▲夏と祭と君と僕2。





大量の食べ物と飲み物を買い込み
皆のところに戻る。

そろそろ、花火が打ち上げる時間になったからだ。


「ななさん、お帰りなさい。」
と、黒子君が迎えてくれる。


『ただいま。あれ?火神君は?』

見渡すとちらほらと人がいない状態で。
残っているのは火神君以外の誠凛と
宮地君以外の秀徳。

あとは、海常は小堀君しか残っていない。
もちろん森山さんは一緒に帰ってきているが。


「馬鹿神なら、食べ物買いに行ったきり帰ってこないわ。」
とリコちゃんが、もう、と呆れている。

どうやら、私と森山さん二人を邪魔しようと
黄瀬君と早川さんが飛び出していき
それを笠松さんが止めに。

その流れに乗じて火神君が、買い物に行ったきり
帰ってこないとのことだった。


因みに皆はちらほらと買いに行ったが
それでも始めに飛び出したメンバーが遅いらしい。


「ふん。馬鹿ばかりなのだよ、全く、」


緑間君は呆れを通り越しているようにも見える。


『あれ?そしたら宮地さんは?』

と聞くと高尾君が笑いながら答えてくれる。

「宮地さんなら頭を冷やしてくんだとさー。」





『頭を?、なんで?』

何か失態でもおかしたのだろうか?
あの人が?珍しいなと思うも、緑間君が
「まあ、分からなくもないがな。」

と、これまた珍しく同意をしていて。

「いやー、でもマジで宮地さん純粋すぎっしょ。
 ふだんあんなに物騒なのに。」

「あれが宮地流の愛情表現だからな。」

「あれが、愛情表現と言うのならば
 いつか警察に捕まりかねないのだよ。」


などなど、盛り上がっているが話の全貌が掴めない。


まあ、良いかとふと髪に触れると違和感を感じて。
もう一度確認するも、それはなく。

浴衣と一緒にリコちゃんに借りた髪飾りがなく
動揺する。

どこだ?最後に触ったのいつだっけ?
と記憶を巡らせる。


…最後に触ったのはヨーヨー掬いだ!と思い出し


『忘れ物したから取ってくる!先花火上がっても見てて!』

と言い、止める声も無視し再度人混みの中へ紛れ込む。


この、考えがごとをしている間に黒子君が大切なことを
言っていることにも気づかずかなかった。










人混みも花火を見るため屋台の方は幾分か人は減っていて
案外楽にヨーヨー掬いの屋台までたどり着く。

屋台のおじさんは私の顔を見ると
「お嬢さん良かった気付いたんだね。」と
髪飾りを1つに差し出してくれて


間違いなく自分が落としたものだ。
やっぱり始めの屋台で落としていたのかと
少し安心する。

預かってくれていた屋台のおじさんに礼をいい
皆のところに戻ろうと歩き出したとき


一匹の猫が屋台の道をうろうろしていて
この辺りの野良猫かな?、と思っていると
何やら様子がおかしく、

右の後ろ足を引きずっているように見える。


するとエアガン?のようなものを
持った中学生くらいだろうか?男の子三人くらいが
笑いながら猫を狙いうっていて。

人通りの多い場所で、やるものじゃないし
まず、何より生き物をターゲットにするなんて
信じられなく、ただただ驚く。


しかも、近くの屋台のおば様が見かねて注意するも
きゃはきゃはと、笑い聞く耳持たず。

なんてことだ。と

止めに一歩踏み出した時ぐいっと後ろから
誰かに止められ後ろを振り向くと



その人は宮地さんで、

そのまま中学生の所に歩いていく。


「おい、こらガキ共!つまんねぇ遊びしてんじゃねぇーよ!」

と注意?してくれていて
まあ、中学生からしたら下手な大人に怒られるより
宮地さんの様な人に怒られた方が

よっぽど怖いのか「ひぃっ!」と驚いていて
半泣きになりながら中学生達は走るように逃げていった。


私は直ぐに宮地さんに駆け寄る。

『宮地さん!流石ですね!』

と私が言えば、「最近はあんな奴が多いのか?」と
あきれていて
『そんなことはないと思いますけど。』
少し答えに困るが、そんなはずはないと言う希望を込めて答える。



「つか!なんでなな一人でいるんだよ。
 他の奴等は?」

と宮地さんは思い出したように言う。

あ、少し怒ってるかもと思い髪飾りを
落としてしまったことを話す。

「たくっ、だったら一人で…じゃないな。」

と話を聞いた宮地さんは一瞬怒る押し黙り

「いや、違うな。」と悶々と悩んでいる。
『宮地さん?』と声をかけると、ハッとし元に戻るも

その瞬間バーンと大きな破裂音がし
空に大輪の花を咲かせていた。



『花火はじまっちゃいましたね。』
と私が笑うと宮地さんも困ったように笑い
「あっちで座るか。」と
人通りの少ない芝生を指差し二人で歩く。

確かに皆の居る方は花火観覧場ということもあり
もう、戻れそうにないほど人で溢れている。

『意外と、ここからでも見えるなぁ、』

と宮地さんと並んで座る。

「ああ。」と空を見上げる宮地さんは様になっていて。

『ふふ、宮地さんと花火。凄く様になりますね。』
と私も花火に視線を移す。

『花火綺麗だなぁ。』


何発も打ち上げられる花火。
赤色、黄色、青色、緑色、紫色、桃色

さすがに黒色は無いけれど
さしずめ夜空が黒、と言ったところだろうか。
皆の色が空に舞ってほほえましくなる。

オレンジ色の花火も上がり
『宮地さん!宮地さん!秀徳カラーですよ!』

と声をかけると宮地さんは花火ではなく
こちらを見ていて目が合うと顔を赤らめている。

「いや、楽しそうに花火見てんなって思って
 …って笑うな!轢くぞっこら!」

物騒なことを言うのは相変わらずなのに
その顔は暗闇でも真っ赤と分かる程で。


『だって、宮地さん顔、真っ赤。』

可笑しくて笑ってしまうと頭を宮地さんに、軽く
小突かれる。

すると、中学生を注意していた屋台のおば様が
こちらに近づいてくる。

「さっきはありがとうね。良かったら、これサービスだよ?」

と小さな林檎飴をふたつくれる。

『いいんですか!?いただいて?』


「ああ、もらっとくれ。ほんのお礼だよ。
 良い彼氏さんだね。仲良くおやりよ、」

とおば様は立ち去っていく。

違うと否定する前に去られたものだから
受け取った林檎飴をもったまま呆けてしまう。


『と、とりあえず宮地さんこれ。』
と林檎飴を渡すと宮地さんは笑っていて
どうやらお祭りの音や花火の音でおば様の声は

宮地さんまでは届いていなかったようで。

「なんだ、顔が赤いけど照れてんのか?」
と今度は私が宮地さんに茶化され

『もうっ!私じゃなくても照れますから!』

と抗議すれば頭をかしげる宮地さん。


「なんて、言われたんだ?」
そう聞きながら私から林檎飴を受けとる。


『……っ良い彼氏さんだね、、って。』

言われるのも恥ずかしいが
自分で言うのもなかなか恥ずかしい。

「………っ!!?」

照れる私より照れる宮地さん。

『…あれ?照れてます?』

と、聞くと

顔更に真っ赤にした宮地さんが「うるせぇ。」と
花火に視線を戻してしまった。


花火を見終わり人が一斉に散らばっていき
皆のところに戻ることができたが
お叱りを受けたことは、致し方ない。


「そう言えば黒子あのあと連絡はどうなったのだよ。」


と、唐突に緑間君が黒子君に質問していて。

「いえ、それが……「黒子っ!」」

と、黒子君が言ったところで息を切らしながら
虹村さんが走ってくる。


『虹村さん!?』と驚くも、
「やっぱ、花火には間に合わなかったな。」
と、息を整えていて、

困ったように笑う虹村さんは
「あとは、帰るだけだよな?」と黒子君に確認しており

「はい。」という黒子君の言葉を聞くと

「じゃあ、もういいよな。」

と虹村さんが、突然私の手をつかみスタスタと
歩いていく。
もちろん私もついていく形になって。



『虹村さん!??』
突然のことで声をかけるも虹村さんは明るく


「皆、気を付けて帰れよ!じゃあな!」
と軽く皆に手を降る。

虹村さんのペースに乗せられてしまい
皆、声も上げる暇もなく

虹村さんと立ち去ってしまう形になる。

黒子君だけ、仕方ないと言った顔で微笑んでいた。








『あの、虹村さん?いつから日本に?』


皆と少し離れて、先程の騒がしさが嘘かの様に
静かにな公園で二人で座る。


「ん?あぁ、今さっきだよ。
 黒子ん所の高校の夏強化合宿に参加する予定でさ
 日本に戻る予定だったんだか…

 今日皆で夏祭りに行くことを聞いてよ
 急遽飛行機の便を変えて来たが……間に合わなかったな。」


と頭を掻く虹村さん。
少し照れくさそうだ。


『そうだったんですか。惜しかったですね…。
 アメリカでは花火ないんですか?』


そう聞くと横で座っている虹村さんは立ち上がり
私の正面に立つ。

「いや、あるにはある。
 けど、お前…ななと見たくてよ。」

さらりとこちらが照れ臭くなる言葉を言える所が
困ってしまう。

しかも、言った本人はさほど気にしていない。

虹村さんは手を私の方に差し出して来たので
その手を掴むとぐいっと引き上げられて

向かい合わせで立つ形になる。


「花火は見られなかったからな。
 浴衣姿はちゃんと見とかねぇとな。」




そう言ってイタズラっぽく笑う虹村さん
見ると公言されると恥ずかしく

『そんな、楽しいものじゃないですから!』


と手をぶんぶんするも片方は手を繋いでいるため
隠しづらい。


更に虹村さんが笑い残りの手も捕まってしまい
隠すすべも失われてしまう。

とりあえず虹村さんの視線が恥ずかしいので目線を
そらす。
すると、そのまま虹村さんにゆっくり引き寄せられ
優しくぎゅっと抱き締められる。



『に、にに虹村さん!?』



「……………来年は一緒に行こうな。」

正面からのぎゅっ、からの虹村さんは私の肩に
頭を置いているため声が近く緊張してしまう。

『行きましょう。何度でも。』




虹村さんの顔は見えない。



「あんま可愛いこと言ってくれんな。」
と少し顔を離した虹村さんは笑っていて


「冬も帰ってくっから、初詣行こう。」


なんて、先のことを約束してくる
虹村さんの方が可愛くて

『今から冬の話ですか?』と笑うと

「当たり前だろ、じゃねーとあいつ等に
 先越されちまうしな。

 それに、浴衣姿を一番始めに見れなかったのも
 気に入らねぇ。

 …ま、でも一緒にこうやって居られれば
 どこでもいーか。」


と再度歩き出し家を目指す。

手を繋ぎなから、他愛のない話をする。
「あー、でも一緒に花火見たかったなぁ。くそ。」
と、言っていて
また、笑ってしまったのだった。











――――――――――――――――



※一ページに留めるつもりが二ページに。
いやそれでも長くなってしまいました。

甘くー、甘くー、と念じつつ書いたのですが
わたし的には甘さ足りぬ様な気がして。(笑)
すんません。

※注意

これは、お世話になっております方への送りものになります。
そのため、お持ち帰り等は遠慮願います。









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