▽07,


赤司君の作戦でとりあえず
陽泉高校から探索となった。


始めての探索なので、逃げる、守るが強い
陽泉が行き様子を見ようということだ。

チームバランスを見たときに陽泉が一番体力のある
メンバーで、最悪のケースも予想し2度目の探索を
任せたいのだとか。

どこまでも頭の良い赤司君の思考は読めない。
いったい、何手先まで見据えてるやら。


しかし、まぁ。

緊張感のないメンバーというか、
チームというか。


「ねぇー、室ちん。
 アイテムの中にお菓子ってあるかな?」

こんな時でもお菓子のことか。紫原君。



「…まず、ないだろうねアツシ。」


氷室君は、やりとりに慣れているのか一刀両断。
すごいなぁと感心しながら
陽泉君の皆の後ろを歩く。
ちなみにここは、南東一階。

体育館以外は薄暗く気味の悪い感じ。
いかにも、出そうな、場所。

「ねぇー、あんたさー」と、
私の前を歩いていた紫原くんはふとこちらを見る。

『どうしたの?紫原君?』


「あんた、本当に秋山 なな?」



一瞬質問の意味が解らなかったが、
う、うん?と返す。


「ふーん、なら良いんだけど。」
とぷいっと前を見る彼。
そんな様子を氷室君は笑って見ていて、
私が首をかしげると丁寧に説明してくれる。



「ごめんね。ななさん?
 アツシの知り合い…
 誠凛のマネージャーに君が似ていてね。
 苗字は違うけれど名前も一緒で親近感が
 沸いたんじゃないかな?」


リコちゃんにも言われたけれど、
そんなににているのか。
さすがに興味が沸いてくる。

「あー、まあ言われると
 そんな気もしなくはないな。」


と、福井君も顔を覗き込んでくる。
うっ、イケメン。

割りと福井君の顔が近くじわじわと顔が赤くなる。
どしようと、一歩後ろに下がると
ぐんっと手首を誰かに
掴まれ福井君を押し退け彼より前に出る。

「ななちん遅い。置いていっちゃうよー。」


どうやら私の手首を、つかんだのは紫原君だった。
紫原君の横で氷室君が、くすくす笑う。

「嫉妬とは、coolじゃないなアツシ。」


その声は私の耳までは届かなかったけれど
「室ちん、うるさい、」と少し顔を赤らめて怒る
紫原君は良く見えた。






▽▲







「かぁー、なかなか気味の悪いとこじゃの!
 帝光中とやらは。」

岡村君が、探索に飽きてきたのかぶつくさと文句を
言い出す。


「教室の鍵が開いていないのだから、廊下を
 進むしかないアル。」


劉君は、岡村君の肩をぽんぽんと叩き励ましていた。


「てか、なにもない方が良いだろ。
 こんな一本道の廊下でモンスターに会ったら
 ヤバイだろうが!」


福井君は、キョロキョロして周りを見回していが、
なるほど警戒していのか。


「先輩、この教室入れるみたいですね。」


氷室君は、突き当たりの教室の前で立ち止まり
恐れることなくガラッと教室を開ける。
んー、入れそうだねー、ここ。
とゆったりと紫原君もずんずんと入ってく

本当に恐いもの知らずだな。

「ななこっちアル。」

私が一番最後にならないように劉君が
手を引いて真ん中にしてくれる。

知らず知らず、紫原君も劉君も
名前でよんでれてるのが嬉しい。


教室に入ると、学校ではあり得ない光景が
目に入る。


荒らされた教室。


至るとこに血が飛びはね、鉄臭い。


黒板には第一ゲームと殴り書きされていた。


「なな!」

氷室君が、教室の後ろから私を呼ぶ。
声色からして何かあったのか?急いで行く。

そこには、やや大きめの宝箱があった。



『これ、宝箱!?』




「そうみたいだ。一応俺でも開けられないか
 試してみたけど無理だったよ。

 すまないが、itemの可能性がある。
 開けれるか試してみてくれないか?」

申し訳なさそうに氷室君は、目を伏せる。
わかったと少し意気込み宝箱に手をかける。
陽泉の皆が心配そうに宝箱に集まる。

深呼吸して、ぐっと上にあげるとギギッと鈍い音を
たてて開く。

恐る恐る中を確認すると、拳銃が3丁。
手榴弾が5つ。
ライフル1丁。あと、それぞれの弾丸だった。

「おお!武器じゃねーか!良くやったな!」

とぐしゃぐしゃと、頭を福井君に撫でられる。
もう、私の歳上の威厳は皆無だ。

「これで、モンスターに対抗すんじゃろうか?」


岡村君は、恐る恐るライフルを手にする。


「どうやら、そのようですね。」


氷室君は、ガチャンと拳銃を手にして
安全バーをのける。
なんだ、慣れているのか?と思ったら

何となく、こうゆう風に使うなかなって思ってね。
と返された。顔に出てたかな。


すると、おもむろに
キーンコーンカーンコーンと
学校特有のチャイムがなる。
同時にキーンとマイクのハミング音を響かせ
スイッチが入る。





《第一ゲーム開始だよ。いらっしゃい。
 初のお客様は陽泉高校か。

 紫原君、楽しんで逝ってね。

 ……できればそのまま。》


チャイムの後にラスボスさんの声が校内放送で響き
ブツッと切れる。


すかさず氷室君と劉君が
私を庇うように前に来てくれ

紫原君と福井君は黒板の方を睨む。

岡村君は私と並べるくらいびびっている様だった。

意外と繊細なのかも。




すると、黒板の教壇の上の天井からベチャベチャと
何だか分からない液体が教壇を飲み込み
ぐにょんぐにょんと、形を変える。

だんだんとそれは、
人形にも見えなくもない様な形になり
あぁ…あぁ…と呻き声も聞こえ出す。

劉君が一歩下がり完全に私の視界から、
その化け物が
見えないようにしてくれている。

「戦えってことアルか。」


劉君の声が少し震えているような、

そんな気がする。

福井君や、岡村君にも緊張の色が見える。

「どうやらその様だね。」

ふっと笑みを溢しながら
拳銃を手前に構える氷室君は
少し余裕そうに見える。


「んだよ、氷室。やる気満々じゃねーか。」


「こうゆう状況は割りと燃えるタイプなんです、
 俺。」


「あー、確かに室ちんゲーセンのゾンビ殺すやつ
 チョー強いよねー。」


「全く頼りになる後輩立ちじゃわいっ!」



「主将がただ頼りないだけアル。」



あんなに、緊迫していたのに
教室に少し笑いが起きる。




「じゃあ、その腕前見せてもらわねぇーとな!!」

福井君の一声で一斉に銃を打ち出す。
独特の火薬の臭いと銃声が部屋を埋め尽くす。

因みに全部で銃を4丁。
紫原君は、耳塞いで見ている。



「やったか?」



福井君は少し前に出て確認する。

液体擬きの人間性モンスターは
後片付けもなく消えさり
モンスターの液体があちらこちらに飛び散っている。



『うっ…えぐいっ…。』


見た目もさることながら
ほんのりと血の鉄臭さと火薬の臭いがまざり
気持ち悪くなる。

しかし、目を凝らしてみると
化け物のいた場所に小さな箱があり、
それに気づいた福井君が開けようと近寄る。

「……やっぱ、開かねぇーな。わりぃなな。」


こくんと頷き福井君のところまで行こうとする。
すると、ぎゅと私の手を氷室君が握り
「一緒に、行こう。」と手を引いてくれる。


箱の前まで行くと屈み箱に手をかけ開ける。
やはり、私が開けると開く様だ。

箱の中には拳銃の弾丸が、ひとつ。

「なんじゃ、これは。」


すっとんきょんな声で岡村君が摘まむ。


「弾丸でしょー。馬鹿なのー?」

さらっと、いったけど紫原君。失礼だぞ。君。


「意図は読めないがとりあえずは、
 持って帰るか。」

福井君はくるりとドアに向き教室からでる。
並んで皆でぞろぞろと、教室を出ると


さっきまで居た教室からガッタンガッタンと
音がなり、教室から溢れんばかりのゾンビが
わらわらと大群で出てくる。


私たちはと言うと、
もう唖然としか言いようがない。

肌は爛れ、腐敗し、あちらこちらから血が吹き出て
ベチャベチャと音をたてながらぎこちなく
こちらを見ている、めっちゃ見ている。


「え、これまじ?」

流石の紫原君も驚いていて微動だにしたない。
そんな紫原君の肩をバシッと
叩き氷室君が叫ぶ。


「アツシ!走れ!この数は相手にできない!」


そう、氷室君が言うや否や皆一斉に走り出す。
ゾンビ達も待ってました、といわんばかりに
う"う"!!と、呻き声をあげ追いかけてくる。


『おおおお、追いかけてきたけど!
 走って、走ってきてる!』


イヤー!といいながらとりあえず腰が抜けそうに
なるのを我慢しながら身体にむち打ち走る。


「なな早く走るアルね!!」


劉君も走りながら、心配してくれているようだが
いかんせん、皆よりは全然身体能力が劣る私は
だんだんとゾンビに追い付かれる。


『ーーっ、いや、も、』


いっぱい、いっぱい走って
何とか体育館が見える位置まできたが
私はゾンビにつかまってしまいそうな距離で
目頭が熱くなる。


そんな、私を見かねたのか
紫原君がこちらに戻ってくると
私を横担ぎしポケットから手榴弾を出してピンを
口で引き抜くとゾンビの大群に投げつける。


投げられた手榴弾の勢いは、
想像以上にあり爆風で近くに居た
紫原君と私は体育館の方へ吹き飛ばされる。


もうダメだと思い強く目を閉じた瞬間
ぎゅっと抱き締められる感触が全身を包む。


恐る恐る目を開けると


紫原君にぎゅっと抱き締めていてくれていて
身体は全く痛くなかった。


私は急いで体をお越し紫原君の顔を覗き込む。

『紫原君!!ごめん!大丈夫!?』


少し顔を歪めうっすら目を開けると

「受け身くらいは、普通に取れるし。」と
怒られてしまった。いや?怒るとこそこ?

『ごめん、私が遅かったから…』

「はぁ?ちがーし別に。追っかけられるのに
 腹が立っただけだし。」

どうしよう。

何でかわかんないけど紫原君が怒ってる。

因みにゾンビは跡形もなくやっつけられていて
心配して氷室君や福井君達が駆け寄ってきてくれる。


「アツシ!大丈夫か?全く無茶したな。」

氷室君は、紫原君に手を貸し
砂埃をパンパンと払う。

「別に大丈夫だし…こんくらい。
 雅子ちんの竹刀の方が、こえーし。」

そんなに、恐いのか。陽泉の監督は。


もう一度紫原君にむかい私も彼の砂埃を払う。


『助けてくれてありがとう。』


ニコッと笑って紫原君にお礼を述べる。
今日一番の素直な笑顔だったと、思う。

紫原君は2、3秒固まり、小さな声で
別にそんなんじゃねーし。と呟く。
氷室君と顔を見合わせてふふっと二人で微笑むと

また、紫原君に横担ぎされる。




『え!む、紫原君!?大丈夫だよ!もう!』





「めんどくさいからこのまま持ってくー。」


仕方ないなアツシは、と、氷室君は笑っていたけど
とめて、とてめくれよ!二メートル級のやつに
横担ぎされたら地味に怖いんだよ!


やれやれといった感じで誰も止めてくれない。




この状態で体育館に戻り心配されたのは

私のせいではない。




思う。









prev / next

[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -