▽61,








今日も今日とて練習を終え残りの作業を
みっちゃんとあっちゃんに託し

資料をまとめていたさつきちゃんを呼びに行った。


丁度さつきちゃんも終わったところで
赤司君の所に行くんだー。と話ながら

一緒に渡り廊下を歩いていたときだった


前方に見えるのは黒子君と青峰君じゃないかと
私が思った瞬間さつきちゃんが




「テツくーん!!」

と勢い良く走り出し黒子君に衝突する。


わ、若いって凄いと思いながらさつきちゃんの後を追うと



「何かテツに急にグイグイ来るようになったなさつき。」

と若干、青峰君が引いているところだった。


さつきちゃんに追いついて私は青峰君に
『おつかれー。』と声をかけていたら


「だってー我慢できないんだもんー。」

なんてさつきちゃんが可愛らしい笑顔で答えていた。

が、しかし

「すみません。早くどいてもらえますか?」



と死に掛けの黒子君の声に
慌てて皆でとめに入ったのだった。








『黒子君大丈夫?』と言えば「はい。」と
立ち上がるが少しよろけていて。


本当に大丈夫か?と思う。






すると横で青峰君が

「つか、話のコシ折んじゃねーよ。たくっ…」

とため息を吐いていが、

さつきちゃんは気にする様子も無く

「えー何何?何の話?」


と食いついていた。

『どんな話?』と私も聞けば
「そうですね…。」と何かを考えると急に



「桃井さん。」とさつきちゃんを呼びジッと見つめる。
さつきちゃんは「ん?」と言いつつ見つめ返していたが

ほんのり顔が赤くなっていく。

しばらくその状態で黒子君が

「桃井さんは見つめたら見つめ返すタイプですね。」
と話し出す。


どうやら青峰君とミスディレクションについて
話していたようで
最近黒子君は他人の観察をして癖を探して
見極めているんだとか。



「ふーん。」と返す青峰君の横で顔を真っ赤に


「黒子君と見つめあちゃった。」と照れているさつきちゃん。
流石、黒子君油断ならない。

すると、


「そんじゃ、俺のクセとかも分かってんのかよ?」

と青峰君が言い出し黒子君が迷わず
「単純だから簡単。」と
言い放ち一瞬とまると



「嘘つくときは必ず目をそらしますね。」

と青峰君をちらりと見やる。

言い出した本人はばつが悪そうに
顔を逸らしている。
どうやら心当たりがあるようだ。

しかし黒子君が

「だからと言って話せという訳ではありません。」
と言い切りその場が和む。


確かに青峰君は最近元気が無いように見える。


才能の開花。


それが主な原因であろう。


どうしたものか。と悩んでいると黒子君が

「ちなみに、ななさんも分かりやすいですよ。」

と言われ『え?』と返すと


「ななさんは嘘つく時はだいたい笑うか
 目を伏し目がちです。
 あと、大丈夫が口癖ですよね。」


直ぐに話してはくれないし困った人だと
最後に黒子君が付け足す。




『そうかなー?』なんて誤魔化して笑うと
「ほら、笑うでしょう?」と直ぐ黒子君に指摘されてしまい
それ以上は突っ込めれない。


すると青峰君が「確かにそうかもしんねぇ。」と
納得していて


『青峰君にそう思われるうちは私もまだまだだな。』
と笑いあった。



そんな話をしていると黄瀬君がパタパタとこちらに駆け寄ってくる。
誤解が解けてからは可愛らしいものだ。


「あ、いた!青峰っちー!黒子っちー!」

黄瀬君の後ろには緑間君に紫原君も一緒だ。
なんとも不思議な組み合わせ。





一緒に帰ろうと言う黄瀬君にさつきちゃんだけ
赤司君に用事があるからと去っていく。

「ななっちはどうっス?」

といってくれてる黄瀬君に

『…じゃあ一緒に帰ろうかな?』

と返しこの日は六人でアイスを買って帰った。






その日以降も白金監督のもと
厳しい練習が続き、恒例ではあるが

黒子君が何度も死に掛けていた。


黒子君に手を貸そうとする黄瀬君に
「貸すな。このくらいは着いてきてくれないと困る。」


と言う赤司君は既に主将そのものだ。

今度、栄養剤でもまた黒子君に差し入れしようと心で
意気込み私もマネージャー業に勤しんだ。




そんな中で始まった地区予選は

ハラハラする私なんかを他所に帝光中は
圧倒的な強さを見せ勝ち駒を進めていき全中出場決定。




さつきちゃんが「予選突破おめでとうー!」と喜ぶ中


”当たり前だろ”


と言わんばかりのばかりの皆に嫌な音がした。



そして、この日から始まったノルマ制度。
赤司君から一人20点取ることと言い渡されるも


青峰君は乗り気じゃない。



それにばかりか、彼は部活をサボりがちになってしまった。







これでは駄目だと。







そう思い、授業が終わると同時に屋上へとあがる。









『おいこら、グレ峰!!』

と屋上の貯水がある方に向い叫ぶと
「…誰がグレ峰だよ。」
と気だるい青峰君の声が聞こえる。






その声を確認すると梯子を上り私も上へと上がる。

『…また、練習サボって。』

と言えば

「おめぇには関係ないだろ。」
とぷいとそっぽ向かれる。



「つか、お前も毎回毎回懲りねぇな。」

なんて、寂しそうに言う青峰君の横に座る。


そう、これが初めてではないのだ。


彼はサボるときは帰らず必ず屋上で
寝転んでいることを知っていたので

時間を見ては呼びに来ていて。


『青峰君も懲りずにここにいるじゃない。』


と言えば「…帰る気にもなんねー。」とあくびをかみ殺す。





「俺、バスケは好きなんだけどよ。

 練習すればするほど面白くなくなってくんだよ。
 …なら、いっそのこと練習なんてするもんじゃねーなって。」

ぽつりぽつりと話し出す青峰君。


寂しさも悔しさも混ざっていない
その声はどちらかというと”どうして”と

答えを探しているようにも聞こえる。





『…馬鹿だなぁ。』


青峰君の視線を感じながら前だけを見据えて話す。

『青峰君の気持ちも分からなくはないよ。
 憤りのない気持ちとか、

 喪失感っていうの?
 なくなっちゃったものとか。

 でも、そのせいで傷つく周りの人には目を瞑るの?』






『黒子君やさつきちゃんを知らないフリ…するの?
 それでそのまま、バスケ…続けるの?』






きついこと言うけれども、そんな気持ちだと
いっそのこと退部、バスケを辞めてしまった方が

私は良いと思うのだ。



青峰君も青峰君で傷ついて悩んでいる。


しかし、これが今の彼の壁なのだ。


乗り越えられない壁。


なら、いっそのこと無くしてしまえば
気づくものあるだろう。





重たい沈黙の空気が流れる。




青峰君は上半身を起こし

「別に、さつきやテツを知らんフリしてる訳じゃねーよ。
 でも、俺の気持ちは俺にしか分かんねー様に

 あいつらの気持ちも分かんねー。」






「…けど、毎回俺と一緒に赤司に怒られるお前は
 物好きだなと思うけどな。」

と青峰君は梯子を降りる。

その顔は少し申し訳なさそうに笑っていて

『青峰君!?』と追いかければ




「練習行くぞ。」と歩き出す青峰君。




なんて自分勝手なんだと思いながらも



『今ままでサボっていた人に言われたくありません。』

と言い合いながら笑い
体育館に行くと予想通り赤司君はご立腹で。





青峰君はあんまり気にはしていないようだったが。









この日、私は一緒に帰らなかったが
青峰君は黒子君と一緒に帰った様で


次の日から青峰君は練習に来るようになった。

黒子君が何か言ってくれたのかもしれない。


やっぱり物語の一員ではない私が頑張っても
少し無理があるのかもしれない。




青峰君が練習に来て嬉しいはずなのに
そんな風に思ってしまった。












動き出した歯車がやはり誰にも

止められないのかと。









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