▽44.








地区大会は帝光中が圧勝する形で幕を下ろした。

圧勝したと言っても
キセキの世代は赤司君と緑間君しか出ていない。


全員出すのは今後の大会の為控えている、とかなんとか。




もちろん皆が勝つよう応援もしていたが
花宮君達のことも心の中で応援していた。


それに加え見覚えのある
幼い面々がおり少し興奮してしまったのは事実だ。




試合が終わり『お疲れ様』と声をかけ片付けに入る。

向こうの方で選手達は監督と今後の話をしていて。



学校にもって帰るべき物のみ車につめる。
通常は現地解散であるが
マネージャーは学校へ片付けがあるため基本は
いったん帰るのだ。


また、今回の地区大会は一軍しか来ておらず
部の備品類もいつもよりかは少なめ。

さつきちゃんに


『量が少ないから今日は一人で学校に戻るよ。

 さつきちゃんは青峰君と帰ってあげて?』

と声をかけると

「え!?悪いよ!」
 とすかさず、さつきちゃんは言ってくれるが

青峰君と幼馴染みと言うことは
家も近いということだろうし

どうせなら一緒に帰った方が安全だ。

私も会場より学校の方が家近いからと断った。



さつきちゃんは申し訳なさそうにいていたが
きわめ付けとなったのは

何も考えていなかったであろう青峰君が

「さつき帰えんぞー。」

と叫んでおり、どうやら選手達の話も終わった様だ。


「もう、大ちゃんったら!
 …ななちゃんありがとう。今度は私がするからね!」

と笑顔で去っていくさつきちゃんを微笑ましく見ていると


先生たちから「帰るよ。」と私にも
声がかかり『はあーい』と返事をし車へ乗り込む。











さほど遠くない学校へは割と早く着き荷物を降ろす。

最近はマネージャー業も板につき
まあまあ、使えるようになったと思う。



「ななちゃん、これ第四体育館へ戻しておいてくれる?
 それ終わったら帰っていいから。」

と先生に言われ第四体育館へ行く






第四体育館へ行くと鍵は開いており

『失礼しまーす。』と入る。





『ここは確か三軍用の体育館だったよね…。』


体育館の明かりもついていて先ほどまで
誰かがいた様だ。


とりあえず部の備品を片付けないとと倉庫へ向かう。

その時だった体育館倉庫へ入った私の後ろのドアが閉まり
ガチャンと鍵が閉められてしまう。

え?と振り返るも時すでに遅し。


すると、ドアの向こうで聞き覚えのない数人の
女の子の笑い声がする。



「ちょっと、あんた最近調子にのってるんじゃない?
 どんな理由で虹村君に近づいたか分かんないけど

 勘違いしないでよね?」



と軽くガンとドアをたたく音が聞こえる。


『ちょっと待ってくさい!』

と声を出すも聞く耳もたずで去っていく足音のみ聞こえる。

ええー、と落胆し倉庫を見渡す。




いつかの時のように天窓からでるか?と悩むも

度ドアからガチャンと今度は鍵が開き音が聞こえる。

あれ?と思うも






ドアは開かれ明かりが差し込む。



「あの…大丈夫ですか?」と現れたのは
黒子君だった。








『黒子君?』





黒子君は少し戸惑いながら、こちらを見ていて

「すみません。ずっとここで練習していて休憩のため
 体育館わきで水分補給をしていたんですが…
 誰にも気づいてもらえず

 浅葱さんを見かけたので
 声をかけようと思った時に数人の先輩が…」


とのことだった。

やはり、虹村さんのことを“虹村君”と
言っていたので先輩かな?と思ってが先輩だったか。


『そっか。黒子君がいてくれて助かった。ありがとう。
 でも、先輩たちと黒子君が何もなくて良かったよ。』



体の埃を少し払うと黒子君に笑って見せる。


「いえ、始めの方はただ驚き何事かと思って
 見ていたんですけど

 まさか、こんな事になるとは。」



もっと早く止めるべきでした。としゅんとする黒子君


『いやいや、黒子君がいないと一晩ここに
 いなきゃいけなかったわけだし…大丈夫だよありがとう。

 あと…できればこのことは秘密にしといてくれないかな?』


事を大きくするつもりはないし
また、こんなことを虹村さんが知ったならば大変なことに
なってしまいそうだ。

しかし…と渋る黒子君に騒ぎにしたくないからと言えば
了承してくれる。


「浅葱さんは時々驚くようなことを言いますし
 しますよね。」

と一番言われたくない相手に言われたしまったが。

それでも黒子君の表情は晴れない。

どうしたものか。




『あ。そうだ!一つ黒子君にお願いがあるんだけどいい?』
と言えば

「なんでしょう?」
と首をこてんと傾ける。かわいい。


『黒子君はいつも名字にさん付けだよね?
 私ちょっといろいろあってさ浅葱って本名じゃないの。

 だからできれば名前で呼んでほしいなあー…なんて。』


と笑うと驚いたように目を見開く黒子君。
しかしすぐに微笑み




「…わかりました。それでは改めて、
 よろしくお願いします。ななさん。」



差し出された黒子君の手を握り
照れくさいが二人で笑いあう。






「あの、僕からも一つお願いがあるのですが。」





『…ん?』







手を握ったまま見つめてくる黒子君






「暇な時間だけでいいので一緒に練習してもらえないですか?」








と……まさかのお願いに驚く。


「二軍に上がるために毎日ここで居残り練習を
 行っているのですが自分一人では

 第三者目の意見もほしくて。」






どうやら今度行われる昇格テストのために
一緒に練習しダメ出し等を行てほしいとのことだった。


家に帰っても今は誰も己を待ってはいなし
中学生ということもありバイトはできない。

ちょうど学校から帰った後の時間を
持て余していたところだ。


『あまり役に立たないと思うけど?』



と笑うと黒子君も笑いながら


「そんなことはありません。」
と言われ断る理由はない。



『わかった。こちらこそよろしくね?』




これからの黒子君との練習を想像すると
笑みがこぼれる。




シックスマンとしの昇格になってしまうが
普通に昇格してほしい。

彼の頑張りが報われてほしいと

思った。












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