▽62,




始まった全中試合。


緊張のなか始まった試合は赤司君の
慎重なゲームメイクて進めていき

経験豊富な三年生のお陰で問題なく進んでいた。


はずだった







あんなことが起こるまでは。



翌日、上崎中との対戦。


過去唯一青峰君と競り合った選手
井上さんがいるところだ、

私もあのときはハラハラして良く覚えている。




二人とも楽しそうに試合を始めたが
開始数分で井上さんの闘志がなくなる。


それは、ベンチで見ていた私にも伝わるほど。
すると、コート内で

「テツ…お前の言ったことは間違ってねぇと思う
 …けど、やっぱダメだわ…なんか気がついちまった。


 俺が欲しいものは…絶対見つかんねぇ。

 俺に勝てるのは俺だけだ。」

と黒子君に言い放ちコートを走っていく。



その試合が終わり迷わず青峰君のところに行けば
一人にしてくれと外へ行ってしまう。

『青峰君!!待って!!』と

追いかけようとするのを赤司君に
「今はやめておけ」と止めらる。


黒子君はショックでか元気がなく、
なんて、声をかけてあげればいいのか…分からない。




なんとも言えない雰囲気がチームに流れる。
すると、虹村さんにポンと背中を叩かれ
「あいつ等の乗り越えなきゃなんねー壁だ。」

と言われて黙るも

フラストレーションは溜まっていく一方だ。






そして、始まる試合。


見覚えがある。選手。

鎌田西中の双子の選手。



この選手には覚えがある。
確か、ファールをもらうのが上手い選手だ。

前会ったときに花宮君が話していたな。


ああゆうプレイを取り入れようか。なんて
言っていたのを『やめなさい。』と
叱ったのは新しい。




口に出して言いたいが言えない。


膝の上にぎゅっと拳を作り見守る。



試合開始数分は問題なく進んでいたのだが
後半から続く帝光のファールの嵐、


ついには、青峰君がファール最後の一つまで追い詰められるも
本人は思ったより焦っておらず。


どこか、なげやりな感じと今の感じが
嫌な方にハマってしまっているのだ。





このままではと、思い立ち上がると
「私に任せてくれないか?」
と白金監督が席をたつ。


皆にも戻れと指示をし気になるが
そのまま更衣室へと戻った。



後半始まる前に来た青峰君と黒子君はどこか吹っ切れていて
心配する私を他所に黒子君は「僕も出さしてください。」と
監督に話していた。

黒子君から出たいと申し出るのは始めとのことだ。



監督も何か考えがあるようで「分かった。」と許可する。

どうやら、さつきちゃんの調べた結果
双子の二人は合気道を習っていてファールを貰いにいく
タイミングが上手いんだとから。



合気道、かぁ。


そんなことを考えていると始まる後半。

出だしは完璧。黒子君も調子を取り戻している。
青峰君もちゃんと試合に集中しているが
雰囲気自体はかわっていない。

双子と青峰君との1or1は青峰君が勝ち残り八分と
いうところで青峰君を引っ込め黄瀬君へとチェンジする。


流石、白金監督。タイミングが絶妙だ。








そして、全中二連覇を達成した帝光中。


喜ぶスタメンと戸惑う青峰君。


「お前のおかけで優勝出来たんだ。
 もっと、よろこんでいいんだぞ。」

と虹村さんが青峰君に話していて皆の輪に入っていった。












その日の帰りに青峰君に呼び出されて珍しく二人で帰る。




『二人で帰るなんて久しぶりだね。
 全中二連覇、おめでとう。』


と笑えば、

「ん、あぁ。」
と素っ気なく返される。
青峰君は今、どんな気持ちなのだろう。


私は想像するしか




…出来なくて。


















▽▲
















俺に勝てるのは俺だけ。




あとは皆、へぼばっか。


俺と戦うこともしねぇ。



そう思ったし今だって思っている。



けど、それでテツに辛くあたったのは事実で
それに対してななやさつきが
怒ってんのも分かってる。

いや、怒ってんじゃないか。


傷ついている。か。



『全中二連覇おめでとう。』

そう言って笑うななは顔は笑っているが
終始目を伏せていて

ああ、テツが言ってたことってこれか。と
一人納得いく。



「…わりぃ。白金監督とも話したんだけど
 やっぱり変わっちまったことには目を瞑れねえ。

 けど、まだ勝ちたいって気持ちが残ってる、

 だから、まぁ…ぼちぼち頑張るわ。」

変わった気持ちもある。



失った思いもある。


くそが、とも思った。



でも、バスケで負けたくねぇ。



その気持ちが勝ってる。


ななは
『そっか、うん。わかった。』

と泣きそうな顔をしていて。



『これから、青峰君より強い人もチームも出てくるよ。
 必ず出てくるよ。

 あんまり調子乗っちゃ足元救われるからね。』




と再度笑い俺の先を歩く。

俺より強いやつ。本当にそんなやつがこれから現れるのか?
気休めで言われてるかもしれない。

そんな思いからか


あの時、泣きそうだったななに見て見ぬふりをして
二人で帰った。





この日に素直にあいつを泣かせてやれば


俺の気持ちも変わっていただろうか。



















▽▲













全中も無事終わり、三年生は引退となった。


引退式で見せた虹村さんを始め三年生全員清々しい顔で
悔いなど一ミリも感じない。




しかし、その日の部活はとてもじゃないが
まともな気持ちではできず

さつきちゃんと、先輩達の別れを悲しんだ。



部活と終わり先輩達と現部員達との話も終わると
「なな。」と虹村さんに呼ばれる。



『…虹村さんっ!』と駆け寄ればふにゃりと微笑まれ
わしゃわしゃと頭を撫でられる。


「おう、お疲れ。一緒に帰らねぇか?」


とハニカム虹村さんの誘いを断る理由も無いので
『はいっ!』と二つ返事で返せば
更に緩くなる虹村さんの顔。




直ぐに帰る準備を済ます。
余談だが人間こうゆう時の行動って人間早いもんだと

我ながら思う。








『明日からは虹村さん達いなくなっちゃうんですね。』

そんな他愛のない話をしながら虹村さんと歩く。



自分で言っておきながら
明日から虹村さんがいないと思うと少し寂しい。


「まぁ、あいつらなら戦力的には問題ないだろ。
 ただ…。」

と言いよどむ虹村さん。

どうした物かと顔を覗き込むと困ったように笑い

「お前が一人で無理をするんじゃねーかと
 心配ではあるがな。」

そう言いながら私の頭を撫でる虹村さん。







『…私、どんな無理だってします。この先皆で笑えるなら。
 そのためにここにいるんだと、そう思うんです。』


心配をしてくれていることも分かる。

しかし、ここで頑張らないとじゃぁ、なぜ?
私はこの世界に来てしまったのか?

説明がつかない。


そもそも意味なんてないのかもしれないが。

しかし、自ら皆と関わるんだと決意をしたのだから。








虹村さんは「お前にしては嘘のない答えだな。」と
言われ、そんなに嘘ついたことないのにな?なんて考え

『私そんなに嘘ついてます?』と聞けば


「ああ。いつも、こうゆう時は決まって大丈夫だ。
 って言うからな。

 まぁ、だから正直に俺に話せるようになった分ましかな。」

と虹村さんは頭を掻いていて、

「卒業まであと少し帝光にはいるが、卒業しちまったら
 おれはここにはいねえ。

 直ぐには駆けつけてやれねえけど、連絡くれよな?」





卒業したらアメリカに行ってしまう。

その事があって直ぐには…と言う言い回しを
したのだろう。

私もそのことは知っていたのであえて聞きはしないが。






『もちろん。泣いて電話しますから覚悟しといてください。』

と冗談半分で言えば「待ってる。」と
真剣に返され少し恥ずかしかった。







そんな平和な時間も直ぐに終わりを迎える。




監督が倒れてしまうその時に。



















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