▽50.





怒涛の三日間が過ぎ平和な日々が
戻ってくる…訳もなく


ハードな練習は続き
ついに一年目の全中を向かえた。





会場は色んな学校の生徒で溢れかえっていて
活気に満ちている。


『凄い人だね…。』

何気なくつぶやいたつもりが赤司君にくすりと笑われ

「はぐれない様にするんだよ?」

と何歳も年下にあたる彼に言われてしまう。


『大丈夫だよ!…たぶん。』

ぐっと意気込めば後ろでため息をつき


「強気なのか弱気なのか分からないのだよ。」
と緑間君は眼鏡のブリッジを上げるのだった。








そのあと皆と会場入りし

開会式が終わり

順調に勝利の駒を進めていく帝光中。



圧倒的な強さだ。




もちろん、無冠の五将の皆もいて
なかなか良い勝負にはなるが勝つまでにはいたらず。

しかし、彼らは負けること自体が初めてではないのか

悔しがりはするものの我を見失う人は一人も居なかった。

やはり、キセキの世代と無冠の五将。

この二組の大きな違いの一つだと私は思う。


負けることで学ぶこと

学ぶことで次に活きるものも多く有るだろう。






試合中のマネージャー業といえば普通の練習よりは内容が軽く、
スコアブックはいつものようにさつきちゃんがつけてくれている。

なのでぼんやりと試合を見つめているわけなんだけど、



やっぱり皆は凄くて。

楽しそうに無邪気にバスケをする皆を見て

この時が続いてほしいと。再度強く思った。











▽▲













何日間にわたった試合も帝光中の勝利で終わり

スタメンの皆は月間バスケットの取材に応じていた。

素行の悪い灰崎君は引っ込められていたけど。





さつきちゃんも表立ってマネージャ業を行っていた為、
敏腕マネージャーとして取材を受けており

遠めでそれを微笑ましく見ていたが

帰りのバスへ荷物を運ばないとと私は動き出す。



応援組みは会場解散。

選手は一旦学校に帰りミーティン後解散なのだ。







応援組みに各自解散の旨、先輩に報告しバスへと向かう。

まだ、人が多い。




何試合までは駒を進められたと喜ぶ者。


今回もどこそこの学校に勝てなかったと泣く者。





ちなみに、花宮君達も見かけはしたが

試合に負けてしまっていて肩を落とす今吉さんが目に入り
なんとなく声がかけづらいのだ。







『青春だな…。』



とバスへ急いでいると足元にバスケットボールが
コロコロと転がってくる。



こつんと私の足に当たり止ったボールを拾い上げ
転がった方を見ると、黒髪の男の子が


「すんませんー!それ俺のっす。」



と聞き覚えのある声で
叫びながらこちらに走ってくる。

はっきりと顔が見えるとこまで来るが
やはりどことなく見覚えのある幼い顔で。





「いやーマジすんません。」




そう謝る彼に

『ううん。大丈夫。』

とバスケットボールを手渡す。
すると不思議そうに顔を覗き込んでいて



「もしかして、帝光のマネージャー?」

と言い当てられてしまう。

言い当てられたことと
帝光のと言われどきりとする。

間違いなく、今回一度は帝光に負けている
また、彼はこれから緑の彼を超えるため部活に励むのだ。



今に時点で敵視していてもおかしくはない。




しかし、どきりとすると言うことは
少なからず嫌われたくないと

私は思っているのだろう。

我ながら本当にしょうがない性格だ。



『え、うん。』

とぎこちなく返すと私の心配とは裏腹に

目を輝かせ始める。


「やっぱマジで!?
 もし良かったらさ俺の練習見てくんね!?

 今回入ってきた帝光の一年凄いやつばっかじゃん?

 やっぱ超えようと思うんなら良いとこ盗まねえとな。」




とのこと。

どうやら彼は帝光の練習方法だったり
自分とキセキの彼らと、

どう違うか見てほしいとのことだ。



初めて知り合ったのに
なんて大胆なお願いなんだ…と驚くも

一生懸命さは伝わってくる。



「お願い!このとーり!」

と手を合わせてこてんと首をかしげる
可愛い仕草にキュンとする。



『…わかった。あんまり力には、なれないかもだけど。』

そう言えば再度ぱあっと明るくなる顔。


「あんがとう!マジ助かる!…頼んでみて良かったぁ。」
と胸を撫で下ろす姿を見ると

こちらも嬉しく思う。




『でも、マネージャーも忙しいから
 頻繁には無理だと思う…

 あ、あと私、一年の浅葱なな。よろしくね?』

そういえばと自己紹介をすると、忘れてた!
見たいな顔をして


「俺は高尾和成。おんなじ一年。よろしくな。」

と笑いかけてくれた。

同じ一年ということに高尾君は驚いていたけれど
逆に年上だと思い萎縮してしまっていたので

良かったとのこと。


その後は連絡先を交換しロスしてしまった時間を
取り戻すべくバスまで走ったのだった。





が、



あんなところに出くわすとは思いもしなかった。









バスに荷物を置き急いで皆のところに帰る途中

なにやら騒がし集団を見つける。

それは良く見ると帝光の生徒と他校の生徒が
殴り合いの喧嘩をしているのだ。

まさかと、思い見るも一番喧嘩をしそうな灰崎君ではなく

見覚えのないすらっとした黒髪の男の子。




白金監督に部を任せた。と言われた分

見てみぬフリはできなくて
一度虹村さんたちを呼びに行こうか?

と悩むも行ったところで間に合わない可能性が高いと
判断し止めに入ることを決意。



いったん、深呼吸をする。



『ちょっと何喧嘩してるんですか?
 うちの部員が何かしましたか?』


できるだけ穏便に済ませたい為
柔らかく問いかけるも喧嘩真っ最中の彼らには意味はなく。




「ああ!?んだよお前??」

と、どすを聞かせながら怒る他校の彼は見たところ
一年生ではなさそうだ。




『帝光中バスケットボール部のマネージャーです。』


監督不在の中こんな問題まっぴらごめんだぞ。と
心で悪態つきながら話す。



「マネージャー??…まあいい。
 言っとくけど先に手を上げたのはお前ん所の部員だぜ?」
と、あざ笑うように言う青年A。


いまいち状況が理解できないので帝光の子の方に話を聞く。

「…あんた一軍の」




と言うところを見ると彼は私を知っているようだ。

どうやら話を聞くと帝光に負けた青年A君が
やっかみに来てそれに腹立て殴った。とのことだ。

まぁ、なんともありそうな話だが。





「確かに手を上げたのは俺からだげど、
 先にふっかけて来たのはそいつらだ。」


と息巻いて怒っている。



『わかったから落ち着いて。』と
彼をなだめるも、あまり効果はないようだ。




「はっ!試合にも出てねえクソが優勝気取りで
 道のど真ん中歩いてやがったからだろうが。」


と三軍、二軍の痛いところをついてくる。


「帝光は良いよな、スタメン入りしないでも
 優勝と言う肩書きがもらえるからよ!」


馬鹿にしたように青年Aは言い、
彼の同じ学校であろう生徒が何人か騒ぎを聞きつけ止めに入る。


私も今にも殴りに行きそうな三軍の子を抑えているが

正直私も気が気ではない。

なかなかムカつく物の言いかただ。





「てめぇ…っ」

と憤慨する彼を止め私が一歩青年Aへ近づく。





『言葉を返すけど、優勝と言う言葉をもらったって
 貴方みたいな低俗な輩のせいで、

 彼は素直に喜べないし誇れない。 

 …三軍の何が悪いのよ。
 一軍だからって何が変わるって言うの?
 貴方なんか三軍にさえ入る資格のない
 ただ自分の非力さを吠える負け犬よ!

 やっかむ暇があるんなら次は勝つ位の
 気合を持てばいいじゃない!』




私が少し声を荒らげ青年Aにそういうと彼と
彼を押さえに来た者は驚き、

三軍の子もぽかーんとしている。




言い切った後に、騒ぎを止めに行ったつもりが
大きくしてしまったと少し後悔もしたが

血が頭に上った状態では冷静な判断ができない。

しかし、青年A君も黙っているわけもなく

「うるせー!!!」と手を振り上げる。



その手はグーを作り間違いなく
私に向かって振り下ろされる。

痛みに備えて目をつぶるも痛みはこず
変わりに聞こえたのは私じゃない誰かが殴られる音。





驚いて目を開けると私の変わりに殴られていたのは黒子君で。
どうやら、庇ってくれたみたいだった。

私も『黒子君!!』と急いで駆け寄る。

すると少し身体を起こし黒子君が
しっかりと殴った青年Aを見つめて




「確かに僕たちは試合には出ていません。
 それでもあなた方に勝ったことは変わらない。

 でも、僕たちが出場していないのも事実です。
 …なので来年はコートで会いましょう。

 そして必ずまた勝ちます。」


黒子君はそういうと砂埃を払い立ち上がる。
『大丈夫?』と聞けば
「大丈夫です。」と返される。

本当に強がりさんだな。





青年A達はあきらめたのか
黒子君の言葉に胸打たれたのかは分からないが、

バツが悪そうにかえって行く。



舌打ちしたのはしっかり聞こえたが。

やれやれ、と黒子君はこちらに振り返ると
私の頭をゴチンと叩く。


「遠くで見ていましたが、貴方は馬鹿なんですか?
 あんな言いかたしたら火に油を注ぐようなものです。」

と、何故かお叱りを受け。



しかし、私の変わりに黒子君が殴られてしまったこともあり

言い返すことはできない。



『ごめんさい。腹が立ってつい……。
 黒子君はどうしてここに?』

偶然にしてはできすぎているような…
と思っていると

「水色君が点呼の際見当たらなかったので探していたところ
 ななさんの声を聞いたんです。

 …まさか一緒にいるとは思いませんでしたけど。」


と黒子君はちらりと三軍の子に目をやる。

え?水色君…だって?まさと…と思い見ると彼は何食わぬ顔で

「黒子迷惑かけて悪かった。喧嘩も元を辿れば俺の責任で
 この人の責任じゃない。大目に見てやってくれ。」

と普通に話している。

私は恐る恐る
『み、みみ、水色君?』とたずねると

「ん?…あぁ、俺は水色要。三軍だ。」


と言ったのだ。



もちろん私は、あんなに探しても見つからなかった
水色君が見つかったことと


あの不思議な世界で非道だった彼が
こんなにも普通の生徒と言うことに驚き、


その場で絶叫したのだった。





























prev / next

[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -