▲拍手.2015年/12月〜2017年
千里の道も一歩から。


それが俺の座右の銘であり、信条だ。


別にあれが嫌だとこれが嫌だとか
駄々をこねるつもりもねぇーし
むしろ嫌なこともやっておかねーと
なにも始まりやしねぇと思っている。

けど、うちの一年のやる気のなさ。

唯一試合に出てる一年、紫原敦。


こいつの性格が今だ良く掴めねぇ。


だってよ、練習が終わるや否や一年の空教室に呼ばれ


「福ちーん、これ。」

とアツシに良くわからない段ボールを渡されて
ついでにセッティングしとけと来たものだ。

送り主が黄瀬って書いてある時点で嫌だっつーのによ。

「アツシ、それじゃ少し説明不足すぎないか?
 福井先輩、とりあえずこれを見てください。」

と、そう言って氷室が俺の前に携帯の画面を
突きつける。

ちなみに、俺の両手は段ボールで塞がれている。


「俺も見たい!」と騒ぐアゴゴリラを無視し
画面に意識を集中させると
どうやらキセキの世代黄瀬涼太からのメールを
アツシがそのまま氷室に転送していた物のようで

内容はこうだ。



゛赤司っちから聞いてるとは思うっスけど
 次は紫原っちの番スからねー☆

 ちゃんとコメント録って
 くださいっスー(´・ω・`)"



「…いや、氷室コレも説明不足だろうが。」

途中の星マークが気に入らないし
内容も良く理解ができない。
コメント?なんのことだいったい?

紫原、もとい黄瀬からのメールを見ても
内容は良く分からない。 





すると、俺の手にあるダンボールを劉が取ると
中から何やら機械の様な物を取り出し
机の上にセットし出す。


「要するにアレアル、
 ファンの皆に一言ってやつネ。」

手際よくセットする劉は既に状況を
把握しているようで近寄り問い詰めると


「アツシからメールが来たとき
 氷室と話したアル。

 何のお祭りかは分からないが
 ありがとうって言うんだって言ってたアルネ。」


と、さほど興味もなさそうに答える。


「ありがとうっつてもなぁ・・・」

まとまりのないうちのチームに
がっかりしながらも考えていると
アツシがのそのそと動き出し
マイクの前に立つ。


「ちょっと早くしてよねー。
 機械回すの遅いと俺が赤ちんに怒られんの。」


赤ちん…洛山の赤司か。

「そうだったね、悪いアツシ。始めようか。」

俺が突っ込む前に氷室はさくさくと話を進める。
しかし、先人切る勇気もなく戸惑っていると
岡村がでかい声で

「なんじゃ紫原はやったことあるんじゃったよな!?」

とアツシに詰め寄る。

いったいどこから得た情報なんだか。

「えー、うん、まぁ、やったけどー。」

いつものことだが気だるそうにアツシが答えるも
岡村には意味はなく
なら、紫原からしてくれてよ、と頼んでいる。

「えー。まぁ、いいけど…。」
とアツシも、あっさり快諾しマイクに立つ。


「いつもお菓子をロッカーに入れてくれて
 ありがとー。
 でも、強いて言うならもっとまいう棒がほしい。」

気だるそうに立ってお菓子を持ちながら
アツシはしっかりと言うが
内容は…完全にありがとう、とは程遠く
要望になってる。

しかも、今の話じゃいつも入ってる
みてぇだし、
なんでこいつがモテんのか良く分んねぇな。

「なんと!?紫原はロッカーにいつもお菓子が
 入れられているじゃと!!?」


「まぁーねー。でも、室ちんも良く入ってるよね
 しかも高級そうなやつ。」

驚くアゴゴリラを他所にジト目で氷室を
見つめるアツシ。

「そんなことないよ、」と笑いながら
劉の後ろに下がる氷室。

そんなことないこと、ないのだろう。


「それよりも、だ、アツシ。
 早く、コメント録らないとね!」


岡村から逃げる様に劉の背中を押し
半ば無理矢理、進行する。

少しふらつきながらも劉は

「お、と。なら、次は私やるアル。」

と、目を輝かせている。
なんだ、劉やる気じゃねーか。

マイクの高さを見ながら劉が吹き込む。

「いつもありがとうアルね。
 これからもっと私達活躍するから来るといいね。

 あと、日本はすれ違う異性に対して声をかける
 習慣があるって本当アルか?」


劉のコメントは前半は良かったのに後半が
面白すぎて迂闊にも笑ってしまった。

「ぶっ!、りゅ、劉お前最高だなっ、」

笑う俺に氷室は呆れながらも
「いや、それはどうだろうか…。」と
突っ込んでいる。

「でも、海常の人は女の子に声をかけているのを
 見たアル。」

「それ、黄瀬ちんでしょ〜。あれは、別だから。」

食いぎみで聞く劉にさも当たり前の様に
アツシが答える。

まぁ、キセキの黄瀬亮太ならば納得だが。

「まぁまぁ、そうゆうことにしとこーぜ。
 俺らとは違ってキセキ様はおモテになる様だし」

一通り笑い終えた俺は滲んだ涙を拭い場を収める。
これだから劉はからかいがいがある。

おおかた、氷室辺りは劉が言及してこないように
話を切ったことに勘づいているだろうが
まぁ、知らんぷりだ。

「そうゆう先輩だってモテないってことはないでしょう?
 その睨むような目付きと暴言を、
 もう少し抑えれば背なんか関係なく
 彼女だってすぐできますよ。」



「うっせ、身長はこれからだっつーの。」

肩をすくめる氷室にふんっと言い返し横を見ると
何だが顎ゴリラの肩が震えている。

正直、きもい。

そして、何を思ったのかズンズンとマイクの
方まで歩きバンッと教台を叩く。



「今年もバスケを頑張る!
 じゃけん今年は絶対彼女をつくる!

 そして、氷室達後輩を見返すんじゃー!」

ゴリラが思いの丈を叫んだあとキーンとマイクが
ハウリングする。

「…え〜…、無理じゃないの?」

「…無理ネ。」

「…っうける、」

「…思う気持ちは大切です、から。」

皆の一斉ツッコミに「そんなことない!」と
ゴリラが叫んでいるが
それ自体が既に自分がモテないと言っているようで
面白い、


本当に個性的で面白い。

劉の発言に続いて岡本にも笑わしてもらったし
俺もそろそろやるかと
喚くゴリラをかわしてマイクの前に立つ。


「あー、まぁ、いつもありがとな。

 アゴゴリラが何か喚いてたけど
 心配すんな、ストーカーにはなんねぇから。」

と、いい終えた瞬間。
アゴゴリラ基、岡村が「福井ー!!!!」と
駆け寄ってくる。

それをさらりとかわし
「まぁ、怒んなって。
 純粋にモテたいってだけで、こんだけバスケ
 出来んのって実はすげぇって思ってんだからさ。」
と軽く言うと直ぐに岡村は顔を綻ばせる。

こいつも、本当に単純だ。

けれど、本当にすごいと思ってはいる。
本気で伝えようとは思わねぇけど。


「ほんじゃ、まぁ氷室シメて。」

ひらひらと手を降り氷室を見ると
困ったように笑い「分かりました。」と
ごちる。

悔しいけれど氷室がマイクに向かって歩いていく様は
優雅で格好いい。
キセキの世代もそれぞれ雰囲気があって
モテるし格好いいんだとは思うが

氷室だって勝らずとも劣らない。

目の前には俺ら野郎しか居ないと言うのに
ふんわりと微笑み氷室は話し出す。


「騒がしいメンバーだけど俺は凄く
 気に入っているんだ。

 そうゆう雰囲気ってきっと君にも伝わる
 はずだから、また来てね。
 Thank you so much.」


話し終えるとマイクの電源をぷちんと切る。

「なんか、室ちん綺麗にまとめすぎじゃない?」

文句を言うアツシの顔は居心地の悪そうな顔していて
恐らく、アイツなりの照れ隠しなんだろうが
俺たちにはバレバレなわけで。

「ったく、個性が強すぎだっつーの。」



誰かに言った訳じゃないけれど
自分の頬が緩んでいるんだろうと感じながら
機材を片付けるべく教台へと歩いた。





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個人的に今までに一番難しかったチーム。








いつもお菓子をロッカーに入れてくれて
ありがとー。
でも、強いて言うならもっとまいう棒がほしい。




いつもありがとうアルね。
これからもっと私達活躍するから来るといいね。

あと、日本はすれ違う異性に対して声をかける
習慣があるって本当アルか?





今年もバスケを頑張る!
じゃけん今年は絶対彼女をつくる!

そして、氷室達後輩を見返すんじゃー!




あー、まぁ、いつもありがとな。

アゴゴリラが何か喚いてたけど
心配すんな、ストーカーにはなんねぇから。


騒がしいメンバーだけど俺は凄く
気に入っているんだ。

そうゆう雰囲気ってきっと君にも伝わる
はずだから、また来てね。
Thank you so much.






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