▲高尾和成と誕生日.



本日11月21日23時50分


ストリートバスケット場。


それもこれも、高尾君に電話で呼び出されたので
この時間外にいるわけで

"俺の誕生日祝ってよ。"

と言う彼の可愛いお願いを
断わることが出来なかったのだ。


しかし、なぜ?当日のこの時間なのか?

しかも、真ちゃんたちには内緒ね?

と言う言葉も忘れない


少し寒いな。と思いつつぼけっと高尾君を待つ。


ここ最近夜はかなり冷える。

11月なので当たり前なのだが
その寒さにくしゅんと小さなくしゃみを
こぼすと共に後ろから

誰かの腕が伸びてきて

少し強めにぎゅっと抱きしめられる。

驚いて首だけ回し振り返ると
ほんのりと顔と鼻を赤めた高尾君がいて

走ってきたのだということが分かる。



『…びっくりしたぁ』


驚く私とはうってかわって笑顔の高尾君は
「悪い。」と言いつつ反省の色はみえない。




「いやさ、この間の宮地さんの誕生日
 みんなで邪魔しちゃったじゃん?。

 そのこでさー、めっちゃお怒りでよ!
 今回何とかして邪魔しにこようとしてんのを

 かわしてくんのに時間かかっちゃた。」




「皆マジしつこかったぁー。」と
笑う高尾君は後ろから私を抱きしめた状態から
動こうとはしないので顔が良く見えない。

仕方がないので、きつくぎゅっとされた
腕の中で少しもがくと力を緩めてくれる。

それをいいことにもぞもぞと未だ離されない
腕の中でもがき正面を向き合う形になる。





少し手を伸ばすと届いてしまう高尾君の頬に
手を当てると凄く冷たくなっていて

長い時間外にいたことをうかがわせる。





『冷たい…もしかしてずっと外で逃げ回ってたの?』


ほっぺに添えた手を高尾君は愛おしそうに
見つめて自分の手を重ねる。

もちろん彼の手のほうが大きいわけで
すっぽりと私の手を包み込む。


「あ、ばれた?

 いやさ、なーんか今回はとくに真ちゃんが
 しつこくってよ。

 部活終わってから家に帰るまで
 ずっとべったりだったんだよなー。

 なんか今日のさそり座は1位で
 なんとか、かんとかーって
 言ってたけど忘れちったわ。」


『…さそり座って、おは朝の?』




おは朝信者である緑間君は
毎朝欠かさず朝の占いを見ては
その日一日の物事を決めてしまう。

また、ツンデレゆえに仲間の運勢も
逐一チェックしているのだろう。



素直に言わないだけで。




「そうそう。
 真ちゃんの信者っぷりも困ったもんだよな?」


と困ったように笑うが本当に困っている。
と言う訳ではないのだろう。

秀徳組の信頼関係を見ていたら分かることだ。





『あ、そういえば誕生日プレゼント
 持ってきたの。』

すっかり話がそれてしまったが
今日は高尾君の誕生日を祝うために
待っていたのだった。

しかし、手荷物を渡そうにも抱き締められている
状態のため動けず

『動けないよ?』と笑えば何故か強まる力。

『?』と首をかしげると
ははっと笑い更に引き寄せる高尾君。


「あんまし、この状況で可愛いことすんなっての
 …や、俺が作り出した状況なんだけどよ。」


『か、可愛い!?いつ、どこで!?』

と、狼狽える私を見て更に笑う高尾君。


「ふはっ!いや、全部ツボだわ、マジで。」



「今日は我が儘言ってごめんな。
 来てくれてサンキュー。

 俺さ思うんだけどさ、
 自分が何時に生まれたと分かんねぇーけど
 誕生日が誕生日じゃなくなるその瞬間って

 けっこう寂しかったりするんだわ。

 だから、誰かと居たくてさ。
 恥ずかしいよな?」




からかってきたと思ったら優しくして
照れて私の肩に顔を埋める高尾君。

その行動が仔犬のようで可愛くてついつい笑みが
溢れてしまう。

すると、揺れる肩に気がついたの

「なーんか、笑ってね?」

と高尾君のブスッとした声が聞こえてくる。
慌てて、しかし少し笑いながら


『ごめん、そういうことじゃなくてね?
 高尾君の方がよっぽど可愛いなぁって思って。

 ぜんぜん恥ずかしくなんかないよ。

 お誕生日おめでとう。
 生まれて来てくれてありがとう。』


ぎゅっと抱き締めれたままの状態から
私は腕を伸ばし高尾君の背中に回す。

別に深い意味はないのだけれど

珍しく彼が甘えてきてくれているのだから
甘やかしてあげようと


そう思ったのだ。



ずっと黙っていた高尾君がぽつりと
 
「ななあったかいな。」と囁く。
肩に頭を置いているので自然と高尾君が
私の耳元で話す形になりくすぐったくて

『ん、、くすぐったいよ。』

と身をよじると、ガバッといきなり
引き剥がされる体。



再び『?』と、首をかしげると


「ほんとマジでそれで計算してねぇーとか
 反則っしょ。

 ……これ以上余裕ねぇわ俺。」





少しずつ

少しずつ

高尾君の顔が近づいて来て
このままではキスしてしまうと、思った瞬間

聞き覚えのある声で私の後ろから「しゅっ、!」
と投げる時の声が聞こえる。

そう、投げるときの!?

と気づいたときは時既に遅くて

高尾君の頭上に何が飛んできて綺麗にヒットする。



「へぶっ!!!!?」

とそのまま高尾君はひっくり返り
驚いたまま立ち尽くすとコロコロと
足元に缶ジュースが転がってくる。



これは、


『あったかーい、…おしるこ?』


手に取り振り返ると眼鏡のブリッジを押し上げる
緑間君がいて

「俺のシュートは落ちん。」と豪語している。

すると、転んでいた高尾君が立ち上がり


「いや!落ちる落ちないとかじゃねーし!?
 缶とか一歩間違えれば殺人だし!?

 つか、真ちゃんなんでここが分かったの!?」


状況が掴めないことからか

早口で捲し立てるように言う高尾君に
動揺しない緑間君は


「今日のかに座は1位なのだよ。
 そして、高尾お前は最下位だ。

 だから俺は思い付くままに行動したら
 お前を見つけたというわけだ。」


「は?だって真ちゃん今日学校でさそり座は
 1位だって…。

 いや、それにしたって意味分かんねぇーけど。」



赴くままにと平然に言うがそれで居場所を
当てられる彼は赤司君の次に
凄いんじゃないかと思う。


すると、緑間君が
私と高尾君の方に歩みより私と
高尾君の間に入り込む。


「確かにさそり座は1位だった。
 おは朝でも

 "今日の1位はさそり座のあなた。
 大胆な行動を取りやすい1日!
 成功へのきっかけになるかも!?"

 と言っていたのだよ。


 しかし馬鹿めが。時間を見てみろ。」


淡々と話す緑間君の言葉を不思議に思いつつ
携帯を見ると時刻は既に0時を回っていて

0時10分と日付がすっかり変わってしまっていた。

「マジで?」と肩を落とす高尾君は
落ち込んではいたものの直ぐに体制を建て直し

「いや!?それでもおしるこは酷くね!?」
と訴えていたが「正当防衛なのだよ。問題ない。」
と緑間君は、変わらない。



あれだけ頑張っていたのに結局高尾君も皆に
邪魔?されたわけで
なんだか、可笑しくなり『ふふっ。』と笑うと
緑間君がくるりと振り返る。



「なな大丈夫か?
 高尾になにもされなかったか?」

と優しく肩に手を置く緑間君。

緑間君の手もすっかり冷えてしまっている。



『ありがとう。大丈夫だよ?
 何もされてないし、

 いくら高尾君でも節操のないことはしないよ。』


なにげなしに言った言葉だったが
高尾君が「うっ。」とうなり

よろよろとこちらに近づく。

緑間君はその姿を見て溜め息を一つ溢すと

「夜も遅い。帰るぞ……と言いたいが
 一勝負して帰るか?」

と彼には珍しくにやっと笑う。

私はもちろん高尾君も、驚いたようで
「マジで、?」と聞き返している。

「もちろん、なながよければ…なのだが。」


様子を伺うように緑間君が、
顔を覗き込んでくるのが、なんだか可愛くて


『大丈夫だよ?二人のバスケ見てるの好きだし。』



と答えればふんわりと頭を撫でられ
落ちていたおしるこ缶を拾い私に手渡してくれる。

まだ、ほんのり温かいそれを両手でぎゅっと
抱き締めて



『幸せだなぁ…。』と無意識に呟けば

「そりゃ、こっちの台詞だぜ。」
と高尾君が笑った。












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