▽63,


三年生が引退してから数ヶ月時間がたった。


あれから青峰君はやる気は以前よりないものの
練習には来ていて

と、言うのも白金監督がいるからなのだが。




しかし、それでも練習に来ている。


良かった。素直にそう思った。



だが、安心するにはまだ早く最近紫原君の調子も
とてもいいのだ。

しまいには


「負けんのは嫌だから練習してるだけだしー。
 それ以外は別に意味無し、好きじゃないし。」

なんて言って黒子君と良く喧嘩している。


見てるこっちはハラハラするので止めていただきたい。





けど、それでも、まだ皆で笑い会えている。

だから、大丈夫だと思っていた。




















「勝つこと以外に大切なこと?」


いつもと変わらず皆と帰っているときにふと
皆に尋ねてみた言葉。


「ふむ。簡単でいて且つ内容の深い質問だね。」

と赤司君。

「えー、勝つ以外に考えたことねーし。
 まず、負けんのいやだって何度もいってんじゃん。」

だったり

「人事を尽くすことなのだよ。」

だったり

「勝つ以外にありえねぇ。誰も俺に勝てや
 しねぇよ。」

とか

「考えたことないっスね。俺何でも出来ちゃうんで。」

などなど普通の答えは見つからない。




全く困ったものだ。



小さくため息をつくと


「最近何か考え込んでいる様ですね?」

と黒子君が顔を覗き込んでくる。



『そっかな?』なんて笑って見せるが
黒子君にはバレているんだろうな。




「ななはどうしてこんな質問を?」

一番明確な回答をくれなかった赤司君に
そう聞かれ一瞬考える。

皆が答えを待ってくれている。そんな雰囲気。






『どうかな。自分で質問しておいて何だけど
 まず、勝つこと以外にと…言うより

 どうして勝ちたいと思うのかなって

 考えるようになったかな。

 好きだから?当然だから?

 私はバスケも皆も大好きだから勝ちたいって思うけど


 何だか今は勝つためにバスケをしてるんじゃなく
 勝てるからバスケをしてる。

 そんな気がして…難しかったな?』


と笑えば「どっちも同じようにしな思わないっスけど。」
と、黄瀬君の頭にハテナマークが飛ぶ。
そんな黄瀬君に緑間君が

「主旨が違うのだよ。馬鹿め。」

と一喝するも意味は伝わっているのだろうか?


「どっちにしたって勝つ以外ありえねぇなら
 考えるだけ無駄じゃね?」

なんて半ば投げやりに言う青峰君を叩いて帰った。



 



その、翌日だった。








朝、登校すると直ぐに真田コーチに呼ばれて
監督室へ行くと、
白金監督が倒れたことを聞かされる。





どきりと鳴った動悸。


『…本当、ですか?
 容態は回復傾向だって…そう仰っていたのに。』


信じらない気持ちで震える声。
しかし、真田コーチの何とも言えない表情を見ると

ウソではなく、むしろ悪いんだと


分かってしまうもので。






「…急に悪化しだしたそうだ。
 今は、病院に搬送されている。」


悔しそうな顔をする真田コーチ。




私は居てもたってもおれず監督室を走り出る。


途中で監督室へ行くのであろうさつきちゃんに会ったが
声もかけられず急いで学校を出た。



病院に白金監督に会うために。



















息を切らして走ってついた病院。

今日は完全に学校さぼりになっちゃうな。
なんて考える。



受け付けに行き白金監督の病室を教えてもらう。
私も馴染みの病院なので
私と白金監督が知り合いなのは周知の事実。

普通なら教えてもらえないことを

緊急時ということで教えてもらい病室まで急ぐ。


深呼吸しドアをノックする。


帰ってこない返答。






ゆっくりと開けるとベットの上で
横たわる白金監督。





ベットの近くまで行き椅子に腰掛ける。
『白金監督…。』

ポツリと呟いた私の声に反応したように監督の
手がピクリと動き薄っすらと目を開ける。

私は驚いて監督の手を握ると
小さな声ではあるが




「彼らが卒業するまでは…この体も保つと
 そう、思っていたんだがね。

 情けない。

 …君は…こうなることを、危惧していたのか。」






呼吸器越しに聞こえる監督の声は弱弱しく
溜まる涙を無視しコクリと私はとうなずく。




「やはり君は、不思議な子だ。
 もっと早く…君と話をしておけば良かった。


 …いいかい?

 これから言うことしっかり、覚えておきなさい。」





白金監督はそう言うと私の握っていた手に
力を込める。



「…これから、何が起こっても誰にも止められない
 …そうゆう物も、ある。


 だが、自分を責めちゃいけない。

 諦めてもいけない。

 人は後ろを見たがる生き物だ。

 なのに欲を欲する生き物だ。


 しかし、立ち上がる力も個々に持ち合わせている。」







君達にはまだ難しかったかな?と
笑みをこぼす監督に私は涙しか流せなくて

『私にとっては激励の言葉です。』

と言えば
「頑張りすぎるな。と言いたかったが逆効果だったかな?」
と困ったように笑っていた。



その後は監督が寝付くまで居ようと思っていたら
いつの間にか私も寝ていて
起きた時はすっかり日が暮れてしまっていた。




「…おきたか。」
と私の目覚めを確認してきたのは真田コーチで
時間的に学校が終わったんだと把握する。


『…真田コーチ。』




「全く。いきなり学校を出て行ったと思えば
 勝手に休んで勝手に監督のところまで来て。」

と呆れたように怒っていて苦笑いしかできない。

『すみません。』


と、とりあえず謝ってみるも意味はなさそうだ。



「まぁいい。君はもう帰って明日の部活には
 顔を出しておきなさい。
 桃井が心配していぞ。」


そう言われて考えてみたら来る途中で
さつきちゃんに会ったんだったと思い出す。


『わかりました。』と席を立ち寝ている監督と
コーチに一礼して病室を後にする。




複雑な思いとともに。













▽▲



















今日、白金監督が倒れたことが知らされて
とりあえず真田コーチが監督を変わることとなって

そんで、とりあえず皆で帰って

今後のことどうしよかって話してる途中なんスけど


やっぱり皆の雰囲気は重たくて。





「とりあえずは今の練習を続けるしかないな。」

って赤司っちが言うから問題はないんだろうけど
なんか妙に嫌な予感がして誰にも気づかれないように
ため息を吐き道路の反対車線に目を向けると

見覚えのある女の子。



俺が一度失礼なことをしたのに
そのことについて一度も触れて怒ってこない

俺からしたら、もう頭の上がらない存在。




「ななっち?」

そう俺が呟けば反応する残りの皆。

直接聞いたわけではないけど皆ななっちのことは
大切にしている…そんな気がするんだ。


げんに感情を表に出さない黒子っちが
「黄瀬君本当ですか?」と
変に焦っている。

まぁ、今日ななっち無断欠席したわけだし
心配なのは分かる。





「本当っス。ほら、あそこに」と指差すほうに居て
その雰囲気は声のかけづらい雰囲気で。

どこか、儚くて消えてしまいそうで憂いに帯びていて。



「元気がなさそうですね。」

と心配そうに言う黒子っちに
「監督に会いに行っていたのだろう。
 病室にいたと真田監督から連絡があった。」
と赤司っちが答える。

「赤ちーん、そうゆうこと知ってたなら
 先言ってよねー。」

と紫原っちが突っ込んでいたけれど
俺もそう思うっス。

てか、紫原っちも人の心配とかすんだと
失礼ながらもちょっと驚いた。



するとだんまり決め込んでた青峰っちが話しだす。

「つか最近あいつ、いつもあんな顔してんぞ。
 思い悩んでるような、そんな。」


鈍い青峰っちが気づいていたことに一瞬驚いたが
直ぐに黒子っちが「半分は青峰君が原因ですしね。」
ときつく突っ込んでいた。

「うっせーなテツ。分かってるよ、そんなこと。」
とむくれる青峰っち。

「いや、厳密にいえば青峰だけではないのだよ。
 部全体のことかも知れぬ。」




「はぁ?そんな大きなこと考えてんのかよ?」


緑間っちの言葉に青峰っちが食いつくも
正直俺にもわからない。

「緑間の言う通りかもしれないな。」




と誰に言うわけでもなく赤司っちが呟く。

結局その日はななっちに声をかける事は出来ず
皆で帰った。





君は今何を考えているのだろう。



俺はそんなことを考えながら。















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