▽43.







監督との謎のお食事会?のあと

何も変わらない平凡な日常で。

当たり前といえば当たり前なのだか。





少し変わったことと言えば
黒子君が、少しずつ話しかけてくれるようになったこと。

小さな事だが、嬉しい。


そして、今日はそんなに大きくはない地区大会があり
会場に来ている。

まあ、言ってみれば各学校の一年生お披露目大会と
言ったところだろうか。




『花宮君はどこかなぁー?』
マネージャーは事前準備の為先に会場入りをしており
準備が終わった私は会場を探索中だ。

それもこれも
今吉さんから「ワシ等もでるでー。」という
メールが入ったからだ。


最近お互い忙しく会えていないのだ。
会いたいじゃないか。





『少し顔だします!』と返信をし

先輩とさつきちゃんに声をかけ
二人を探していると言うわけだ。




因みに、最近花宮君は無冠の五将と囁かれつつある。







『しかし、本当にひろいなこりゃ。』



だだっ広い会場をうろうろする怪しい私。

私と同じようなマネージャーや監督
早めの出番なのか何人かの選手もベンチにすわっている。

しかし、私は市販のジャージにスカートと言った風貌の為


周りから見たら、どこの学校かまでは分からないだろ。


『ちゃんとメールで場所を聞いたんだけどな。』



キョロキョロと捜すが見つからない。
もう一度聞こうかと思ったその時誰かの足に躓き

かなり、派手に転けてしまった。


急いで手で受け身を取るも意味もなく
どてーんと、行ってしまう。


『い…いたい。』


と、急いで立ち上がり後ろを振り返ると
蜂蜜色のどこか幼い

しかし、どこか見覚えのある顔。


『あれ?……デジャブ?』

と、つい口に出してしまう。


「…って。」

しかし、蜂蜜色の彼は足を抑えて痛みに耐えいる。

まずい、まず間違いなく選手であろう相手に
怪我を負わせたなんて

洒落にならない。


『すみません!大丈夫ですか!?』


近くに寄りしゃがんで足元の確認をする。
少し赤くなっているけど

血は出ていないし

腫れてもいない。


良かった…と胸を撫で下ろすといきなり掴まれる手。


掴まれた瞬間ズキンと走る痛みに
少し顔を歪めてしまう。



「俺よりお前の方が重症じゃねぇか。馬鹿。」

と言われた手は、かすり傷ができ血が滲んでいた。
ほんのりと手首も腫れている様な気もする。



『だ、大丈夫です!このくらい!
 それより大会に出られるんですよね?』



優しい彼の事だ。
気にしてしまうに違いない。

なんとか、話をそらさなければ。



「ん?、あぁ。まぁな。」

と歯切れの悪い言い方に違和感を感じる。


『…出たくないんですか?』



ばつが悪そうに後頭部を、がしがししながら
「いや…そうゆうわけじゃねーけど…。」

と更に、いいよどむ。



「お前はマネージャーか、なんかか?」

と話を逆にそらされ『はい。』と答える。

やはり、話したくないのだろうか。



「そうか。」
と黙る姿は、やはり元気がない様に見える。

このまま、ここにいるのは彼にとって邪魔かな?
と思い


『…何があった分かりませんが試合頑張ってください。』
と、それだけ伝え立ち去ろうとするも


「頑張っても埋められねぇ才能っつーのは
 どうすりゃいいんだ?」

とか細い声で

泣き出してしまいそうな、そんな声が聞こえる。






『………わかりません。でも、努力って自分の為
 チームの為にするものだと思います。

 生まれ持った才能も確かにありますが
 努力しないで…それで勝っても

 嬉しいことってないと私は思います。』



言い終わったあと、ちょっと偉そうに言い過ぎたかな?
と、思いチラリと見ると

彼はベンチから立ち上がり
私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。



「…そうだよな。嬉しいっての大事なことだよな。」
と、そう言って笑った。

その笑顔は私の良く知る笑顔で。




「さんきゅな。あと、手怪我させて悪かった。
 ちゃんと冷やしとけよ。」

と言ったところで遠くから
「宮地ー!始まるぞー!」と彼を呼ぶ声が聞こえる。
おそらくチームメートだろう。

「うっせえ!!今行く!!」と叫び返し
じゃあな!と走り去っていく。





その背を微笑みながら見送ると首根っこを
誰かにぐいっと引っ張られる。

『うえっ、』と言うはしたない声をだし
後ろを振り返ると
何故かご立腹の花宮君が居て。





『あ、花宮君!いたー!』
と言えば
「俺が探しに来てやったにきまってんだろ、ばぁか!」と


怒られてしまう。


少し離れた所から今吉さんも此方に歩いて来ている。
その顔は何かを可笑しそうに笑っていて。





そんな、今吉さんを花宮君は無視し私の手を取ると見ると
「ちっ、」と舌打ちをし早足でどこかに消えてしまう。





『いったい何なんだ?』と首をかしげると
今吉さんが此方につく。








『あ、今吉さん。すみません探させてしまって。』
と頭を下げれば「ええよ、ワシ等も暇やったさかい。」

と今吉さんは気にしていないと笑ってくれる。






「それにしても自分えらい派手に転んだね。」

と再度手首を取られ今吉さんは
傷の様子を診ている。






『え!そんな始めから見てたんですか!?』



なんと言うことか。


自分でも派手に転けてしまったという自覚がある分よけいに
恥ずかしい。





「遠くの方でな。あの時の花宮の顔は傑作やったで?」


思い出したように笑う今吉さんの、後ろで

「余計なこと言ってんじゃねーよ妖怪が。」
と花宮君が戻ってくる。


その手には保冷剤とテーピング。


わざわざ、自分の学校のところまで
取りに行ってくれたのだろうか。と笑みがこぼれる。

それは、今吉さんも同じようで。


しかし、そんな状態を心地いいと思わないのが花宮君。






「学校の待機室が近かっただけだ。勘違いすんな。
 気色悪ぃんだよ。」


と怒るも「なんや、花宮?ばぁか忘れとるで?」
と今吉さんは茶化しに行く。


テキパキと、私の傷の処理をしながら
「うるせえよ!この妖怪サトリ!」と
更に怒っていた。


もちろん私はそんなやり取りを楽しくみており
花宮君に、「てめぇも笑ってんじゃねぇ!」と
とばっちりを食らったが。





かすり傷の血はすっかり止まり問題ない。

捻った手首も綺麗にテーピングが巻かれ完璧。

あとは、花宮君が持ってきた保冷剤を捻った部分にあて
冷やしながら三人でおしゃべり。




保冷剤をあてがう為のタオルは花宮君に借りました。

今度返しにいかなければ。



他愛のない、話で盛り上がり時間も迫ってきたため
別れを告げ帝光のみんなのもとにもどる。

最後の最後まで、素直じゃない花宮君は


「マネージャーなら、これぐらいのテーピングは、
 出来るようになるんだな。」

と自分の手当てを自画自賛し帰っていく。

「素直に心配や言えばええのにな?」と
笑う今吉さんも、手を降り去っていく。










急いで戻ろうと廊下を小走りしていたら
紫色の巨が自販機の前で立ち尽くしている。




『あれ?紫原君?』と声をかけると
ぐりん!と勢い良く振り返り目を輝かせていて。


「ねー、10円もってない?」



と自販機のジュースを指さしている、
どうや、お金が足りないらしい。

『10円?あるよ、ちょっと待ってね。』
とポケットベルを漁る。

見つけた10円を手渡せば更に輝く目。


「ありがとうー。まじ助かった。
 この新作のんでみたかったんだよねー。」

と紫原君が買ったのは北海道と沖縄の夢のコラボ!
トロピカーナメロンサイダー。だった。


名前的にメロンなのか?
ハワイアンな味なのか?

想像も出来ないが。



しかし、ほくほくとした表情の紫原君を見ると
まあ、いいかとも思う。

すると紫原君が
「あんた、それ怪我どーしたのー?」
と珍しく心配?してくれていて。

『転んじゃった。』と笑うも「あんた馬鹿なの?」と
辛辣な突っ込身が入る。

しかし

「気を付けてよね、あんた怪我したら誰が
 俺らの怪我診んのさ。」




と言われ嬉しかったの内緒だ。





そうか、そうだよな。

彼らの傷を診るのは私の役目だと思い直したのだった。









prev / next

[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -