▽54.








『もう秋だねー。』

とさつきちゃんとバスケ部マネージャーこと
みっちゃんと三人で一軍体育館の片付けを行なっている。

騒がしかった体育祭も終わり
いつもの日常へと戻ったが、

練習が厳しいことには変わりない。



また、この間あった昇格テスト。
分かってはいたが黒子君は昇格できず、

かなり落ち込んでいた。




心配して真っ先に声をかけに行ったのだが、

そのタイミングで黒子君は三軍コーチに呼び出され
職員室に行ってしまったし

私は私でマネージャー業が残っているため
戻らなければならなかった。





黒子君が心配だ。





「秋と言えば…」とみっちゃんとさつきちゃんが
何か話しをしているが黒子君が心配で

あんまり内容が頭に入らない。





ぼけーとしたまま片づけが終わり
さつきちゃん達に別れを告げ三軍体育館に走る。


なぜ、三軍体育館かと言うと
どんなときも黒子君は居残り練習を怠ったことはないからだ。


だからこそ三軍体育館へ行く。


黒子君もいると信じて。


すると三軍体育館の入り口にもたれ掛かる
緑間君が目に入る。

一軍の彼がどうしたのか。
と思いながら近づく。




『緑間君どうしたの?こんなところで?』

と、ちらりと体育館の中を覗くと見える二人分の影。


「今中で赤司が三軍の奴と話をしているのだよ。」


と小さく返すあたり静かにしろ。

と言うことだろうか。




緑間君がここに居て赤司君が中で黒子君と
話しているというのなら、

今一軍に来るために運を黒子君はつかもうとしているのか。



それは、ここで大人しく待っている方が得策か。
と緑間君の横に並ぶ。





『……黒子君大丈夫かな。』

いろいろ衝撃的な後にあった、この出来事だ。

こんがらがない訳がない。



すると緑間君が

「そういえばお前はあいつと仲が良かったな。」
とまさかの返しに少し驚くと


「教室で良く話すところを見かけていたのだよ。」

と質問していないのに返事が返ってくる。





『緑間君知ってたんだね。』

三軍の〜とか言うものだからてっきり
緑間君は知らないと思っていたため再度驚く。




『意外。黒子君影薄いのに。』

そう半分冗談で言うと緑間君は少し考えて


「確かに存在を認識したのは最近なのだよ。
 まさかバスケ部とは思いもしなかったが

 …不思議なやつだ。」

と怪訝そうな顔をしているので少し可笑しくなった。




そんな話をしていると赤司君が体育館から出てきて
直ぐに私達の存在に気づく。



「緑間、聞いていたのか?…ななまで…。」

と少し驚いている赤司君に



『黒子君とはいつもここで練習してるの。
 最近は青峰君も一緒だけどね。』

と言えば「なるほど。」と納得する。


何かを考えながらも
歩き出す赤司君を後を緑間君が追いながら


「お前が一目置いた奴がどんなものか気になったのだよ。
 たが、オレにはとても信じられん。

 本気であんな奴が化けると思っているのか?」

と緑間君は険しい表情のまま。

反対に赤司君はにやりと笑うと



「…さあね。可能性は感じたが会ったばかりの他人だ。
 友人などではない。

 あれこれする義理はないね。


 俺は糸を垂らしただけだ。

 それを登ってこれるかどうかは彼しだいさ。」


と言い切る赤司君に二の句が告げなくなる緑間君。


どちらかと言うと怖がっている?
様にも見えなくはない。








『登ってくるよ。黒子君は努力家だもの。』

と少し離れた二人に言うと
驚いた様子で緑間君だけが振り返る。


『大丈夫。待ってて。』
と笑えば赤司君も振り返り私の顔を見ると

「不思議な人だ。やっぱり貴女は。」
といつもの笑顔を向けてくれた。





その後、考え込むように体育館に突っ立て居る黒子君に
できるだけ強めに体当たりする。



もちろん身構えていなかった黒子君は
軽くぽーんと飛ばされる。




「…痛いです。」と無表情で立ち上がる黒子君に

『帰ろうかと!』と元気良く声をかけると

仕方ないといった顔して立ち上がる黒子君。




「ななさん力強くなりましたね。痛かったです。」
とむくれる黒子君に

『マネージャー業も伊達じゃないの!』
と返しながら二人で帰った。






この日から黒子君の新スタイル研究が始まる。















あれ以降、黒子君は授業中もぼけーと考えていることが多く
ノートにはPGやらパスやら
ぐちゃぐちゃと色々書き込みがあって


『案外字が綺麗だよね?だから、黒板写そっか。』
と二人で笑った。



そして、その後

いつものように三人で練習し今回は三人で帰っている。



すると黒子君が「赤司君ってどんな人ですか?」と
青峰君に質問していて

青峰君は「ん?あーうめえよ。アイツは頭良いし」と答えながら
何やら二人で色々悩んでいる。

そんな話しを横目で見ながら私も考える。


この数日間、黒子君にはミスディレクションや
パスについては何一つ話してはいない。

変に関与しては…と思ってのことだ。





私が何もせずとも黒子君はこのまま一軍へ行くだろう。
そして、その後黄瀬君も一軍へ行く。


問題はないはず。

病院のほうでも通院時に白金監督のことを聞くが
病状は回復傾向にあると話していた。






しかし、何かが不安でたまらない。






自分は何を見逃しているのか?






分からない。






すると、黒子君が
「すみません。ボクちょっと欲しい小説があるので…。」
と本屋さんの前で別れる。


まぁ必然的に青峰君と二人となり
「途中まで一緒に帰ってやんよ。」

と言う青峰君の言葉に甘え帰っていると



「お前最近元気ねぇんじゃねーの?」

と青峰君に突然言われ、はっとする。

『そうかな?元気だよ!…ちょっと考え事してるだけで。』

と笑えば小さく吐き出されるため息。

「そうかよ。なんのこともなきゃ
 別にそれでも良いけど、無理すんなよ。」



と頭を乱暴に撫でられ



『もう、』と怒りながらそれでも青峰君の優しさに
頬が緩んでしまうのだった。










次の日に朝、教室に入ると珍しく黒子君に呼ばれ
驚きつつも黒子君の席まで行くと

一冊の本を見せられる。




それは、マジックの本。視線誘導の本だった。





「昨日、偶然この本を見つけまして、
 やっと僕は自分のスタイルに答えが出せそうです。

 でも形にするのには時間がかかります。
 なので、今更ですがこれからも僕の練習に
 付き合ってもらえますか?」




と黒子君からお願いされる。


基本無表情の彼が本当に珍しく興奮しているんだと
分かるほど熱気が伝わってきて



『黒子君ほんとうに今更じゃない?
 もちろんだよ、よろしくね。』


と笑えば安心したように笑う黒子君。




「そういえば始めて練習頼んだときもこんな感じでしたよね?」
と少し懐かしそうに話す。

『んー?そうだったけ?
 もう凄く前のことみたいに思い出せない。』


と答えれば呆れたように


「たまにななさんは歳に似合わず
 おばさんっぽいこと言いますよね。」


と突っ込まれどきりとする。が


『間違ってないけど女の子に失礼だぞー!』

と負けじと念の為叱っておくも
最近私とのやり取りになれたのか


「女性だと思っていたらの話でしょう?」

と辛辣な突っ込みに心折れる。




『ーー!もう!黒子君の意地悪!ばーか!』



最終的には私が投げやりになり
子どもっぽいこと言い
自分の席に座る。



そして、腹いせに
おそらく今日の蟹座のラッキーアイテムであろう
ハムスターの人形、

ハム次郎を緑間君から引っつかみ


緑間君に投げたのだった。





もちろん、緑間君には怒られたが



「なんというフォームなのだよ!!
 それでは入る物も入らん!!」


と怒られ


「突っ込むところ、そこかよ!」








とクラスの子に笑われたのは言うまでもない。















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