▽58.









交流試合より黒子君は、その才能を認められ

晴れて一軍の正式なメンバーとして
ユニフォームを身に着けるようになった。


私も、あんなに酷かった風邪もよくなり
すっかり元気だ。 



それもこれも皆のおかげなのだが


しかし、送ってもらった一件で皆には
一人暮らしということが
バレてしまい


色々心配してくれる皆を宥めるのに困った。



それもあってか、食べ物や飲み物など買ってきてくれたり
部活後はいつも誰かと帰る様になった。


本当に皆優しくて嬉しいのだが



『少し過保護すぎない?』と思い
赤司君に訴えれば




「何事も直ぐに頼らない君には
 このくらいが丁度良い。」

と言い切られ

「全くだ。」と虹村さんに肯定されてしまえば、



もう何も言い返せはしなかった。







だが、これで黒子君も一軍での正式なメンバー入りも決まり

問題なく二年生にもなり


安心かと思いきや




このタイミングで黄瀬君が一軍にやってきたのだ。

体育館に入ると

「アンタに憧れて…」


とキラキラした目で青峰君と話す黄瀬君に


『あぁ…このタイミングで彼は一軍へ来るのね。』
と立ちくらみを起こしそうになった。




まさに、一難去ってまた一難。


問題ばかりだ。







とりあえず教育係の黒子君へケチをつける黄瀬君を
冷やかな目で見ていると



「ななちん感情思いっきし顔にでてんよー。」


と紫原君にほっぺたを突かれ



『紫原君には負けるしー。』

と口調を真似して返した。







いつも通り始まる練習にいつも通り死にかけている黒子君。

最近は練習に着いて行けるようにはなったが、
皆に比べれれば体力がまだまだだ。


黒子君の食が細いのも一つの原因と私は考えている。



虹村さんの休憩という声で
いったん止まる練習。


私は休憩している彼らにドリンクを渡しながら
黒子君のそばにいき


『大丈夫?』

と聞けば



「なんとか…。」と答える。


本当に何とかなんだろうなと。
肩を叩くと申し訳なさそうに笑う。

すると入り口のほうで




「っちーす。」と灰崎君が体育館へ入ってくる。

彼は今日も遅刻だ。






『こら、灰色!遅刻だぞ。』

と冗談半分で怒りに行けば


「灰崎だっつーの。いや、祥吾君と呼んでくれても良いぜ?」

とケラケラ笑う灰崎君。
全く反省していない。



もちろん、そんな彼を虹村さんが許すわけなく
気持ちよく蹴っ飛ばす。




「ああ゛ん?灰崎てめぇ、いいご身分だな。」

蹴っ飛ばされた灰崎君は体育館の隅っこでうずくまり
ピクリとも動かない。



何故だか周りの子達は恐ろしさゆえか
震えている様にも見える。





ぼこぼこにされる灰崎君を見ながらこのままじゃ死んでしまう。
と誰もが思った中で赤司君が




「主将、その辺にしておきましょう。
 灰崎、お前もいい加減にしておけ。」


と一喝し練習へ戻る。流石だ。





「赤司に救われたな。」
と虹村さんは灰崎君を引っ張っていく。


引っ張られながらも
「まじ、容赦ねぇ。」と呟く灰崎君に

『でも、虹村さんには愛されているなぁって思うけどね?』

と笑えば




「余計なこと言ってんじゃねーよ。」
と軽く虹村さんに頭を小突かれた。


それを見ながら灰崎君は気まずそうにそっぽ向くと





「わかってるっつーの。」


と小さくこぼした。








バイオレンスな始まりから少し和み
問題なく今日も終わるかと思えば




遅れてきたくせに灰崎君は偉そうに物を言い


黄瀬君と軽い口喧嘩を行っていて





まあ、灰崎君に関しては黄瀬君と言わず
気に入らない人が居れば

必ず自分から喧嘩を吹っかけるものだから


基本キセキの皆と私、虹村さん意外は
好んで絡みには行かないのだけれど。





やれやれと言った感じで近くに居た緑間君が

「お前ら二人とも見苦しいのだよ。」

と止め、なんとか場は収まったが、
あの二人相性は悪いのかもしれない。





私もため息を吐きながら最終の片付け作業を行っていると



体育館の端に光る物を見つける。

近寄り拾い上げると、中学生にはあまり似合わない物で。



『ピアス…?』

と掌に乗せると、さつきちゃんがその様子に気付き
近づいて私の後ろから

その物を覗く。



「…それ、きーちゃんのかも知れないね。」

まじまじとピアスを見ながら答えるさつきちゃん。



『黄瀬君の?良く見てるね。』

と言えば

「最近のこうゆう見ること練習してるの。
 …赤司君に言われてだけど。」


と可愛らしい笑みを向けるさつきちゃん。

さつきちゃんの情報収集としての力も
開花し始めていると、いうこなのだろう。



『そっか、すごいね。…大変なときは言ってね?』
と笑い返せば


「いつも、お世話になってるもん。
 これ以上甘えらんないよー。」

なんて言いながら顔を赤く染めていて
本当に可愛かった。

『駄目だよー。若いうちに甘えるんだよー。
 …じゃあ、このピアスは黄瀬君には
 私が返して来るね。

 あ、それとも返しに行きたい?』



黄瀬君はファンクラブができるほど人気だ。

もしかしたらと、おもい聞くも
さつきちゃんは意図を察したようで


「ううん、私はそうゆうの興味ないから大丈夫。」

と答える。

さつきちゃんのこうゆうところ割りと好きで
『了解!』と笑い返し走った。












体育館を出てロッカールームまでの途中の道のりで
バッタリと黄瀬君を見つける。


ちょうど良かったと

『黄瀬君!』

と呼び止めると気付き振り返ってれるも
少し怪訝そう顔をされ


「…なんスか?」と一応笑みを浮かべるが
本当に社交辞令のものだ。




『…これ、体育館に落ちてたから。』


とピアスを手渡すと慌てて耳を触り確認する黄瀬君。

そこにピアスが無いことが分かると


「あー、ごめん。ありがとうッス。」
と気まずそうに受けとる。


「…良くオレのって分かったスね。もしかしてファンとか?

 悪いけどバスケはけっこうマジで始めたんで
 出来れば部活中は邪魔しないで欲しいっス。」



と満面の笑みを浮かべる黄瀬君。

けれど、絶対腹ん中は真っ黒だ。



『別にファンでもないし、邪魔するきもないよ?』

と苦笑いで返せば
「へぇー。」と意地悪そうな顔をし


「俺、けっこうあんたのこと見てたっスけど
 スタメンの皆と仲良いっスよね?」


と笑う黄瀬君。


「どんな方法使って仲良くなったかは分からないっスけど

 男に媚びる女嫌いんで。」


と言い捨て体育館とは逆のロッカールームへ歩きだす。

私は黄瀬君の言葉の意味が一瞬理解ができず
呆けるも、馬鹿にされたこと、

見下されたことは雰囲気で理解が出来たので
黄瀬君の背中に



『っちょっと待って!』と叫ぶ。

止まって待ってくれる辺り真面目なのかなんなのか。


『黄瀬君が何を思ってそんなこと言ってるのか
 分からないけど私、黄瀬君に興味ないから!

 あと、黒子君のこともそうだけど
 直ぐに見た目で他人を判断するの
 どうかと思うよ!

 偉そうにさ色々言う前にちゃんと見極めてよ!』

と、腹が立ってしまった私の口は
留まることを知らず

ペラペラとケンカを売るような言葉を吐いてしまう。


唖然とする黄瀬君に
『じゃぁ、ピアスは届けたから。』


と踵を返しさつきちゃんが待つ体育館へと戻る。




『なんなのあれ、なんなのあれ、』と


呟きながら怒りから来る涙を抑えて廊下を歩くと
いつしかの体育祭で一緒に走った借り者競争の司会君がいて

ドンっと曲がり際にぶち当たってしまう。


「っお。」と受け止めてもらうと
司会君は驚いていて

『あ、いつしか一緒に走っていただいた司会さん。』


と言うと「…ひさしぶりってお前どうした?」と
慌てふためいていて


『…何もないです。』と返せば
「そんな顔にも見えないけどな。」切り返される。


『ちょっと同級生に腹立つこと言われただけです。
 私、腹が立つと涙が出るタイプなので。』

と笑えば

「危ない奴だな。」と困ったように言う。



「いいか?涙が出るのは、泣くことでストレスを
 和らげようとしている証拠なんだぞ?

 一人で泣くより誰かに愚痴れ。

 泣く奴は大抵一人で溜め込む奴だって
 …テレビでやってた。」



良いことを言ってる。と途中までは思わなくもなかった。
しかし、最後に自信無さそうな言葉に
笑ってしまう。


すると、ふわりと髪を撫でてくる司会さん。

その目はどこか熱っぽくて


『……あの?』と見上げると




一瞬の沈黙のあと



「好き、だ。」



と司会さんの口から紡がれた。

しかし、そのあと我に帰った司会さんは一気に顔を赤くし
「っ!えっと、じゃ、じゃあ!」と

走るように逃げたのだった。



取り残された私は意外な展開に頭が着いてこず
取り残されたまま。









この世界に来て始めての告白でした。

































































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