▽47.









疲れた身体を叩き起こして顔を軽く洗い食堂へと向かう。

同じ部屋のさつきちゃんは未だ眠っていたが
起床時間には少し早かった為、

そのまま寝かしてあげようと
起こしてきてはいない。






「あら、朝早いのね?おはよう。」

と食堂のおば様と軽く挨拶を交わし
朝食のお手伝いに入る。

うん十人分のご飯だ。


昨晩経験したがなかなか骨の折れる作業で、
基本は夜のみのお手伝いも
朝は早く起きれば良いだけだし…と
手伝いに来たのだ。





「悪いわね。」と言いながら
少し嬉しそうなおば様を見て早く起きて良かったと思う。








しばらくすると、ひょこっと紫原君が厨房に顔を出す。


『あれ?おはよう紫原君。朝食…にはまだ早いよね?』



どうしたものかと思いつつ
紫原君けっこう朝早起きだな。

なんて暢気に考えているとのっそのっそと紫原君がこちらに来て




「お腹すいたんだけど、お菓子ねーの?」

と首をかしげる。



……一瞬なんのことぞや?と呆けるも

いや、私は見たぞ。と思い出す。 



バスを乗る際に見た紫原君のカバンには
溢れんばかりのお菓子が入っていたことを。


「あれま、ご飯まで待てなかったのかい?」

と呆れる私をよそにおば様が
「ちょっと待っていてね?」と厨房の奥へと消えていく。




『…私が昨日あげたお菓子は?』




そう、私が昨日灰崎君の盾になってもらったかわりに

お菓子をひとつ献上していたのだ。



「そんなの、昨日うちに食べたしー。
 てか、あんた朝も手伝ってんの?」



紫原君も紫原君で私がいたことに驚いたのだろう
食堂から厨房を覗いている。



『朝早く起きたからねー。
 それに、こんだけの量一人じゃ大変でしょ?』

と笑うと紫原君はふーん。と興味無さそうに言う。

そんな様子を見てかおば様が笑いながら戻ってくる。


「仲が良いんだね。」とチョコレート菓子を持っていて


「今見たらこんな物しかなかったけど…どうぞ。」
とおば様は紫原君にお菓子をあげていて

「…いーの?」と目をキラキラさせる。



「ああ、いいよ。」と再度おば様が笑えば
紫原君は嬉しそうにその場で袋を開ける。


『おお。行動早いな。』と呟きながらも
手を動かすのは止めない。


すると半分ほど、ものすごいスピードで食べ
半分残し近くにあった輪ゴムで口を縛る。



『ん?、もう食べないの?』と聞けば
「食べるしー。……でも後で。」と言って厨房に入ってくる。


どうした、どうした!?と不可思議な行動に驚いていると
勝手冷蔵庫を開けお菓子をいれると
お菓子を封した輪ゴムをもうひとつ取り

ゆるく髪を結ぶ。


「俺も手伝う。」と、短くいうと
ゆったりと動き出す。


おば様と目を見合わせて驚き
クスリと笑い合うと

「じゃあ、これをお願いしようかしら?」と
再度嬉しそうにおば様は笑った。

私もその光景に笑みをこぼし


『紫原君ありがとう。』と言う。

「別にー?あんたも同じことしてんじゃん。」

とぶっきらぼうに、答えていたが耳まで赤かったのは
おそらく本人は気づいていないだろう。







そんなこんなで三人で作業をすると
予定より早めに作り上がり

 
嫌がる紫原君となかば無理矢理ハイタッチする。


その様子を運悪く紫原君を探しに来た赤司君に見られ
説明を余儀なくされた。


と、いうか毎回誰かを探している赤司君って…。



とりあえず朝食のお手伝いをしていたことを話し
紫原君がお菓子を貰いに来たことは
手伝ってくれたし黙っておく。


まあ、うすうすバレてはいるだろうが。

しかし、きわめつけに

おば様が「助かったわ。ありがとう。」と言ってくれ
まあ、それならばと

赤司君も許してくれた。









朝食も終わり再度昨日と同じハードな練習と
マネージャー業務が待っている。



しかし、少し変わったことと言えば
何故か以前より紫原君が
マネージャー業を手伝ってくれるようになったのだ。


例えば水分補給の十分間の休憩で

作ったドリンクを、
ついでだからと

青峰君に放ったり。

緑間君に放ったり。

赤司君には手渡したり。してくれている。



また、意外と周りも見ているようで
ドリンクケースを間違えることもない。


ただ、放ったりと雑なやり方のため
この変化に気がついてる人は少ないだろう。




『紫原君ありがとうね。』

とお礼を言っても「別にー。」と、本当に素直じゃない。


しかし、私にとっては些細であるがそんな小さな変化も嬉しく
一人にやにやしてしまう。
どうかこのまま。皆が仲良くいてくれればと。






そう、願いながら。







▽▲



紫原君side


朝、目が覚め広がる見慣れない天井と身体のだるさで
「あぁ、そういえば合宿だったんだ。」と思い出す。





一日中練習って結構めんどくさくて
体力もかなり減っちゃうなぁ。

なんて考えながらベットから出ると
同室の赤ちんは既にいなくて、



「けっこう早く起きたんだけど。赤ちん何してんだろ?」


と再度時計を確認するも通常の起床時間より
一時間以上も早く自分は起きていて。


二度寝したら、おそらく起床時間には起きらんないな。
と想像し、仕方ない顔を洗うべく部屋を出る。



まだ全体的に静かだ。





「なんか、めっちゃ良い匂いがする…。」

顔を洗いに部屋を出ると
厨房から朝食の準備をしてるんだろう匂いがして、
ふと考える。


「昨日だいたいのお菓子は食べちゃったし、
 これ以上食べたら今日の夜分なくなっちゃうし…
 でも、食べたいし。」



うんうん悩んだ結果、ぐぅーとお腹がなったので厨房で
何か食べ物をもらおうと厨房へと向かった。









食べ物をもらう。


それだけのつもりだったんだけど
厨房に行くと何故かななちんがいてご飯を一緒に作ってる。



初日のミーティングでマネージャーの業務も
軽くコーチが話してたから覚えてるけど

手伝うのは確か夜だけだったはず。



と思うもななちんの性格を考えれば、
まぁ時間さえあれば手伝いに来そうだなと思わなくもない。

それも最近関わりだして気がついたんだけど。

勘違いしないでほしいのが
ただ、あの赤ちんが興味を示してて気になって関わっただけで

深い意味はないから。

でも、俺らと関わる時のななちんは

何か嬉しそうだったり、

心配そうだったりと

表情がころころ変わって何考えてんだろう。


なんでこんなに俺らの心配しんてんだろー。




って思うようになった。

そのくせ一人で居る時はやけに寂しそう強がってて
意味わかんないなーって。

でも、考えてもしかたないし
とりあえずは気が向いたら手伝ってあげてもいいかな?
って思うようになったのは事実で。

でも、その分お菓子はもらうけどね。





でも、朝食を手伝う時に見せたななちんの顔は
まあ、嫌いじゃないと再確認した。










▽▲






紫原君に手伝ってもらっておば様と和気あいあいとし
赤司君も納得してくれて

なかなか良いスタートから始まった今日と言う日も


ハードだった。


これ、中学生には鬼なんじゃない?と思うほど。
黒子君大丈夫かな。と思うも人の心配してる暇もなく。



しかし、忙しいと時間がたつのも早く
終わりを迎えようとしいた。

昨日と同じくコーチから声がかかり
作業を中断する。



「二日間よく頑張った。明日で最後になるが
 合宿の成果を出すため明日はミニ試合を行う。

 チーム編成はこちらで考える。
 あと今日から白金監督もこちらに来ている。

 明日は試合も見ていかれるだろうから
 気を抜かずやれよ!」




あ、監督来るんだとぽんやり考えながら
おそらくスコアをつける役目はさつきちゃんだろうから

私は会う暇ないかな。

なんて頭の隅で考えていると

コーチから



「あと、夜のミーティングが終わり次第
 浅葱と虹村、お前ら二人は先に白金監督に挨拶に
 行っておけとのことだ。

 以上、片付け!」



もちろんその言葉に私自身も驚いたが
一軍の一部も驚いている人が数名。


げんに青峰君は「お前、何やらかしたんだよ?」
と心配してくれている。


『…何もしてないよ。…たぶん?』



「たぶんでは心もとないのだよ。
 お前のことだ。何かしたんだろう。」

と緑間君は呆れていて


「とりあえずは、片付けして飯食って
 一緒に行くか。
 俺も行かねーと行けねぇみたいだし。」


と安心させるように虹村さんがこちらに来て笑う。




『…そうですね。』


と返事をし皆で片付けに入った。





















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