▽59.


皆様、どうも。


体育祭で借り者競争の司会をした二年の男子です。



え?名前?


考えるのがめんどくさいから付けられないわけではない。



と信じたいが司会さんで
名が通ってしまっているため

ある程度は仕方ないだろう。


と諦めている。





別に悲しくないやい。




そして皆様は信じるだろうか。
人は時に一目惚れをしてしまうことに。




そう、俺は浅葱ななに惚れてしまった。

おそらく、一緒に走った時点でだ。




そして、昨日うっかりぶつかってしまった拍子に
想いを告げてしまった俺は現在猛烈に反省中。




連絡先を聞くつもりだったの、どうしてこうなったのか。





とりあえずは、うだうだ考えても仕方ないため
学校に行き教室の隅で黄昏れていると



「おはよう。」と、

同学年の中で一番モテてるんじゃないかと思われる
虹村修造が教室に入ってくる。



朝練でもしていたのか、
うっすらかいている汗は同性の俺から見ても色っぽいと思った。






そんなことを考えていると、ふと目があう。

「っよ!」と俺から挨拶をすると

「騒がしいお前が朝から静かなんて珍しいな。」
と修造がこちらに来る。




どっちかというなら俺らは仲が良いと思っている。




いつもはふざけたことしか話さないが、
たまにはこいつに恋愛の相談をして見るかと笑い



「ちょっと聞いてくれよ」
と修造の肩を叩いた。














▽▲











黄瀬君から暴言を吐かれた翌日、
黄瀬君の教育係である黒子君が色々と

教えようとしている中

黄瀬君は「替えてほしい。」と訴え

青峰君と口論していた。




黒子君の何が嫌なんだと黄瀬君を
再度冷ややかな目で見ていると

今度は赤司君に

「なな。気持ちは分からなくもないが顔にでている。」
と赤司君に頭を撫でられた。





その後もぎゃンぎゃン言う黄瀬君を
私は完全にスルーしマネージャー業をこなしていると


「きーちゃんと何かあった?」

とさつきちゃんが心配してくれる。

『ううん。大丈夫ありがとう。』

と曖昧に返し笑うも納得いっていないようで。




しかし、大丈夫だと言えばそれ以上は突っ込んでこない
さつきちゃんは本当に優しい。

 

黄瀬君との一件意外は問題なく一日が終わり
体育館の鍵を閉め職員室へと向かう。

今日は珍しく帰りは一人だ。





特に何も考えずに廊下を歩いていると話し声が聞こえ
咄嗟に曲がらず物陰へ隠れてしまう。

気になる話の内容が少し聞こえたからだ。






嘘でしょう。と思いちらりと廊下を覗くと
廊下に居たのは虹村さんと赤司君。

そういえば先ほどから二人の姿を
見ていなかった様な気がする。





そんなことを考えていると



「…つーわけで少し早いがこれからお前が主将だ。赤司。」

と言う虹村さんの声がハッキリ聞こえる。


虹村さんや赤司君の表情は見えないが

虹村さんの声色は決して暗くは無い。






どうやら、主将の座を赤司君へと言う話をしているようで。
場所的にコーチの部屋の前。

虹村さんはコーチにも話してしまっているのだろう。



遅かれ早かれこうなることは分かっていた。
もう、家が危ない状況なんだろう。

赤司君が主将になると言うことは、


これから色んな問題が起こるということで。




虹村さんはレギュラーではあるが二年主体とした
チーム構成の中、コンバートされてしまう。

それについては三年全員が認めることだ。

私がどうこう言うつもりは無いが
やはり少し複雑な気分で。




また、こうなることは分かっていたのに




虹村さんのお父さんの容態が悪くなることも分かっていたのに





それを虹村さんへ告げなかった罪悪感で胸が軋む。






赤司君と虹村さんはまだ何か話して居る様だったが
その場の雰囲気に耐えられなくなり


二人に背を向け来た道を走る。







しばらく走るとお昼に良く来るベンチまで来ていて
とりあえず座り息を整える。


ぎゅっと手のひらを握り締め己の膝を睨む。


何に対しての気持ちか分からないがこみ上げてくる涙。




『この世界に来て涙もろくなったかもな…。』


とポツリと一人呟けば


「赤司といい、なないい、
 盗み聞きは関心しねぇな。」

と声が聞こえパッと顔を上げると少し息を切らした
虹村さんがそこに立っていて

困ったように笑っていた。





その姿を捉えた私はついに溢れてしまった涙を
止めることなく流す。





『に、に゛じむ゛ら゛さん!』

と途切れ途切れに言えば
「ひでぇ顔だな。」と笑われた。













▽▲


















コーチの部屋に行き主将を赤司に、という話をして
部屋を出ると運悪く
赤司本人に内容を聞かれてしまっていた。



まぁ、察しの良い奴だから言わずとも
気づかれていただろうが。



心配してくれる赤司に

「テメーの心配しとけ」
と話をしていると、ふと聞こえる足音。


それに俺が気づくと赤司も気がついた様で
ポツリと「…この足音はなな?」

なんて言いながら少し驚いた顔をしているが



足音で誰か判別するお前に俺は驚きだと言いたい。





だが、とりあえずは本当にななだと
さっきの話を聞いての走り去る。と言う選択は

けっこうヤバイ奴だと思い

赤司に

「ここは、俺がもらってくからな。」

と笑いかけ走り出せば
余裕そうな顔で「はい。お願いします。」と
返してきやがる。


本当にこいつはいつでも余裕だよなと
思いその場を後にした。






少し走ると追いかけたは良いが
何処に行ったか分からねぇことを思いだし

体育館まで来て一瞬考える。




俺の話を聞いて動揺しているはずだ。

一人になりたいとき、あいつなら何処に行く?

考えろ、


と頭を悩ませていると思い浮かぶの一つしかなく。


体育館が見えるベンチまで走った。








ベンチまで来ると、やはりななはそこにいて
俯いて掌をぎゅっと握り締めているのが見える。








震えている肩を見れば泣いているのは
一目瞭然で。





「赤司といい、なないい、
 盗み聞きは関心しねぇな。」

と言えばパッと顔を上げる。


その顔は泣いてこそいなかったが目にいっぱいの涙を浮かべ
俺の姿を捉えると、それはとめどなくあふれ出す。






合宿ん時に見たこいつの泣き顔は不安定で、
それでも静かに泣くような



そんな感じに思えたが今はどうだろか。

同じく不安定ではあるが言葉を紡ぎだすのもままならないほどで
どこか壊れてしまいそうなそんな気持ちにさせる。




「…また、お前は一人で色々考えて思い悩んでるんだろ。」

と言いながら横に座ると黙って首を横に振るなな。



『…違うんです。私、。』

と言いよどむななの頭をゆっくり撫でながら


「別に俺が主将を降りたのだってお前の責任じゃねーよ。
 …それに赤司なら任せられると俺は思うがな?」

と顔を覗き込む。

「それに合宿の時にも言ったが、
 どんなことも結局はあいつら自身で
 乗り越えていかなきゃ何ねーこともある。

 …それは俺も同じだ。

 すぐカッとなる性格だからな。」

そう、感情が高まると周りのことが
見えなくなるのが俺の悪い癖だ。

試合はもちろん、これから親父の身に何かがあれば
きっと冷静で試合には出られないだろう。



親父との約束だ。あと一年ここでバスケはする。
けど気持ちの整理っつーのは上手くはいかねぇ。

俺の横で泣いているこいつも、
そうゆう感情か何かがあるのかも知れない。


するとななは目をごしごしと袖で乱暴に拭うと


『…私にも乗り越えなきゃいけないことなのかもしれません。』

とこちらに振り返る。
目や鼻は真っ赤で笑顔だってぎこちない。

「どんな壁か聞いてもいーか?」

と言えば『聞いていただけますか?』
と心配そうな顔で返されたので

「あたりめーだろ。」と笑って見せた。







それから何分話しただろうか。

正直驚くような話であったことは間違いない。




まず、誰もが記憶喪失だと思っていたことがそうではなかった。
はっきりと記憶はあるのだと。
間違いなく自分は秋山ななで

家族、友人もいたこと。


しかし、いろいろあり目が覚めたら
あの大きな事故に巻き込まれていて自分の知らない場所だったと。

そして、数年先の俺達を知っていると言う。


詳しいところまでは分からないが、

いや、伏せられているところは
話せないということだろう。


『…にわかに信じがたいですよね。でも…本当なんです。』



『それなのに何も出来ない自分が腹ただしくて。』


記憶喪失なんかじゃなく

むしろ未来を知っている。

全てではない、と言っていたし
もしそれが本当なら凄い辛いことだと俺は思う。


「…確かに突拍子も無い話で正直驚きは隠せねぇが、
 そんな顔してななが言ってんなら

 疑わねぇよ。」

と心配そうな顔しているななに言えば
再度こいつの涙がこぼれる。

「泣いてばっかりだな。」

と俺が笑えば

『虹村さんの人が良すぎるんです。』

と笑いながら答えてくる様子に
やっと笑顔に戻ってよかったと思う。



「それによ、最後笑ってられたら
 中身がどんだけ辛かったとしても俺は良いと思うぜ?」


終わり良ければ全て良しだ。

しかし
少し格好つけすぎだろうか?と思うも



ななは再度しっかりと涙を拭き、前を見据える。




『変な話をこんなに真面目に聞いてくれてありがとうございます。』


『最後に一つお願い…いいですか?』




先ほどまで泣いていたため潤んだ瞳で見上げられれば、
どきりと胸は高鳴って。

俺はこいつに惚れているんだと実感する。



「…どした?」


と聞けばななは深呼吸をし


『私は虹村さんに沢山支えていただきましたし、
 これからもそうなんだと思います。

 甘えてばっかりで…本当に申し訳ないんですが…。』

といったん区切る。

支えられてんのは俺も同じなんだけど。
なんて考えていると続きが紡がれる。


『この先窮地に陥ったとき、必ず私が助けてみせますから。
 だから信じて下さい。

 たとえ、頭を打ちぬかなければならない状況でも

 …私はここに居ますから。』



だから、格好良く助けられてください。

と笑うななの言葉の意味は分からなかったが


「馬鹿かテメーは。男が守られてどうすんだよ。」

と頭を小突けば


『…例えですもん。』

と不貞腐れていて可愛かった。

「例えにしては熱がこもり過ぎてた気がすっけど?」

と小ばかにすると『っもう!』と
怒りながら笑う姿を見て二人で笑った。




しばらくして落ち着きを戻しベンチから立ち上がる。

「しっかし、まぁ昨日元気なさそうだったって
 友達から聞いて心配してたんだが

 そんな内容じゃ誰にも話せねーよな。」

と言いながら振り返れば『友達ですか?』と
小首を傾げていて



「ああ。…えっとあれだ、体育祭でお前と走った…」

と誰か分かるように言えば『っえ。』と
いきなり声を上げ顔を赤らめるなな。

何かが怪しいと思い

「…なに隠してる。」

と近寄り問い詰めるも

『な、な、なにも。』


と言い勢い良くベンチから立ち上がり後ずさりしている。
本当に怪しい。





俺はななの肩を掴むと
「何かされたんじゃねーだろうな!」と強めに問いただすと


『そんなことありません!何も!』



と俺のてを振り払い走るななを見ながら
逃がすわけねーだろ。と思いながら追いかけた。







捕まえたあと、無理矢理ななに内容を吐かせると


まさか告白されていたとは知らず
明日あいつの死亡は俺の中で決定されたのだった。

































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