▲宮地清志と誕生日.





今日は一日そわそわしている。

部活が終わって即効で着替えて
木村やめんどくせぇ高尾ら後輩も撒いて




急いで学校を出ると校門でもたれながら
ななが携帯をじっと見つめている姿が目に入る。

その姿を見るだけで顔が緩んじまうのが分かるが

あんまりへらへらもしてられねぇから
気を引き締めて近づいた。


すると、ななもこちらに気がつき
ふんわりとした笑みを浮べこちらへ歩み寄ってくる。



引き締めたばかりの顔が歪む。





『宮地さん、お疲れ様です。』


にこにこして何も危機感を持たない
こいつに呆れる。



なんせ、他校の征服が珍しいのか、
あいつの可愛さにやられてんのか
下校途中の野郎どもがチラチラと見ているからだ。

いつもは腹ただしくイライラするが
今日は悪いきはしねぇ。



それもこれも、今日の俺の誕生日を
祝ってくれるために来てくれているのだから。










「待たせて悪いな、…馬鹿どもに見つかる前に行くか。」




困ったように笑うななの手を取って
歩き出す。





『ふふ、』と笑うななを横目でみながら
視線を前に戻す。



今日と言う一日を喜びながら。













▽▲


















それは、前日宮地さんに明日誕生日プレゼントを
渡すため時間をもらえないかと

メールしたときだった。



平日だし、冬の大会前で忙しいだろうから
プレゼントだけでも…って

そう、おもっていたんだけど







"帰り一時間、いや30分でもいい。
会えないか?"

と言う返信に

"もちろん!"と打ち返し
当日、秀徳高校まで来たというわけだ。


同じ都内。


離れているとはいえ
何時間もかからない場所で良かった。


むしろ、家からは秀徳の方が近いかもしれない。







少し早く来すぎてしまっただろうか。

ちらほらと部活生が下校しているなか
校内には入りづらく、門の前で待つことに。



ふと、携帯から顔を上げると宮地さんが
こちらに歩いて来ているのが目に入り

小走りで駆け寄ると

くしゃりと笑う、宮地さん。


私はこの顔が実は好きだったりもする。



いつも、ツンツンしている彼がみせる
レアな表情だ。


すると、


「待たせて悪いな、…馬鹿どもに見つかる前に行くか。」



と苦笑いしながら私の手を取り歩き出す。

その手は部活をしたあとなのか
とても暖かかった。











『宮地さん、そういえば何処に向かうんですか?』


他愛のない話しをしながら、
行く場所も私は知らずひたすら宮地さんに引かれてて歩く。



「俺の気に入ってる場所があってな。
 最近暗くなんのも早ぇし丁度いいなって思ってよ。」





『…丁度いい?』




そう聞き返すと「まぁ、な。」とはにかむ。

「もう少し歩くぞ?」
と珍しく訪ねる形で顔を覗きこまれて
ドキンとする。


『っ、大丈夫です。』

と、ぷいっと他所をむくと


「ふ、一人前に照れてやがって。」

と、これまた珍しくからかってくるので
『馬鹿にして。』と宮地さんをにらむも
「はいはい、」と宥められて終わってしまう。




宮地さんの言葉通り少し歩くと
小さな高台があり
ちょこんとベンチがひとつ。
少し高い位置に作られていることもあり


民家や街の明かりがキラキラと光り
夜景が綺麗に見える。




「綺麗ーだろ?都会は空はあんまり
 綺麗に見えねぇけど、変わりに夜景は綺麗に見えんだよな。」



じっくと、こんな風に街を見たことはなかったが
確かに綺麗で
   






『はい!すっごく、きれい。…良く来るんですか?』



少し前に出て景色を眺めていると
ばつが悪そうに頭を掻く宮地さん。


「まぁー、あれだな。たまに、落ち込んだときとかに
 来たりもするか?、な?」


恥ずかしいのかこちらを見ずに言う宮地さん。
いつも弱音とか吐かない分

こうやって一人で抱え込んでいるのだろうか。




『…、あ、宮地さんもしかして照れてます?』

しんみりしまった空気を変えるべく
あえて冗談めかして宮地さんの顔を覗き込むと

むすっとした顔でにらまれる。


『…み、みやじさーん?』

と反応がない宮地さんにパタパタと手をふると
その手を捕まれ引き寄せられる。





『ひゃ、…宮地…さん?』





なにも言わない、が

手に込められる力。




「…今日はわがまま言って来てもらって悪かった。
 ありがとうな。」


そういって私の頭と宮地さんの頭をコツンする。

しかも、その状態のまま笑うものだから
発する言葉をうしなってしまう。


しかし、宮地さんは気にする様子もなく話しを続ける。

「…大事な話があんだ。」



















「俺と…「みやっじさーん!」」




辛うじて"大事は話…"までは聞こえたが
突然聞こえた聞き覚えのある声に
びくりと肩が震えて

宮地さんも言葉を止める。




「…高尾、に、緑間…てめぇら…。」


と怒りに震えているであろう宮地さんの後ろに
息を切らした高尾君と緑間君がいて

…走ってきたのだろうか?







「いやー、宮地さん先帰っちゃうんで
 マジ焦りましたよ。」

といつもの調子で笑う高尾君に
「あぁ?ふざてけてんのか?
 …分かってんだよ、高尾!わざとだろ!」
と、怒っていてる宮地さん。

だが


「いや、高尾ちゃん何のことか分っかんなーい!」

など言って高尾君はしらを切るつもりのようだったが

「…とりあえず間に合って良かったのだよ。」
 
と緑間君が呟いたばっかりに


「おい!こら!
 間に合ったってどうゆう意味だ!あぁ?
 お前ら全員轢くぞ!

 木村ぁー!軽トラー!」

と癖なのか、ここにいない木村さんの名前を呼ぶと
草むらから

「宮地。なんで、分かったんだ?」と
まさかのまさか木村さんが出てくるではないか!


「ここにななと来るのは
 お前にしか話してなかったからな!

 どうせ、うっかり高尾あたりに話したんだろ!?」

と、すらすら予想をたてる宮地さんに
「正解だ。」と冷静な木村さん。




ぎゃいぎゃいしている皆を見ながら

いつもの秀徳だと、一人笑っていると
高尾君がこちらに近づいてきて


「邪魔してごめんな?あと、宮地さんに………って
 言ってやってくんね?」

とぼそぼそと耳打ちされる。




え?と思うも話しているのを見た宮地さんが
ギンっとこちらを睨み
高尾君に背中を押され一歩宮地さんに近づく。




「高尾、なに吹き込んだ?」
と黒い笑顔の宮地さん。
しかし、怯まない高尾君は

「俺らからの誕生日プレゼントっすよ!」

とへらへらしてる。



私は恥ずかしさから視線をさ迷わせていたが
覚悟を決め宮地さんを見つめる。



おそらく顔は真っ赤だろう。








『…き、清志さん、誕生日おめでとう。』





名前を呼ぶ、たったそれだけのことなのに
いつもは呼ばないためとても恥ずかしい。


宮地さんはいうと
一瞬固まった後、顔を手で覆いしゃがみこみ


「高尾殺す、マジ殺す、三回は殺す。」

とぶつぶつ呟いていて


「おっかねー。」と高尾君は笑いつつ
満足げで

緑間君は溜め息をこぼしている。




結局最後は皆で帰ることになり
ワイワイ言いながら帰った。






家に帰りつくと宮地さんから携帯に






"ありがとう"のメールが届いていて

お礼を言うのはいつも私の方なのにと
心がぽかぽかする。








それと、同時に







































大事な話し聞きそびれてしまったことを
思い出しながら。





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