着きは見せているが、見せているだけ。






最近はしょっちゅう青峰君と他の部員が
喧嘩しそうになっているのを

はらはらして黒子君が心配する毎日。


今日も現に「しっかりやれよ。」と言う青峰君に
「やってるけど…青峰にはかなわないよ。」と

顔を引きつらせる部員。

ちっと舌打ちをして立ち去る青峰君を私は
引きとめ「かなわない。」と言った部員A君も引き止める。


そして冒頭へ戻る、というわけだ。





「あ?何がだよ。」

最近顔つきがいかつく成長してきた青峰君の
顔をキッと睨み返すと

驚く青峰君。


その騒ぎをざわざわとざわめきだす。


『まず一つ!さっきの青峰君の言い方は良くない。
 あと二つ目!A君もそんな情けないこと言わない!

 むしろ、うっせバーカ!
 くらいの気持ちでやり返さないと!』



と言うと、「でも…」とごねるA君。


『いい?確かに才能ってすごいけど
 だからって君が諦めたら君は一生このままだよ?

 そのレベルからは上がれない。

 ずっと上を見上げていくのも嫌でしょう?

 何のためにバスケやってんの?』


うなだれるA君の肩を軽く叩いてあげると
顔を少し上げるA君。


「…バスケ好きで。」

とぽつりぽつりと言う。

「…頑張っても全然成長できなくて。
 いらいらしてて…つい。ごめん青峰。

 嫌味のつもりじゃなかったんだ。」



と震える声で話すA君。



『頑張り方をまた考えよう。…ほら、青峰君言うことは?』

と青峰君の顔を見ると
「……まぁ、頑張れよ。アドバイスくらいなら
 いつでも言ってやる。」
とこれまた偉そうに言って


『もう、そうゆうことじゃないのに。』



と言えば笑うA君。

「いや、いいんだ。それが青峰だもんな。
 …うん、じゃぁたまには練習付き合ってくれよな?」


なんてA君が立ち直って笑顔で言う物だから
場が和み丸く収まると…思っていた。






でも









「努力が天才に勝るとでも思ってんのか?馬鹿かお前ら。」













はっきりと聞こえたその声は体育館入り口からで
皆の視線が集まる。が

誰だ?と皆騒いでいて

しかし私は分かる、以前より痩せてしっまていたが
彼は水色君だと。








呆然する部員達に再度

「天才に勝てるわけないだろ?」
と言い放つ。

直ぐに真田監督が
「何なんだ君は!」と怒るが怯まない水色君。



「はっ、どんなに頑張ってどんなに憧れても
 受け入れてくれる場所がないと意味がねぇよな。」



水色君の言葉に内容が読み込めず
『…どうゆうこと?』と聞き返せば

「あんたか…。」と私の存在に気づく。


「聞いたんだよ。今のスタメンから監督は
 チームを入れ替えるつもりはない。

 どんだけ頑張ったって良くてサブメン、ベンチだ。

 俺らが、一生公式戦でコートに出れる日はねぇ。」


悲痛な水色君の声に誰も何も言えない。

中断された練習。



「…なぁ、監督教えてくれよ。

 何のための練習で、何のための昇格テストなんだよ。
 目指す先にあるのが光じゃなく崖だけなら

 俺達みたいな凡人は身を投げるしかないじゃないか。」




苦い苦しそうな顔して真田監督が押し黙る。
水色君の言い分は間違っていないからだと
そう認めているようで。



でも、




『努力のない天才もいると思う。
 でも少なからずここに居る皆はそれに見合った努力を
 してるんだと私は思う。

 学校の方針については私も賛成しかねるけど。』



ついつい出てしまった言葉。
でも、ここに居る人は本当に努力をしてきているのだ。

天才だけでは上がれないところまで来ている。


だからキセキの世代。そう呼ばれているのだから。






すると水色君が
「あんたは、いつも変わらないな。
 そうやって、周りに自分に言い聞かせて

 …残念だけどアンタみたいに俺はなれない。」



「…俺は帝光中バスケットボール部が嫌いだ。
 最近はやる気のない相手を馬鹿にしたような試合をする

 天才だと言い囃されてるお前らも認めない!」







最後は叫ぶように言い放つと体育館を
出て行く水色君。

皆はただただ驚いていたが青峰君はの心には
刺さったようで

「ーっち、やってらんねー。」と
青峰君も体育館を出て行く。



他のメンバーはどうしたら言いか分からず
右往左往していたが真田監督から

「皆は通常の練習を続けろ。後は私に任せて。」

と言い体育館を出る。
私も続いてでようとするのを黄瀬君に腕を掴まれ止められる。

まさか、黄瀬君にとめられると思わず驚くと


「どっちを追うんスか?」

と真剣な顔つきで。

『…青峰君だよ。』と言えば

「黒子っちが今赤司っちに許可とって
 行ったスよ?

 ななっちが行っても傷つくだけかも。」



私の心配をしてくれているのだろう。
嫌な予感がするんス。という黄瀬君に

『行っても、行かなくても後悔すると思うから。』


と手を振りほどき体育館を出る。










外は雨。






















勢いで体育館を走って出てきてしまったが
青峰君が何処にいるか分からない。

とりあえず、いつもの帰り道を辿って見るが
青峰君や黒子君、監督の姿は見受けられない。



すると、遠く川沿いの鉄橋の下から
真田監督が現れる。

私とは別方向に走っていく真田監督。
もしかしたら、あの鉄橋に青峰君がいるのかもしれないと
歩こうとしたとき



「青峰はあそこにいる。」

と後ろから声をかけられ振り返る。


『…水色君。』


雨に濡れた水色君は痩せていることを
誇張させて見せて


「…言ってどうする?真田コーチは諦めたぞ?
 もう、どうにもならないさ。」

嘲笑う様な態度にカチンとき

『やってみないと分からないじゃない!
 なにもしないで諦めて何になるの!?

 どうして、水色君は…。』


どうして?皆をそんなに嫌うのか?
と出でてきそうになった言葉を飲み込む。



「…憧れと好意と狂気は紙一重なんだ。

 俺は地に落ちて、苦しんだように
 あいつらにも落ちてほしい、
 例え形が違えども。」



『どうして。』と再度聞こうとすると肩を強く押される。

突然のことで踏ん張れず後ろに傾く背中。



後ろは河。


ましてや、今日は雨。





「あんたも、原因の1つになってもらうよ。」




そう言いながら笑う水色君の顔を最後に
私の意思は遠退いて言った。















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