▲拍手.2015年/10月〜12月
「はーい、はいはい!先輩方!!」




それは、部室で着替えを始めようとしていた
ときのことだ


いきなり黄瀬の馬鹿がギャンギンと
何やら吠え出したのは。

本当にうるさくて敵わないが、
まぁ嫌いかと言われればそうでもない。



ん?あぁ、すまない。

今回進行役となった俺は
笠松幸男だ以後よろしく頼む。



兎にも角にも意味の分からない
コメント収録はこうやって始まった。




「へぇー、コメントか。
 黄瀬、どういった内容を話せばいいんだ?」



「そうっすよね!!
 コメントっていきな(り)言わ(れ)たって
 わか(ら)ーん!」



                    
「……いやまず、落ちつけお前ら。」



森山に、

早川、

小堀…。

順にこれまた忙しくわいわいと話していくが
俺はいまいち納得いかねぇ。


「そうだ!少し待て。
 それより先に突っ込むことがあるだろうが!?」



「…?突っ込むこと?
 どーしたんス?笠松先輩?
 そんなぴりぴりしちゃって。」


抗議する俺に対して

ふにゃんと笑う黄瀬が、やたら腹立しくて
軽く蹴っ飛ばす。

もちろん「笠松先輩酷いっスー!」
と喚いているが、それは全て無視だ。






「てめぇの言葉には主語がねぇんだよ!
 もっと詳しく話せっつってんだ!」


俺はけして悪くないと思う。

普通は、いきなりコメント録るとか
言われて何のことかも分からず、

"はい、そうですか。"といけるわけがねぇ。


「もうー。笠松先輩は相変わらず堅いっスね。

 今回は、俺たちに会いに来てくれている皆に
 お礼の言葉を伝えよう!っていう企画っス!」


語尾に星マークがつきそうなくらい
明るい声で言われて無性に腹が立つ。

蹴ってやリたい。



すると、黙って見ていた森山が

「まぁまぁ、笠松そんなにカリカリするなって。」
と肩をポンポンと叩く。


いつも女にちゃらちゃらしているが、
頼れるときも多く良い奴だと

思っていたが



「世の女性に俺たちの魅力を伝えられるんだぞ!」

と言われやっぱり蹴りたくなったのは
言うまでもない。


「おおー!!流石も(り)やま先輩!!
 じゃぁ、さっそくコメトと(り)
 初めましょう!!…っう゛!!!!」

ふんふんと鼻息が荒い
何を話しているのか分からない

早川が近くに居たのでとりあえず蹴り飛ばす。



そんなこんで始まった、コメント録り。






もう一度言う。俺は悪くねぇ。






そう自分に言い聞かせていると黄瀬が

「じゃぁ、ここは主将である笠松先輩からって
 ことで!」

と無遠慮にぐいぐいと俺の背中を押し
マイクまで連れて行かれる。

「おい!黄瀬押すな!」
と言う俺の言葉も無視される。


まぁ、でも主将からと言われたら仕方ねぇ。と
腹をくくり、マイクに立つ。




「よし、海常高校を代表してお礼を言う。
 ありがとう。

 これからも、こんな馬鹿どもをよろしく頼む。
 いつでもシバキに行くぞ。


 …でいいか?黄瀬?」


吹き込み終えた後、黄瀬を見ると
ポカンと口を開けていて

「めちゃめちゃ、堅いっスー!!」
と呆れているようにも見える顔で叫ぶ。


「ダメっスよ、笠松先輩!そんなに堅くちゃ!
 こう、好意的に話さないと!」

とモデルにもっともらしいアドバイスをもらい、
俺はそんなに堅かったか?と考え直す。


すると、「お手本を見せるっス!」と
男相手にもかかわらずバチンとウインクを決めて
マイクの前に立つ黄瀬。



「いつも、ありがとうっス!
 これからも来てくれると嬉しいっスけど

 俺は一人だけなんでサインは順番に
 お願いッスね?

 …ん?なんす小堀さん?」




自意識過剰だと思わせる黄瀬のコメントに
俺は溜息をつきつつ横をみると
何故か小堀がにこやかに笑っていて

どうしたものかと思えば

「いや、何だか黄瀬らしいなと思ってさ。
 本当にお前はモデルであり
 キセキの世代の一人なんだなって。」

と一人納得していて

「お前は親か。」と突っ込みたくなる。

すると森山が

「まぁ、そうだな。いかに相手に
 自分のことを覚えてもらえるようにするかは
 大切だよな。」

と一緒に納得しているが
向けてる目線はきっと小堀とは違うだろう。

しかし「そうだよな…。」と小堀は上の空で
「俺が次行くよ。」とマイクまで歩いていく。

俺は正直心配で仕方ないがな。


こほん、と一つ咳払いして小堀が言った言葉は



「えっと…なんて言えばいいか…。
 ありがとう。これからもよろしく。

 いや…これでは面白みがない、か?
 やっぱりだめか?森山?」

だ。


しかも最後は心配して森山に助け舟を
求めている。
だが、俺からしてみれば小堀が一番まともだと思う。

しかし、森山はずんずんと
マイクのところまでに歩いていくと

小堀の肩に手を置きマイクを
引っ掴む。


その行動に何か嫌な予感を感じ
俺も急いでマイクの方に行くが森山が
先にしゃべりだす。



「小堀、そんなんじゃ駄目だ!


 いつもありがとう。貴女と言う麗しい人が
 俺に会いに、いや!愛に!来てくれると思うと
 幸せで……ぐふっ

 …笠松、ナイス…みぞ、お、ち。」



「間一髪…間に合わなかったか。」


何か不可解なことを言う森山の腹を
とりあえず蹴ってみたが少し間に合わず

痛さに倒れる森山を見つめる。

心配する小堀と、「あちゃー」と
苦笑いする黄瀬。

早川は固まっている。






そんな固まっている早川を少し睨みつけ

「早川、後はお前だけだな。
 さっさと終わらせろ。」と声をかけ

マイクから離れる。

「はい!」と元気良くアイサツした早川が

マイクに向い話し出す。


しかもマイクがあるというのに
最大の音量で



「いつもあ(り)がとうございます!
 こ(れ)か(ら)も、がんば(り)ます!

 せい(り)んにお(れ)は勝つぞー!!
 おー!」

とこぶしを天に掲げる。


「!早川センパイうるさいっス!!
 全力投球すぎるっしょ!!」

と、あの黄瀬が突っ込んでいるから相当だ。



「ったく、まぁこれで全員録ったな。
 これからどうするんだ黄瀬?」

マイクの電源を切り機器を片付けながら
黄瀬にこれからのことを尋ねる。

森山も痛みから立ち上がり
一緒に片付けてくれている。



「たしかにな。しかもこのコメントの
 編集についてはどうなるんだ?」

森山も少し気になったようで同じ様に
問いかけていた。

黄瀬は携帯を触りながら

「編集は、赤司っちに頼むので問題ないっス!
 あとは…機械については秋田に送るんで
 ダンボールに詰めろ…って書いてあるっスね!」


画面を確認しながら話しているところを見ると
おそらく誰かの支持なのだろう。


まぁ、あの話し方とこのキセキのメンバーを
まとめられるのは一人しか想像つかないが。



そんなことを考えていると森山が
「こんなふざけた日もあるといいな。やっぱり。」
と笑っていて

本当に「仕方のないやつだ」とも思ったが


知らぬ間に俺も笑っていた。














―――――――――――――――――――――――――



☆海常は私の中で結構真面目な人たちだという
イメージがあり、少し硬くなりすぎてしまいました。























よし、海常高校を代表してお礼を言う。
ありがとう。

これからも、こんな馬鹿どもをよろしく頼む。
いつでもシバキに行くぞ。
…でいいか?黄瀬?




いつも、ありがとうっス!
これからも来てくれると嬉しいっスけど

俺は一人だけなんでサインは順番にお願いッスね?

…ん?なんす小堀さん?





えっと…なんて言えばいいか…。
ありがとう。これからもよろしく。

いや…これでは面白みがない、か?
やっぱりだめか?森山?





小堀、そんなんじゃ駄目だ!

いつもありがとう。貴女と言う麗しい人が
俺に会いに、いや!愛に!来てくれると思うと
幸せで……ぐふっ

…笠松、ナイス…みぞ、お、ち。





いつもあ(り)がとうございます!
こ(れ)か(ら)も、がんば(り)ます!

せい(り)んにお(れ)は勝つぞー!!
おー!



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