▽51,









キュっキュとなるバッシュ音に
ダムダムとドリブルする音が静かに体育館に鳴り響く。


現在、部活の合間に抜け出して黒子君の
居残り練習を見に来ているのだ。




先日の水色君事件については、

黒子君の殴られた頬を冷やしたり

怒る黒子君にを宥めたり

それを見て笑う水色君を二人で叱ったりと




わたわたとして終わり
結局水色君とはしっかりお話できていない。



と、言うより何を話して良いのか分からない。



あの世界に居たのに水色君のこと何もわかっていない。


体育館の片隅で一人悶々と悩んでいると
「ななさん。」と黒子君に声をかけられハッとする。




「この間からぼけーとしていることが多いようですが
 どうかしましたか?」


聞こえていたバッシュ音もいつも間にか無くなり
黒子君が心配してくれていて




『ううん。なんでもないの。ちょっと考え事。』

と笑えば「そうですか。」と追求はしてこず。



しかし



「何かあったら頼ってくださいね。
 教室でも元気ないとクラスの人たちが言っていましたよ?」



全くこんな年下の子に心配かけさせては
私もまだまだ駄目だなと笑い返しながら

『ありがとう。大丈夫じゃなくなったら聞いてもらおうかな?』


と笑いかけ、ゆっくりと立ち上がる。

よいしょっと掛け声をつける私に
おばさんですか?と辛辣な突っ込みを黒子君が入れるが

間違いないよーと心で同意しておこう。



座っていたため皺になったスカートを手で払い
『ちょっと一軍見てくるー。』と黒子君に声をかけ
いったん体育館を出る。




一軍の練習自体は終わっているだろうが
一軍でも自主練習の為残っている人は多い。


ちなみに必ずといって良いほど

赤司君、緑間君、青峰君、紫原君ははいる。
はじめは紫原君も残ってするんだ。と驚いた物だ。

もちろん虹村さんも主将ということもあって
良く皆と残っていたが最近はたまにしか残らないようになった。


おそらくだが、この頃から家が大変だったのかもしれない。


一軍体育館前まで行くとさつきちゃんと
もう、ひとり一年生のマネージャーが居て二人で話している。


『おーい。さっつきちゃん!』

と声をかけると二人とも気づき手を振ってくれる。

小走りで駆け寄るともう一人のマネージャーの子が熱く語りだす。

「ね!ななちゃんも青峰君格好良いと思わない?」
とずいずい来る。

どうやら、さつきちゃんに青峰君格好良い。

幼馴染良いな。

という話をしていたようで。




しかし、同意しないさつきちゃんに痺れを切らしたところに
私が来たとのこと。



『青峰君…?うーん。どうだろう。』


と悩んでいるとマネージャーの女の子が
持っていたタオルが落ちそうになる。

しかし、それを受け止めたのは
素敵なタイミングで通りかかった赤司君。





「おっと、気をつけて。

 あといつもありがとう日々チームを
 支えてくれていることに感謝しているよ。」

そう言いながら紳士的に、さりげなく元に戻してあげる。



女の子は顔を赤らめて惚けているではないか。

『……。』

「わっ」と驚くさつきちゃんに、
これはファンクラブできるわ。と思いため息をつく私。

あとは、赤司君と一緒にいたが知らぬ顔の緑間君。




が、私を見ると

「なんだ居たのか。帰ったのかと思ったのだよ。」
とブリッジをあげる。


『さつきちゃんに全部残したまま帰りませんよー、
 そこまで鬼じゃないし。』

とむくれると「馬鹿め。」と一刀両断。



いやいや、おかしなことは言ってないよね?




「!!。そうだった。ななさんに
 言おうと思ったんだけど
 こっちはだいたい終わったから返っても大丈夫だよ?」



とさつきちゃんが思い出したように言ったくれ、
にこりと笑う。



『本当?ごめんね、二人ともありがとう!
 今度ジュースおごるね。』

と言えば「やったね。」と喜ぶ二人。



ジュース一本で大げさだな、と微笑ましくなるが自分が
この年頃のときはジュースでも

相当嬉しかったかもしれない。




『あ、あとさっきの回答だけどやっぱ旦那の緑間君を
 放っては選べないよね私としては!』

と冗談めかして笑って見せたが
緑間君はいつものように顔を赤くし「お前っ!!」と

ふるふる震えている。




何故か、さつきちゃんも照れていて。





「調子の良いことばかり言うんじゃないのだよ!」

と緑間君に怒られてしまうが、それを無視し


『最近クラスの子が心配してるみたいだからね!』

と言い三軍用体育館へ戻ろうと踵を返す。






すると、後ろから緑間君が「帰るのか?」と
声をかけてきて

『ん?もうちょっとしたねー。』と返す。


緑間君は考えるように一瞬黙ると
「気をつけて帰るのだよ、なな。」


と少し顔を赤らめ言う物だから私もつられて照れてしまう。
横で赤司君が面白そうに笑っていたが。





『え?え?緑間君どうしたの!?』
と驚けば「早く行け。」と怒られてしまい、

しぶしぶ黒子君のところへ帰る。









後ろで赤司君が

「…緑間。この間合宿のしおりを作る際に話した
 俺の話を気にしていたんだろう?

 ななが名字に慣れていないんじゃないか
 と言う話に。」



と緑間君に話しかけ



「………必要な際に呼んで気づかれないのは
 困ると判断しただけなのだよ。」



と緑間君がツンレデを発揮していたことは後日
さつきちゃんからこっそりと聞いたのだった。

















『さつきちゃん達がしてくれたおかげで
 今日はもうやることないし、黒子君と帰れるかな?』

と、ぼやきながら体育館に入ると


「うわぁ」っと言う男の子の声が体育館に響き渡る。





どうしたのものかと体育館を見渡すと
端っこで、うずくまる青峰君と

その傍で立ち尽くす黒子君がいた。








あぁ、今日は二人が出会った日なんだと。

そう直感した。






しばらく体育館の入り口でこっそりと二人を見つめる。

驚いた青峰君と黒子君が少し話しをし
とたん嬉しそうな顔をする青峰君。

そのあと二人こぶしをコツンとする、いつものあれ。









この瞬間に自分が居ることが
今更ながら不思議な気持ちになり



邪魔したくなかったので静かに傍観していた。






しかし、黒子君は私の存在に気がついていたようで



「一人じゃありませんよね?」

と笑顔でこちらに振り返る。



その様子で青峰君もこちらに気がつき目があうと「ななお前…。」と少し驚いても居たが
納得もしていた。




「お前も一緒に練習してたから一軍の体育館から  ちょいちょい消えてたんだな!」

とこちらに近づき私の肩を無遠慮にバシバシ叩く。





「青峰君…力加減を覚えたほうが良さそうですね…。」
と黒子君は黒子君で心配しているが
嬉しいことが勝ってか止めはしない。



『ばか、青峰君痛いってば。』

と怒るも笑顔で

「じゃあ、これからは三人で練習な!
 ななだと気心知れてんし楽だぜ。」



と笑う青峰君に『気心なんて言葉知ってたの?』と
馬鹿にすると

「馬鹿にすんなよ、仲良しって意味だろう?」と
威張る青峰君。



「少し違う気もしますが…。」と
普通に通込む黒子君を見ると、

じわじわと良く分からない気持ちがこみ上げてくる。





なんか、二人が話してるとこ見ると感動して涙がでそうだ。


「…!?ななさん?どうかしましたか?」

といち早く私の変化に黒子君が気がついてくれる。


『ううん、なんでもないの。これから三人で頑張ろうね。』

と言えば目を二人は、ぱちくさせ「おぅ。」とか
「えぇ。」とか答えてくれる。






すると「ほらよ。」と青峰君はこぶしを差し出す

それのこぶしに三人でこつんと合わせた。


ここから、青峰君込みの居残り練習が始まる。




ちなみ、この後は三人で仲良く帰るようになり
青峰君にも家がばれたのだった。















prev / next

[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -