▲壁どんからの…ver,陽泉





『…と、言うことで今回は陽泉高校の皆様です!』





前回同様一人ぱちぱち拍手をする。

もちろん皆は呆け顔…と思ったら
岡村さんだけ一緒にぱちぱちしてくれて


『岡村さんっ!!!』と言えば


劉君が

「きもいアル。」とキツイ突込みを入れ

岡村さんが

「ひどいっ!」と嘆いていた。




「とりあえずは内容の説明からしてもらおうかな?」

とふわりと笑う氷室君。

笑顔だけど有無言わせないこの雰囲気。


威圧感に圧倒されていると
一向にやる気を見せなかった紫原君が

のっそのっそと動き出す。

携帯のメール画面を開いてるようだ。

「室ちーん。そのことなんだけど
 俺、黄瀬ちんから聞いたー。

 つか、一方的にメールが届いた。」

と氷室君にメールの内容を見せ付けている。


私も覗こうとぴょんぴょん跳ねて見るが見えない。

皆、背が高いんだよなあ。




『ねぇ?なんて書いてあるの?』

と聞けば少し悩む氷室君。



痺れをきらしたのか劉君も携帯画面を覗く。





「…いかにななを上手く口説けるかが
 鍵っスね。


 って最後に書いてるあるアル。」

平然と劉君は最後の端だけ読み上げ
「なるほど…。」と納得している。


しかし、一部しか読み上げなかったため
内容見ていないこちらはチンプンカンプンで

福井さんが
「おい!劉!あるある。じゃねーよ!
 それだけじゃ理解できねーし!」

と怒っていた。


ちなみに黄瀬君からのメールはこうだ。





”どうもっス!念のため今回のことで報告っス!

まぁ、名前通りななっちに壁ドンするんすけど、
やっぱ壁に迫るだけじゃ芸がないっスから、

いかに上手くななっちを口説けるかが鍵っスね!

じゃあ、紫原っちの検討祈るっス。



追伸、勢いあまってキスしちゃ駄目っスからね!!”


と書いてあった。

福井君は私の肩を叩き
「お前大変だったんだな。」


と哀れみを込めた目で呟く。

『分かってくれますか!?…福井さん!!』

と、私の方が勢いあまって福井さんにぎゅうっと抱きつく。
福井さんは、なんだかしどろもどろしながらぎこちなく

「お、おう。」

と答えてくれていたが紫原君にベリっと
引き剥がされてしまう。


「いつまでやってんのー?ひねりつぶすよ?」

と機嫌をすっかり悪くしてしまった
紫原君の背中を見つめながら二人で笑った。








 


No、1  福井さん


「いや、つーか俺さ壁ドンなんてやったことないんだけど。」

私の前に立ち顔を赤らめながら福井さんは
そっぽを向いて頭を掻く。

すると外野から

「そんなん誰もしたことないアル。」

とか

「つーか経験あっても若干引くよねー。
 俺らがやったらただのカツアゲじゃーん。」

とか

「先輩は背が低いから、そうは見えないんじゃないか?」


とか口々に聞こえる。

それを青筋立てながら福井さんはきいていて

「おいこら!氷室!最後フォローになってねぇから!」

と抗議していたが意味はなさそうだ。









「…よしっ。」
と福井さんは意気込むと割りと優しめに壁を叩く。

やっぱり想像していた通り背が高すぎないため良い感じだ。

しかし、緊張からかなかなか次の言葉が出てこない福井さん。
顔が真っ赤である。

私はと言うと海常での一件で慣れてしまい
少し耐性ができていて

相手側がここまで照れていると逆に冷静で居られる。


『…釣り目なんですね。目も大きいし。』
と福井さんの顔をまじまじ見てると

更に顔が赤くなりパッと離れて
「俺無理、俺無理!これ以上はハードル高いって!」

と勢い良くずさささーと後ずさる。


「福井は度胸が足りないアル。」
と劉君からキツイ突込みをうけ

「うるさい!」と福井さんと劉君で口論となっていて

いつもの調子だと笑った。










No,2 岡村さん








「いや、駄目でしょー。」

と開口一番に言う紫原君言葉に激しく賛同する周り。

「なーにがいけんのじゃ!!」

と怒る岡村さんに



「あごゴリラに迫られてるななちん見るのが嫌。」

「それ以前にあごゴリラがだと犯罪アル。」

「確かにナンセンス…かな?」

など、声があげられる中福井さんが


「…岡村。諦めろ。どんな事でも諦めねぇ
 お前のそうゆうとこ俺は好きだぜ?

 …でも、諦めなきゃいけぇー事もある。」

と岡村さんの肩を叩く。

「だってお前、陽泉でバスケしてもモテなかってだろう?」

と福井さんが決め顔するが、きっと意地悪だ。


もちろん岡村さんは福井さんにトドメを刺され
「そうじゃけんどー!!!!!」と叫びうなだれていた。

私はそんな岡村さんの肩をトントン叩き


『彼女にはなってあげられないですが、
 今度どこかに出かけましょう?』と言えば

「なな!!」と強く手を握り締められて痛かった。












No3,氷室君









ついに彼の番が回ってくる。
一同が息を飲む中、



氷室君は帰国子女だしスマートだし気を引き締めないとと
私自身も身構えた……その瞬間だった。


気がついたら氷室君、私、壁。


手で壁をつく、というよりは肘まで壁にくっ付け
私と氷室君の間には隙があまりない。

恥ずかしいし、なにより本当にスマート過ぎて見えなかった。


『ひ、氷室君!?』と顔を上げると


「その驚いた顔がみたかったんだ。可愛いよ?」

と私の髪を一房、手に取るとその髪にキスを落とす氷室君。
どこかの王子様のようで絵になる。



「 I think very tenderly of you. 」



『…え?』

何かを英語で言う氷室君。
しかし発音が良すぎて単語が聞き取れない。


すると口元を耳元まで氷室君は持ってきて


「君のことが、たまらなく愛しい。

 …そう言ったんだ。」



とくすりと間近で微笑まれ顔に熱がこもる。




『ーっ!ど、どこまで本気なんだか、。』
とプイッと横を向くと、氷室君の方から再度
笑う声が聞こえる。

「本当はこのまま抱き締めてしまいたいけれど
 皆の前だし我慢しておくよ?」

と再度耳元で言うと離れていく。

本当に全てがスマートで氷室君のペースにはまってしまう。

しばらくその場を動けず呆然としていると
福井さんが「やっぱ、氷室はちげーな。」と
普通に関心していた。










No、4 紫原君。








「んー、俺の番ね。」

と紫原君がやっぱり、のっそのっそと動き出す。



「俺がやってもななちんの背が小さくて
 やりづらいんだよねー。」


とため息を吐く。紫原君。

『いや、紫原君が高いんだよ?私、平均だから!』


と抗議してみるが意味はなさそうだ。
もう、と言うと何も気にしていない紫原君は

「良いこと思い付いた。」と

こちらに近寄り


そのまま私を向かい合って抱き上げる。

いきなりのことで『ひゃ。』と声を上げると
「落とさねーし。」と言われる。

いや、そうゆう問題じゃねーし。と私は思う。


「これなら、いー感じじゃない?」

と紫原君より高くあげられた私は紫原君を
見下ろす形で少し新鮮だ。

すると、私の胸下、お腹の辺りに顔を埋めだす紫原君。


『ちょっ、くすぐったいよ。』
と身を捩るも「暴れないでよねー。」と聞く耳持たず。


なんとか逃げようとする私に逃がすまいと
ぎゅーとしてくる紫原君。

可愛いけど、お腹のところでぐりぐり動かれると
本当にくすぐったくて余計にこちらも動いてしまう。


もはや、壁ドンでもない。






「ちょっとななちん動かないでよ。」



『だって…ぁ、、く、すぐ、ったく…て。』

動くなと言う紫原君に無理だと言い
手で頭を押しのけようと試みる。

すると、なぜかピタリと動きを止める紫原君。



どうしたものかと覗き込むと凄い変な顔で
私を見ていて。『?』とかしげると
もう一度頭をお腹に当てる。

解放されたことで油断していた為、身構えることなく再度来る衝撃に『ーっん。…や。』と
声を上げると、またまた動きを止める紫原君。



そして、また同じように顔を上げ私の顔を確認して
お腹に頭を当てようとするのを福井さんに止められる。


「おいっ!!紫原お前いい加減にしろよ!!」

と顔を真っ赤にして怒っていたが紫原君は何処吹く風の如し。



そして極めつけには

「だって、ななちんのエロい声聞いてたかったんだもん。」

なんて言い出すので、私そんな声出してたのか。

と恥ずかしくなり


穴に入りたい気分になったのは言うまでもない。







No,5 劉君。







「言っておくが私は自信がアル。」

と劉君は自身ありげに私の前に立つ。


『そんなに?』と聞くと


「女の人を落とすには、これがいいと福井に
 前聞いたことがアル。

 今回はそれをやろうと思う。」



と言う劉君の後ろで「何教えたんですか?」と
聞く氷室君に「覚えてない。」と答える福井君。

不安だ。




そんなことを考えていると劉君から「なな。」と
名前を呼ばれて顔を上げると
そのタイミングで少し肩を押され壁にトンと軽く
背中が当たり

劉君の手が後頭部上にダンと置かれる。


今までに一番まともな壁ドンではないだろうかと
劉君の顔を見た瞬間、ふわりと口に当たる物。

一瞬何かは理解でき無かったが
目の前に見えるのは劉君の顔。

硬直しているとチュッというリップ音を残し
離れていく。


軽くキスをされたのだ。




「福井に女の人には黙ってキスをするのが
 紳士の振る舞い。そう教えてもらったアルね。」


とドヤ顔の劉君。

呆ける私と紫原君に赤面の岡村さん。
呆れる氷室君に怒る福井さん。


皆感情はそれぞれだが



そんな感じで陽泉は終わりを迎えたが

もちろん、その後は福井さんが皆に責められる羽目になったし
それでも、一人キスした劉君も怒られていた。










『ちなみに!陽泉は優勝氷室君です!
 王子的要素と最後まで手を出さない紳士的な態度が
 決めてでしたが皆様はいかがでしたか?


 でわでわ!』






































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