▽35.






ピッ、ピッ、ピッ。と規則正しい機械音が
聞こえてくる。

うっすらと戻る意識のなかで
あれ?私死んでないのかな?と思う。

ここ、何処だろう。と目を開けると
白い天井に自分の腕には点滴がさされてある。

病院、、なのかな?と思い起き上がろうとすると
身体中がバキバキと痛む。
あれ?私撃ち抜いただけなのにな? 



あ、もとの世界に帰ったのかな?
交通事故だったしな?と
思うも

疑問だらけだ。

すると、私が起き上がった事に気がついた看護師さんが
驚いた顔で駆け寄ってくる。




「大丈夫?意識ある?…お名前言えるかしら?」
と、どう考えても同い年位のお姉さんが聞いてくる。

一瞬馬鹿にしてるのか?とも思ったが



『…秋山 ななです。』

と名乗ると少し悩ましげな顔で看護師は聞いていて
とりあえず、点滴だけかえるね?と
看護師さんは去っていく。




一息つくと先ほどまでの出来事が全て夢のようで。
死んでしまうと思っていた分よけいに
そう思ってしまう。



にしても、だ。こう、一人部屋の病室なのだが
あんまりにも殺風景じゃないか?と思う。

私の手荷物と思われる物もなければ
家族や友達などが訪問した形跡がない。

確かにそんなに友達多くないけど、さ!
こう、何かが気にかかる。

少しなら動けるだろうか?と
テレビ台の上にあった手鏡をとり傷の確認をしようと

思った。

が、しかし鏡に映ったのはだいたい小学生〜中学生くらいの
女の子で。

確かに自分の顔の特徴はそのままであるが
少し美化されていなくも、ない、

『……………………はい?』



何だがデジャブなこの感じ。


それと同時に看護師さんと婦長と思われる年配の女の人が
部屋を訪れた。

驚いている私はそっちのけで
話を始める婦長さん。
その内容は信じがたく。再度『はい?』と言わなかったことを

誰か、誉めてください。



婦長さんが話した内容はこうだ。
先日、近くで大きな交通事故があったそうで

車4台と数十人の歩行者を雪崩のように巻き込んだ
大きな交通事故で。



とても、幸運なことに死者はおらず
しかしそれでも重症者は多かったそうだ。

どうやら私はその交通事故に巻き込まれた歩行者。
と言うわけだそうなのだが
未だ身元が分からない。とのことだった。



婦長さんから再度、名前はわかる?

なぜ、あの交差点にいたの?
自分のこと思い出せるか?など質問をされたが



まず、私が跳ねられた場所は交差点ではなかったはずで
私のまわりには私以外はいなかった。

震える声で『どこの、どこの交差点ですか?』と
尋ねると難しい顔をしながら婦長さんは「○×△交差点よ?」
と、答えてくれる。

だか、聞き覚えがない。



『…すみません。わかりません。あの…ここは何県です?』


私は素直に知りたくて聞いたのだが
その質問が決定打となり優しく婦長さんが私の頭を撫でると

「東京都よ?…記憶がなくなってしまったのね。
 …大丈夫だからね?」と言ってくれる。

いや、記憶が無くなってしまったわけではなく
身体が縮み、良くわからない場所にきてしまった。
ということは分かるが説明しても
到底信用に足る内容ではなく諦めて『はい。』と頷く。

どうやら、帰ってきたと思っていたが
ここは私の知っている世界ではないようで。

そもそも自分自身ちがうのだから。




そのあとは、交通事故の衝撃で記憶喪失となった私。

このあと、どうしようと考えていたら
婦長さんの優しさが滲み出る対応がまっていた、



どうやら、私は一週間近く寝ていたようで

その際にあらかた身元などは調べて
元々私に戸籍自体ないことは判明していたんだとか。

なので、まずは戸籍からつくらないと、と
まさかの婦長さんが現地の警察の方と作ってくれたのだ。


しかも、最近婦長さんが担当していたとある会社の社長さんが
病院でなくなられて
その、遺産相続について婦長さん自身困っているの。
と話してきた。幼い私に。

大丈夫か、おい。
とも、思ったが
 
まあ、結果から言うと直接私への説明と承諾が必要だったと
話していた。

内容として、社長さんは遺産相続する家族や血縁者がおらず
死ぬその間際まで担当してくれた婦長さんへ相続意思を残し
亡くなったそうで、

しかしそれが気に入らない
会社の上層部がわちゃわちゃと言ってくるそうだ。

婦長さんは「それでね?」と続ける。
戸籍の無い私が社長さんの名字ごと遺産相続をしたらどうだ?

とのこと。
ちなみに遺産相続第一候補の婦長さんが一番権限があるそうで。

私としては、こんな良くわからない世界で
生きていくのにお金が有ることにこしたことは無い。

もちろん、良ければと承諾した。

名字が変わってしまうのは少し、いや結構嫌だったけど
名前が変わらない分ましかと思う。


あとは弁護士さんに任せるからと
婦長さんは優しく微笑む。



『何から何まですみません。』と頭を下げると
「いいのよ!子供は大人に甘えなさい?」と言われる、

素敵な大人だ。私もこんな大人だっただろうか。


去り際に婦長さんが体調が急変しないかぎりは
明日退院できると言われてしまったが
 
どうしよう、帰る場所無いよな。
と思っていたら



婦長さん、流石です。
微笑みながら


「住む場所なら私と地元の警察の方と探すから
 遺産相続と家が決まるまでは弁護士さんの家で
 面倒見てくれるそうよ?」

とのこと。
なんと、本当に申し訳ない。






「ああ、そうだ。名字忘れないうちに伝えておくわね。



 明日から、浅葱、浅葱ななさんよ?」



そういって笑顔で婦長さんは部屋を去っていく。



それと入れ違いにピシッとした女の人が同い年位の男の子を
連れて病室に一礼して入ってくる。

とても、しっかりしている。


「目が覚めたばかりなのにごめんなさいね?
 明日から一緒に住む者よ?

 遺産相続とかも私が担当するから心配しないでね?」

と頭を撫でられる。
本当に子供認識だ。

すると、じぃーと男の子がこちらを見ていて
じっと見返すと、………ん?なんか見覚えが…?





「ああ、ごめんなさいね?この子はうちの息子。ほら。」

と女の人が手で男の子を前に押し出す。


「花宮真です。これからよろしく。」と

笑顔で挨拶されたが
頭はそれどころではない。

花宮?真?

言われてみれば幼いが花宮君だ。


ということは、私は何かの手違いで



皆の世界に来てしまった。





と言うことなのか。




















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