▽03,


「桐皇組は終わりかな?、次はうちの番だね。」

にっこりと微笑む、エレヤン泣きぼくろさん。
どっから出るんだその、色気。
女子の私顔負けですけど…。



「えー、どうでもいーけどさ、お腹すいたし
 お菓子食べたい。」


と、紫のお菓子の妖精さんは、まったくもって
やるきぜろ。お菓子ねーのー?、なんて
同じチームメイトに聞きまわっている。

どうやら、目が覚めたら手持ちのお菓子が
なくなっていたんだとか。
「まあまあ、アツシ。」なんて言って、
エレヤン泣きぼくろさんが、宥めていた。



紫君の周りはこう、ゆったりと時間が流れている
感じがする。
そんな、二人をぼぅーと眺めていると
顔面偏差値が高いこの面子なか、いろんな意味で
イカツイ顔の背の高い人が話しかけてくる。
いや、このチーム全体的に背が高いけど。
一人除いて。

「すまんの。お嬢さん。
 ワシは陽泉高校の3年主将の
 岡村建一ゆうもんじゃ!よろしくな!」

がしっ!と手を掴まれぶんぶんと、
握手を半ば無理やり行うと満足したように笑う。
うーん。なかなか、豪快な方だ。

「おい、岡村、ほどほどにしとかねーと嫌われっぞ。」


背が高いチームの中で唯一背の低い彼が、コツンと
岡村君の肩を小突く。人の良さがにじみ出ている。

「すまねぇな。俺は福井健介。岡村同様3年だ。
 まぁ、困ってんのはお互い様の様だし
 協力しようぜ?」

にこっ、と言うよりニカッ!って感じで
笑う福井君。

やっぱり良い子なんだなぁ…。と実感する。

『こちらこそ!そう言ってもらえると
 幾分かマシだよ。
 ありがとうね。』

お礼をのべて手を差し出す。お、おぅ。と少し照れながら握手をしてくれるあたり、
初々しくて可愛い。

なんだなんだ、年齢に合う可愛い反応も君
らはできるじゃないか!!

「なんだ、福井?照れてるアルか?」


ひょいと、後ろから細目の男の子が顔出す?

うん?アル?

と、思っていたことが少し顔に出たのか
福井君が少しぶっと吹き出し
顔を私からもアル君からも反らす。

「て、照れてねぇーよ!!
 行きなり出てくんなよ劉!」

先ほどより、かなり強い力で福井君は肩を殴る。
彼の背的には
どうしても肩くらいになるんだろうか。

「私は劉偉。陽泉高校2年アルね。よろしく。」


福井君の流れで何となく軽く握手し
劉君は岡村君の元まで戻る。

福井君は立ち去り際に小さな声で
「俺が、アルって語尾につけるの流行ってるって
 教えこませたんだぜ!」
と呟き、どうだ!っみたいな顔で去っていくけど
君、それは、いい…の、か?

「ほら、アツシ。あとは俺達だけだよ?」


エレヤン泣きぼくろ君はもはや、
紫妖精の保護者と化していて
んー。と、のそのそ動きだす。

「紫原敦ー。ねぇ?
 あんたもお菓子持ってないの?」

どうやら、聞きまわっていたお菓子情報は収穫ぜろだった様で。

『ご、ごめんね。
 私も手持ちの物は何一つなくて。』

手をひらひらさせて、何も持ってないんだよー
アピールをしたら、
至極残念そうな顔ですごすごと戻っていく。
うん、ごめん。本当にごめん。

「まったく、アツシはしかたないね。」

はぁ。とため息を吐くエレヤン泣きぼくろ君。
ため息を吐いても、どこか優しく紫原君を見ている。やはり、保護者だ。

「すみません。俺は、氷室辰也。
 俺は陽泉高校2年。
 アツシは1年になります。」

スッと差し出された手を握るのにこんなにも
緊張するものかと思いながら、手を握る。

すっごい良い発音で、キュートとか、
アホなことを氷室君は
言っていた様な、気もしますが
気にしない気にしない。


「ザキーっ!ほら、順番回ってきたよーって!」

ガム風船を、ぷくっーと膨らませる前髪が長い子は
顔の半分は見えないのに何故か
嘲笑っている様な雰囲気が隠せていない。

「んだよ!そう言うんだったら
 お前から話せよな、原!」

ザキと呼ばれた彼は、
前髪風船ガムさんに抗議する。
なんだか、ザキと呼ばれた子は今までになく

普通だ。

こう全体的に濃くない。
見た目、とかキャラとかこみこみで。

普通だ。なんだか安心する。

「えー、めんどくさいじゃん。
 メリットないしー。
 ザキがまとめて話してよー。」

いや、面倒くさいとかより
良く風船膨らませながら話せるな、おい。



「おい。いい加減にしろ。
 面倒くさいならさっさと話せ。」


やはり、彼が纏めて仕切っているのか。
花宮君がいさめると、さっきまでわちゃわちゃと
言い合っていた前髪風船ガム君と
ザキ君がだまる。


「ちぇっ、俺は、原一哉。ハイ次ー。」

一言名乗るとぷいっと背を向ける。
興味ないんだなぁ。


「あ?あー、山崎弘。
 もう、ザキでもいいぜ。ハイ次」

なんだ、なんだ、この緑チームの連携は。
私の息つく暇もない。
隣隣へと自己紹介がテンポ良く続く。


「ふぁ〜。…瀬戸健太郎。
 とりあえずやるきでねぇわ。
 眠たいし。じゃ。つぎ」

やたら、眠たそうな彼は確かヤル気を出したら
オールバックにするんだっけ?
今はオールバックじゃないから、

ヤル気はないのね。うん。


「俺は古橋康次郎。
 少し追加させてもらいたいんだか
 皆、霧崎第一高校2年になる。
 まあ、頼ることなどないだろうがよろしく。」


わざわざ、自己紹介してもらっておいてなんだが
感情が一ミリも伝わりません、古橋君。
ごめん、あと、こわい。

てか、霧崎第一こわいよ。全体的に。
若干引きながら花宮君を、見る。

確か、君が主将よね?
どうなってんよ、君のところのチームメイトは。


「ふんっ。俺に言うな。」

あれ?声に出したつもりないのに、
悪態ついて返される。
読心術か?いや、顔に出てたのかな?

しかし、花宮真という男は
こんなに大人しいやつだったか?

こうもっと、人をバカにしたような
見下したようなやつだった気がするのだが。


そんなこと、悶々と考えていると、
何様、俺様、赤様。が
ふいに、話しかける。

まさかの花宮君に。


「珍しいですね。貴方が他人に興味を持つのは。」

赤司君の言葉が気に入らなかったのか、
ちっと盛大な舌打ちをし
「んな訳ねぇだろ、ばぁか。」と返す。
赤司君に馬鹿って
花宮君は、なかなか勇者だ。

しかし、赤司君はまったく気にする様子もなく
ふっと笑う。



「ねぇー!あんた、こんな人数の名前
 覚えられるのー?」

赤司君と花宮君のやり取りが終わり、
赤司君の横から人なつっこそうな、
薄黄色の髪をしたベリーショートの
なんだか、猫を思い出すような可愛らしい男の子が
ぴょんとこちらに近寄って来る。

いや、猫?、というより?犬?いや、猫?
どちらにしても動物っぽい男の子だ。
赤司君と同じジャージを着ている所を見ると
同じ高校なのだろうか。

『あ、うん!ちょっと、大変だけど
 皆キャラ濃いから
 覚えられるよ。ありがとう』

二度目だが、だいたいは知ってる。
特に主要メンバーは。
それに加え、こんだけキャラが濃いと

むしろ、忘れられない。


「えー!すんげっー!俺は絶対無理だね!
 もう何人か既にわかんねーし!」

けらけらと笑っているが、それでいいのかい?君。
対戦校もあるだろうに。


「ん、もう!小太郎!
 名前も名乗らないで何自慢にならないこと
 自慢してんのよ!」

見目麗しい女の子、いや、男の子が
子猫君の頭を叩く。

「げっ、忘れてた!ごめん!
 俺、葉山小太郎!洛山高校2年
 よろしくっ!」

葉山君は終始にこにこしながら、
自己紹介してくれる。
なんだか、天然で可愛い。


もうっ。と見目麗しい男の子がぼやく。

「ごめんなさいね。私は実渕玲央。
 小太郎と同じ2年よ?
 よろしくねっ」

ぱちんっと華麗にウインクを決める。綺麗だ。
氷室君といい女顔負けの男子多すぎるだろ、こら。

「それで、あの筋肉の塊が根武谷永吉よ。」

実渕さんが、指差す方にはムッきむきの見た目は
もはや、成人している男の子が一人。
たしかに、筋肉…だ。


「おう!マッスルよろしくな!」

良い笑顔で答えていただけるは、
ありがたいがなんだろう
物理的距離はあるのに、なんだか距離感は近い。
「なにそれ、永ちゃん。意味わかんねー!」と
葉山君は爆笑している。

「永ちゃん、うけるでしょ?
 あとは、あっちにいる影薄い人で、
 先輩黛さん!」

元気良く、黛さん!と紹介されても、葉山君。
君は先輩を敬うことを知らないのかい?
私の方がヒヤヒヤする。

「影薄いことは否定しないが、もっと違う言い方は
 できなかったのか?
 先輩に対して本当にお前らは失礼だよな。
 ……まあ、期待もしてないが。」

確かに、言われないとなかなか存在に
気づかないかもしれない
肌白いし、儚げだし、髪色も薄いし。
そう考えると水色の髪の毛の黒子の方が
目立つかもしれない。



「どうやら、一通りは自己紹介し終わったようですね?」と赤司君が、ちらりと目線のみで皆を一周して見渡す。


「最後になりましたが、俺が赤司征十郎です。
 実渕達と同じ洛山高校で1年で
 主将しています。」


綺麗でしっかりと纏められた内容。流石は赤司君。
非の打ち所がない。


『洛山高校ね、わかった。皆よろしく、
 自己紹介ありがとう。』


ここぞとばかりに、微笑み精一杯の虚勢をはって
大人ぶる。
だって、自己紹介をして一人一人と話して
もう、私には確信があり逃場がない。
ここは、非現実的世界であるが
しかし、存在している彼らを、
触れられる彼らを夢だとは思えなかった。

口を開こうとしたときふいに、
体育館のスピーカーから
マイクのスイッチオンが鳴る。


その音がやけに、響いた気がした。







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