▽49.









朝目が覚めると幾分が気持ちはすっきりしていて

泣いたおかげだなと少し自傷気味に笑った。

また、泣いて疲れていたにもかかわらず
今日も朝早く目が覚めてしまう。


昨日の緊張が残っているのか?
なんて考えながら、

寝ているさつきちゃんを起こさないよう
部屋を出て洗面台へと向かう。





鏡に映る自分を見ながら目の赤さは引き、
目立つほど腫れてもおらず

ほっと胸をなでおろす。




『良かった。この位じゃ大丈夫だよね…しっかりしなきゃ。』

そう自分に言い聞かせ食堂へと向かう。



今日は最終日だし、おば様の手伝いをしたいのだ。






食堂からは既においしそうな匂いがしており
心がなんだか癒される。





『おはようございます。』

と自分なりに元気良く食堂へ入る。


おば様は今日も笑顔で迎え入れてくれる。




『今日はほうれん草のお浸しがあるんですね。』

なんて、いつも通りの会話から始めて。








朝食もそこそこ出来上がり、
さつきちゃんを起こしに行こうかな?


と考えているとバタバタとした足音が聞こえ目を向ける。

すると、起きて間もないだろう

さつきちゃんと、
さつきちゃんに引きづられる形で紫原君が食堂へやってくる。





「ななさん!!!朝お手伝いしていたなんて!!

ごめんね、言ってくれたら私も起きたのにー!」



と慌しいさつきちゃんに、
おば様は「まぁまぁ。」と笑っていて。

どうやら何かのきっかけで紫原君に内容でも聞いたのだろうか?


『おはよう、さつきちゃん。
 朝のお手伝いは別にやらなきゃいけないって訳じゃなかったし

昨日も今日もたまたま早く起きて時間を持て余したから
 手伝ってただけだよー?』

と言うも納得していない様子で。



「でも、私何もしらないまま寝てたし。」

と、どうやら罪悪感を感じているようだった。


もう、本当にいい子だな。

なんて考えながら微笑ましくなり笑う。


『気にしない、気にしない。

 …あ、でも先輩には内緒ね?
 さすがに怒られちゃいそうだし
 先輩の面子は守らないと!』


と、やや冗談半分で言うと紫原君が

「その言葉が一番失礼だけどねー。」

なんて絶妙に突っ込んでくるものだから
四人で笑いあったのだった。









かくして合宿最後の朝食が始まる。

「おい、さつきこれ食え。」


私の前で青峰君がほうれん草を
さつきちゃんのお皿にちょいちょいと乗せていく。

もちろん、さつきちゃんは


「大ちゃん!」と呼び名が戻ってしまうほど怒っていたが

「だから、やめろって。」
と聞く耳持たず。


『今日も平和だねー。』

と横の紫原君に振れば

「馬鹿なの?」と何故か辛辣に返され

『え!反抗期ですか!?』とすかさず突っ込む。





すると


「静かだったのは昨日だけだったようだな。」

と緑間君はため息をついていた。




『緑間君いい?平和が一番なんだよ?
 見てよこの光景。』

と、青峰君を指差す。




「…青峰が馬鹿やっているようにしか見えないのだよ。」





だから、どうした。と
言った顔で黙々と朝食を食べていく緑間君。





「んだよ、つーか指差すんじゃねえ。」

結果さつきちゃんが折れてほうれん草を
食べてあげる形で収まった二人は

自分たち話をされていることに
やっと気づく。




しかし、最後に言葉をしめたのは
まさかの紫原君で


しかも



「もー、三人とも馬鹿でいいんじゃない?」



なんて言うものだから最終さつきちゃんが怒って終わった。





最終日と言うこともあり午前中のミニ試合の後
片付けをし、学校に帰ることとなったが

私は少しだけ試合を見て

あとは帰り支度に終われ

あれ以降、白金監督と話していない。




「浅葱さん、そろそろ戻ってきて。」と言う
先輩の声で一度皆がいるホールへ戻ると

試合は終わっていて

白金監督と虹村さん、赤司君が何やら話している。


すると、虹村さんが私が来たことに気づいたのか
ちょいちょいと手招きしていて

来いと言うことだろう。


不思議に思いながら近寄る。


すると、虹村さんが

「昨日監督と話しした内容を赤司にも伝えておいた。」

とのこと。


なるほど、だから三人で話していたのか。

一人で納得していると監督が話し出す。


「それじゃ、私は先に帰るよ。部のことを頼む…あと…」

どうやら監督は急ぎの仕事のため
ミニ試合を見終わった時点で帰るつもりだったとのことで。


しかし私のことを心配して何気なしに言ったのだろう言葉が
誰にも明かしていない私にとっては

一番知れてはまずい二人への爆弾発言になる。



「浅葱君、君は一人暮らしで大変だろうから
 無理せずもっと周りを頼るんだよ。

 …それではね。」




颯爽と去っていく白金監督の背中を
無言で見つめる私と、虹村さんと、赤司君。



この無言の空気が痛い。



逃げるが勝ちが…かな?と思い

『……私はさつきちゃん手伝ってくるね。』


と、駆け出して行こうとしたとき
ガッと肩を掴まれる。


「おい、こらなな。どういうことか説明てもらおうか?んん?」


ぎこちなく振り向くと怖い笑顔の虹村さん。

赤司君にいたっては改名した事も知らないため
なんのことか良くわかっていない。


『えっと…はい。』


何とか言い逃れできないか考えていると


「あの…話の内容の中身が見えないのですが。」



と赤司君が私と虹村さんの間に入ってくれる。

助かったとは言い難い状況だが。




『私数年前の大きな事故に巻き込まれたことがあったみたいで
 その時にいろいろあってね。

 名字とか変わっちゃって独り身なんだ。』

へへと笑って見せるけれど難しい顔の赤司君。


「虹村さんはご存じだったのですか?」



「あぁ、こいつが入学する前に一度会ってな。
 大体は監督に聞いていたが…

 一人で暮らしていたなんて聞いてないぞ、こら。」

と虹村さんに頭を小突かれる。



『いやぁ…言うことでもないかなって?』


と笑って見せるも虹村さんの表情は変わらず。


「言うことだろが!ったく…お前も本当に周りに
 助けをもとめないやつだな。」

あきれる様に虹村さんは言い頭をなでると
「これからは、困ったら頼れ。直ぐに頼れ。わかったな?」

と半強制的にうなずかされる。


何か言いたげな赤司君が口を開いたときに
ちょうどさつきちゃんが私を呼びに来る。



「あれ?ごめんなんかお取込み中…だった?」

と少しおろおろとする、さつきちゃんに
「全然そんなことないよ!むしろもう少し早くても
 良かった!」

とさつきちゃんの手を握り立ち去ることに成功をするも

虹村さんと赤司君はこの日を境に


過保護となっていくのは遠くない未来。























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