▽55,







あれから私と黒子君と青峰君との居残り練習が続き
黒子君はだんだんとミスディレクションをものにしていて



その姿に一人うんうんと
満足していたのも懐かしい。




しかし、黒子君いわく

もう少し完成度を上げてから
赤司君に見せたいとの事で

黒子君待ち、と言った状況。




まあ、赤司君と話してから

まだ三ヶ月たっていないか位の期間だ。


とても早い成長だと思う。






そして私は今家の近くのストバスのできるコートに
高尾君に呼び出されて来ている。



部活前の朝練に付き合って。
と言う可愛らしいお願いだ。




たまに、こうして一緒に練習しているのだが

基本は高尾君が練習しそれを私が見ているか
無理やり1or1につき合わされているかの
どっちが多い。


高尾君との1or1は頭脳戦となる為、
正直青峰君とか黒子君とかより疲れる。

まあ結果、楽しいからいいのだけれど。




そんなことを考えながらコートに入ると

「あっけおめ。」

といつものように明るく挨拶する高尾君。

『おめでとうー!今年もよろしくね。』

とハイタッチ。




高尾君の良さはこのノリの良さだと思う。




「もう新年度じゃん。俺ら二年になんねー。
 今から高校のこととか考えねぇとな。」

と高尾君はウォーミングアップをしながら話す。
運動する気満々で私なんかより服装が軽装だ。



見ていてとても寒そうだ。



『もう?今から高校って早いね?
 それに高尾君はバスケ上手いから

 どっかから推薦来そうだけど。』

と私は高尾君とは、うってかわって買ってきた
暖かい缶ジュースを手でこすりながら

ベンチで体育館座りをしている。



そんな様子に高尾君は笑い

「そっかなー?俺なんてまだまだだし?
 頑張んねーとなぁ。」

なんてぼやきながらシュとボールを投げる。


それはストンとネットくぐり綺麗に入ったが、
やはり緑間君のものに比べたら安定感はなく。




しかし、ずっと一軍で選手を見ているから分かる。
普通のその辺に居る中学生より

ぜんぜん上手い。




『…そうゆう高尾君の前向きなところ好きだなぁ。』


倒したいと思った緑間君と同じ高校に行ってしまい
緑間君を認めて相方にまでなるのだ。


彼だって色んな感情があっただろうに。




『優しいんだよね、高尾君は。』

と笑いながら立ち上がり
ゴール下のボールをとりに行く。


持ったボールを高尾君にパスすると
少し顔を赤らめている高尾君と目が合う。




「…マジで天然で言ってんのが、たちが悪りぃよな。」

と高尾君はパスしたボールを再度私に戻してくる。



驚いてそれを受け取ると

『天然じゃないよ!あと、褒め言葉だから。』

と私もまた高尾君にパスをする。

すると、あきらめたようにボールを持ってため息をつくと



「分かった、分かった。ほら、練習しようぜ。」

と結局高尾君と1or1をする破目になったのだった。









へとへとになりならがら高尾君と別れ学校へと向かう。

一時間と少しの朝練だったが
もう既に私は疲れきっていて何度か授業中寝そうになるも

その度に緑間君に何度も頭を叩かれた。


『痛いよー。』と怒ると「貴様の為なのだよ。」
と緑間君はツーンとしていたが


後からクラスの友達に聞くと
緑間君は時折笑顔を見せていたと言う。




日ごろの鬱憤がそんなに溜まっていたのだろうか?












授業が終わると荷物を整理しカバンを持つ。
隣にいる緑間君は「先に行くぞ。」と
体育館へ向かってしまった。



同じクラスなのでたまに一緒に行くがいつもではないし
そんなに気にしてはいない。



『はいはーい。』と答えながら緑間君を見送る。



すると、横から「すみません。今良いですか?」と
何処からともなく黒子君が現れ驚いてしまう。




『わっ!びっくりしたー。
 …黒子君どうかしたの?』

最近の黒子君は前にも増して
影が薄くなり時々驚いてしまう。

練習の成果か、シックスマン本領発揮と言ったところか。




「今日は確か二軍、三軍の練習試合があったかと思うのですが
 …その試合で新しいスタイルを見てもらえないか
 赤司君に今日言おう思います。」



緊張しているのだろう黒子君は途切れ途切れに話す。





私は少し驚きつつも、ついに。
と言う気持ちが大きく黒子君に自分のこぶしを突き出す


『そっか。分かった。
 私もちゃんと見てるから頑張って!』


と笑顔を向けると「はい。」とう返事とともに
ふわりと黒子君が笑った。










それからは全てが早かった。










まず一軍体育館へ行きフォーミングアップと
基礎練習をこなし

各々が軽く動いていると黒子君が一軍体育館へやってくる。




その間、さつきちゃんや紫原君に
「今日は落ち着きがないね。」
と声をかけられているあたり


私自身も緊張しているのかもしれない。




しばらく遠くで様子を見ていると、
黒子君赤司君、虹村さんの三人で少し話した後行動に移る。







まず、虹村さんが真田コーチを呼びに行き
赤司君が残りの部員に話をしている。



しかし、黒子君の実力を見るという話ではなく

今から二、三軍の練習試合を始めると言うことだけだった。

おそらく混乱を招かないためであろうが
手回しが良すぎるよ赤司君。




コーチを連れてきた虹村さんが

「今から予定してた練習試合はじめっぞー。」
と皆に声をかけると全体がバラバラ動き出す。



一軍体育館では行わないからだ。



私はこのざわめきを利用して
ここぞとばかりに黒子君に近づく。



どうやら赤司君とまだ何か話しているようだ。


直ぐに赤司君が私の存在に気づき
「…なな?」と言うのを

笑顔で返しそのまま通り過ぎる。



そして赤司君の横に居た黒子君の肩をできるだけ強く
パシンと叩き


『黒子君頑張ってね!いつも通り、
 いつも通りでいいから!』



とエールを送る。

もちろん黒子君は予想もしていなかったため
一瞬よろけるも何とか踏みとどまっていた。



「ななさん痛いです。」

と困ったように言う黒子君に

『ほら、緊張を和らげてあげようと思って?』

とふざけて言うと小さくため息を吐く黒子君。




「やっぱり力が強くなりましたね。
 既に満身創痍ですよ。」

なんて黒子君も大げさに言って来る。



『まぁ、マネージャー業も…』
と私が言いかけると先に黒子君に

「伊達じゃないんですよね?」と言われ二人で笑った。





緊張を全て取り除いてあげることはできなかったが
先ほどより晴れやかな顔つきに安堵する。


すると、黒子君から
「ありがとうございます。いってきます。」

とこぶを突き出されて

『いってらっしゃい。』とコツンとあわせた。






それから、三軍体育館で練習試合が行われ
一軍に居た私達は見ることができず留まって


…居ることもできず



練習中の青峰君を引っ張って三軍体育館へ行く。


直ぐに赤司君にはバレて、
ため息をつかれてしまったが気にしない気にしない。





試合はありえないところから
ありえない黒子君のパスが通り

ぐんぐんと点差が開いている。





奥のほうに居る赤司君や虹村さんの表情を
見る限りは好印象であろうことが伺える。




また、黒子君が勝つことは分かっているが
祈るように試合を見ていると

青峰君に横で

「お前が緊張してどーすんだよ。」

と笑われた。





試合は問題なく終わり黒子君チームの勝利。


コーチ含む数名が真剣に何か離しているところを見ると
やはり好印象間違いなしだ。




試合が終わったばかりの黒子君に
駆け寄ることはできないため青峰君と二人で

黒子君にガッツポーズして労いのアピールをすると



めったに拝むことのない



黒子君の満面の笑みが、かえってきたのだった。












後日、この間の練習試合の結果を含めた

冬季昇格者の発表が二軍、三軍であり
一軍体育館でそわそわしていると


「何?ななちんトイレなわけ?」


と紫原君に突っ込まれ

『違うよ!…って女の子にはトイレとか
 そうゆうことは聞いちゃ駄目でしょう!』

なんて話していると赤司君がくすりと笑い
「彼のことだろう?」と尋ねてくる。





私は言い合いしていた紫原君を、
エイッと押しのけると『知ってるの!?』と
赤司君に食いつく。


紫原君は面白くなさそうだ。



「あぁ。もちろん知っているよ。
 そのうち分かるだろうが…まぁいいか。」



と赤司君は一瞬悩むもどうやら答えてくれるようで。



すねたままの紫原君は

「赤ちんはななちんに甘くなーい?」

と抗議している。



『甘くない甘くない。』と私は紫原君に言い聞かせ
練習へ戻るよう促す。



赤司君は赤司君で
「否定はできないな。」なんて呟いていたが

紫原君の耳には入らなかったようで本当に良かった。





紫原君が練習に戻ると赤司君が

「黒子テツヤ君なら一軍へ昇格確定だ。」
と言われ

分かっていたことではあるが嬉しくて仕方なく
青峰君のところに走っていくと二人で喜んではしゃいだ。






その状況をもちろん厳しい主将様が

見過ごすわけもなく二人で虹村さんに怒られた。





また、虹村さんに

「本人が居ないところで喜んでどうする。」

と頭をこつんと叩かれるも

今は黒子君のこと嬉しくにへらと笑ってしまう。
そんな私の様子に呆れてため息を虹村さん吐いていて。








すると赤司君が「なな。」と呼ぶので
振り返ると




「こうなることを何処まで予想していた?」


と質問される。





その目は少しオレンジ色にも
見えなくはない。







いつもとは違う威圧感のある雰囲気と
質問の言葉にどきりとするも


何とか冷静を装い




『どこまでって言われてもなあ…。
 黒子君努力家だから報われてほしいとは思っていたよ?』


とできるだけ当たり障りのない言葉で返す。





赤司君は何かを考えるように少し黙ると



「そうか。なら、今はそうゆうことにしておこう。」


と意味深な微笑みを残し練習へと戻っていく。






残された私と虹村さんの間に流れる沈黙。





『なんかさっきの赤司君怖いですね。』

と言えば


「俺も同感だ。下手なことはできねえな。」

と肩をすくめる虹村さんに少し笑みがこぼれ
練習に戻ったのだった。






























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