▽53.








よろよろとクラスのブースに戻ると
一部の女の子から質問攻めに合う。



「赤司様とはどんな関係なの!?」

とか

「どうして赤司様から名前で呼んでもらえるようになったの!?」

とか


私自身どう答えて良いか分からない質問ばかりで
正直戸惑っていると

お昼休憩のチャイムが鳴る。


良かった逃れられると、思ったのはつかの間
今度は散らばる人だかりの中から虹村さんがやってきて

「よっ!」と私に向かって手を挙げる。



『虹村さん!?』とクラスメイトを
掻き分け虹村さんのところに行くと


「昼は弁当だろ?一緒に食おと思ってな。」


と、へらりと笑う。



『え!でも、虹村さんが…』


おそらく一人暮らしと親が居ないことを知っているから
気を使ってくれているんだろうが

虹村さんにだって都合があるだろうと聞き返すも



「今年はうちの家族も来てなくてな、
 まあ、俺が断ったってーのもあるが


 …良かったどうだ?」


確かに家のことはあるだろうが、
どこまで本当かは分からない。

しかし、こうやってせっかく誘ってくれているのだから
お言葉に甘えようと頷いた。



その姿に満足したのか「んじゃ、いくか。」と
虹村さんは私の前を歩き出したのだった。












少し二人でお弁当をぶら下げ歩き、私が良くお昼に使う
体育館の見えるベンチに来る。



「この辺でいいだろっ…と。」と虹村さんが先に座る。


『虹村さんと始めに会ったのもここでしたよね。』

と私も続いて座る。





「そういやそうだった、まだ一年も経ってないのに
 なんか懐かしいな。」


体育館の方を見つめながらお弁当を広げる虹村さん。
なんだか中身がとても可愛らしい。




『わ!凄いお弁当可愛いですね!』

とお弁当を覗き込むと赤、緑、黄色と
カラフルでとてもきれいだ。



「ん?あぁ。なんか妹のやつが張り切って作ってたな。」



と虹村さんもまじまじと自分のお弁当を見ている。
すると、私のお弁当も覗いて虹村さんが

「ななのだってしっかりしてんじゃんねーか。
 自分で作ってんのか?」

とほめてくれる。


何でもないことだが誰にもほめられることは無いので
少し嬉しくなり『はいっ、』と元気良く答えてしまう。

「そうか。」と虹村さんもわしゃわしゃと頭を撫でてくれ
恥ずかしいが、まあいいかと
なせれるがままで。


自分の中身が大人と言うことをわすれてしまいそうだ。







そのあと少し他愛のない話しで盛り上がり
昼休憩の時間がそろそろ終わるなと

どちらがともなく呟くと

ベンチから立ち上がり虹村さんの前に立つ。




『今日は本当に誘ってくれてありがとうござます。』

そういって頭を下げると
私に合わせて虹村さんも立ち上がる。


「こっちこそ、ありがとな。」

そう言い笑いそっぽを向くと頬をカリカリ掻きながら


「赤司に先越されちっまたしな。」

と小さくつぶやく。
しかし私にはよく聞こえず

『赤司君??』と聞き返せば

「なんでもねえよ。」


と顔を赤らめて歩き出す。

その姿を見ながら急いで自分のお弁当箱を
引っつかみ『ああ!待ってくださいよ。』と声をかける。





それでも、なぜだかすたすたと去っていく虹村さんを
追いかけながらグラウンドへ戻った。







虹村さんと途中で別れクラスのブースへ戻る。

あんまり騒いではまた、クラスの女子から
質問攻めに合いかねないため静かに自分の椅子へ戻る。




すると

「ななさんおかえりなさい。
 午前中はすごかったですね。…いろいろと。」


と無表情で言う話す黒子君。


『私が一番びっくりてるんだよ黒子君。』

と冗談めかして言うと「本当ですか?」と
少し冷ややかだ。


『あれ?黒子君少し不機嫌?』


いつも無表情なので自信はないが何だか
機嫌が悪い感じがする。


すると、黒子君が目を見開き俯くと

「すみません。…気にしないでください。
 ちょっと意固地になりました。」


としゅんとする。



『え?』と聞き返すと

「なんでもありません。」とふわりと笑う。

虹村さんと言い黒子君と言い最近の男のはわからない。




そんな話をしながら黒子君と残りの体育祭の観戦ていると



「なな、もうすぐ二人三脚なのだよ。行くぞ。」
と緑間君が呼びに来る。

『いつも俺様だよな…。』とため息つき腰を上げる。

黒子君に行ってきます。と声をかけ
緑間君の方へ行く。

もちろん「いってらっしゃい。」と声をかけてくれる
黒子君は背中を押してくれ中学生ながら紳士だ。









『緑間君やる気だね?』


と横で歩く緑間君に声をかけると


「もちろんなのだよ。見てみろ、少しの差で
 赤司達のクラスに負けている。」


と、スコアボード指さす。

確かにすこしの差で赤司君たちのクラスの色に
負けている。

「ここで挽回せねば。」と意気込む緑間君。


『…ほどほどにね。』

という私の言葉は無視されて始まる。二人三脚。




「いいか、右からだぞ。」

と念入りにチェックする緑間君。
しかし縛った足元の縄が少しきつく

心の中で本当に不器用だな。と思い
笑みがこぼれる。


そんなことをしていると順番が回って
緑間君スタートラインにつき走り出す。




結構いい感じで走り出せている。が、少々緑間君が早い。



『…っ緑間君、ちょっと早い。』

と、抗議すると
「あと、少しの辛抱なのだよ。」
と息を切らさず答える緑間君。



くそ、運動神経が良いとこの辛さは
分かんないんだろうよ。


そんな悪態をつきながら

(もちろん声に出していない。)


やや緑間君に引きずられる形でゴールする。


頑張った甲斐あって一着ではあるが
ゴールと同時にこけてしまう私。

なんとか緑間君は足が縛られている状況にも関わらず
踏ん張りこけなかったた為、


私だけがこけるという少し不思議な格好になる。




「っく。馬鹿、…大丈夫か?」


引っ張られた脚が痛かったのか緑間君は
少し苦い顔をして馬鹿と罵りながら心配してくれる。



『…いっつー。大丈夫。ごめん。』

と立ち上がろうとすると腕をぐいっと引っ張り上げる。

「ったく。世話のかかるやつなのだよ。」


やや荒くはあるが助けてくれる辺り
優しいのか、そうでもないのか。




緑間君は足元の紐を緩めながら、
「少し赤くなっているな。痛むなら氷でも
 もらっておくのだよ。」
と、するりと私の足首を触る。

というより、おそらく無意識で緑間君は触ったのだろうが
足首など、触られることなど滅多に無いため
恥ずかしくなり、顔に熱が集まるのがわかる。

触った本人は気づいておらず
?とキョトン顔だ。


『わわわわ、わかったから!』
と紐がほどかれたことを良いことに足を直ぐさま
引っ込める。




「何を赤く……?」と言う緑間君に
『なんでもない!』と答えクラスブースに帰る。


そして、体育祭は頑張りにも関わらず
二位という結果に終わった。

因みに一位は赤司君所属の色だ。

もう、流石としか言いようがない。


簡単な片付けが行われ一通り落ち着いたところで
保健室へと向かう。



こけた際に負傷した足首を診てもらうと思ってだ。

こけたときはそんなに痛くなかったが
後から痛くなってきたのだ。


保健室へ行って、さつきちゃんとはなして
今日は部活ないから一緒にかえろうかなぁ。なんて
考えていると





「浅葱さん?ちょっといいかしら?」

と、数名の女子に話しかけられる。

声をかけてきたリーダー的な彼女の声は聞き覚えがある。
体育館へ閉じ込められたときにドア越しで聞いた声だ。




『……なんでしょうか?』

めんどくさいなぁ。と思いつつ返事する。

「貴女、やっぱり調子に乗りすぎなんじゃない?」

と、どす黒い笑みをむけるリーダー的彼女。


いや、人気のないところを選ぶあんた等の方が
たち悪いでしょうが。と思うがお口にチャック。


『おっしゃりたい意味がわかりません。』


はっきりそう伝えると、リーダー取り巻き、その1が
「その態度が調子に乗ってるって言ってんのよ!」
と私の肩を思いっきり突き飛ばす。

突然のことで踏ん張ることができず
後ろにびたんと倒れてしまう私。




「虹村君だけじゃなくて、赤司君まで!
 この子の何が良いのよ!」

とか


「どんなコネでバスケ部のマネージャーに
 なったのよ!」

とか

それは、それは、言いたい放題言ってくれる
先輩方。


「何とか言ったらどうなの!!」


最終的には何も言い返さない私に嫌気がさしたのか
何か言えと怒りだす。

やだやだ、最近の恋する乙女はこんなに
ハードでワイルドなのか?
と思いながら立ち上がる。




『お言葉を返すようですが、
 確かに始めは自分の意志で入部したわけではありません。

 が、それでも今は胸張って頑張ってるって言えます。

 生意気言いますけど先輩方もこんなやり方じゃなく
 好きなら好きだって正面から当たっていけば良いじゃないですか!

 そんなに好きなのに
 その気持ちを使うところが間違っていると思います!』




言いたい放題言われて頭にきていたこともあり、
ついカッとなって思ったことを

包み隠さず先輩方に言い返してしまう。


先輩達も一瞬怯むも
直ぐに言い返してくる。





しかし、きゅっと噛まれた唇を見る限り
悔しさが勝っての言い返しだろうが。





「ーーっ!!本当にいい加減にしなさいよ!!」と

取り巻きその1が手を振り上げた瞬間







「おい、何やってんだよ。」

と低いドスきいた声が響く。




その声に反応し、ぱっと振り返ると
怒ってますよオーラを隠そうともしない青峰君と

青峰君の横で少し涙目になりながら
息を整えるさつきちゃんが目に入る。

走って来てくれたのだろうか。

そんなことを考えながら
場違いと分かっていながら顔が緩んでしまう。





先輩方は見られてしまったことに対してか
酷く動揺していたが、

取り巻きその2が臆せず青峰君に突っかかろうとする。



が、リーダーがそれを制する。

「やめなって。これ以上私達の評価悪くして
 虹村君の耳に入ったらどうしすんの?」

と、意外と冷静だ。



「何があったかなんて、その子に聞けば良いわ。

 ……まあ、私達の事を悪く言うんでしょうけど?」

とリーダーさんはキッと私を睨むと、
あっさりと立ち去っていく。




その様子にあっけに取られていると
半泣きのさつきちゃんが近づき私をきつく抱きしめる。

「うー。ななさんごめんね!
 さっき見かけたんだけど、

 どうしても一人で止めに行くのが怖くて 
 大ちゃん呼びに行くのに時間かかっちゃった。」




と申し訳なさそうに誤るさつきちゃんの頭を撫でながら


『ううん。さつきちゃんが巻き込まれなくて良かった。
 …ありがとう。』



と笑えば抱きついているさつきちゃんの腕に力が入る。
少し震える肩を見る限り、そうとう怖かったのかもしれない。

ちらりと青峰君の方を見ると
「ま、なんともなくて良かったじゃねーか。」と笑う。



おお、ピュアだ。



『青峰君もありがとう!
 こう、いい感じのところでシュッと入ってきて
 少女マンガの王子みたいだったよ!

 …キャッチフレーズはさしずめ見た目は腹黒、
 中身は真っ白ってところかな?』



とふざけると



「おまっ!馬鹿にすっともう二度と助けねーからな!」



と案の定、顔を少し赤くし怒る。

王子と言われて照れてるのか

見た目が腹黒と言われて怒っているのか。


と考えていると
大きく揺れるさつきちゃんの肩。



「ふふふ、あはははは。

 見た目は黒くて中身が白いとか
 大ちゃん…ふふふ。」


と大爆笑だ。さつきちゃんにうけた。嬉しい。


「てめっ!さつき!お前も笑ってんじゃねえ!!
 あと、その呼び方止めろって言ってんだろ!」


と再度青峰君は激怒。


その後三人で戻ったが帰り際に、
前回のこともあるため「黒子君には秘密ね?」と

青峰君に言ったのに
仕返しとばかりに青峰君が黒子君に報告し説教されたのは

また別のお話。
















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