▽34.


すうー、はぁー、と深呼吸をし
パンっと両手で顔を軽く叩く。

赤司君の近くに置かれた一丁の拳銃を手に取り
体育館ステージ近くまで歩く。


拳銃を手に取る際に心配そうな赤司君と目があったが
大丈夫、大丈夫だと微笑み返す。


拳銃を胸に抱き皆の方をくるりと振り返る。



『聞いてほしいことがあるの。』


それは、私がここに来たときの本当の話。
車に跳ねられてしまったこと。

自分が既に意識不明の重体である可能性が高いと言うこと。



『皆の言葉、本当に嬉しかった。

 でも、ここがどれ程しっかりしたルールで縛られているか
 身をもって体験したから分かるの。

 ここから出るには撃つしかない。』


私の言葉に皆の息が詰まるような
そんな、雰囲気が漂う。


「…っ何を馬鹿なことを言っているのだよ!お前は自分をっ!!」

普段はあまり取り乱すことのない緑間君から悲痛な声が
聞こえる。

高尾君なんかは居たたまれなくなったのか
目を伏せてしまっている。


「そうっスよ!早まっちゃダメっス!!」

と、黄瀬君は泣いちゃったりなんかして
もう本当に良い子だな。と
こんな状況なのに笑みがこぼれてしまう。



『ありがとう。
 でもね、ここでずっと皆で居るわけにはいかないし

 私は帰れたとしても助かる可能性が低いから

 なら、皆を帰してあげたいの。』


それは、綺麗事にも聞こえるかもしれない。
偽善者だって、優しさの押し売りだって言われるかもしれない。

しかし、その方法しか今の所打つ手はないのだ。

それが、証拠に理解している策士組は
苦い顔をしている。



すると、さつきちゃんが泣いてぐちゃぐちゃに
なってしまった顔でこちらに走ってくると

そのまま、ぎゅぅっと抱き締められる。



「私、納得いきません!こんなの絶対に!!」

そう言いながら抱き締める力を強めて
さつきちゃんは泣いていて
出来るだけ優しく頭を撫でる。

少し落ち着きを戻し離れるも涙は乾いてはおらず

リコちゃんも泣いているのがここから見て分かる。

皆を悲しませてばかりで心が痛む。



ちっと、誰かの舌打ちが聞こえたと思ったら
花宮君の物で

「おい、お前が撃たなきゃ帰れないってことは
 水色って奴も帰れないってことなんじゃねぇか?」



花宮君の言葉に何人か「そうじゃん!」と同意するも
今吉君が首を横にふる。


「俺も考えたけどあかねん、花宮。
 赤司の話ではあいつは水色は現実世界で
 既に植物状態やそうや。

 仮説ではあるが、この世界を創るにあたって
 まず自分が犠牲になっとる。

 あいつには、もう現実世界への未練は無いと考えてええやろ。」



だから、帰れても帰れなくても自分は問題ないと言うことか。




「何か策はねぇーのかよっ、!!」
悔しげな火神君の声が聞こえるも誰も何も言わなくて、
いや、言えなくてといった方が正しいだろ。



『皆、本当にありがとう。
 ここでこうやって皆に会えたのは奇跡なんじゃないかなって思うの。

 始めは怖くて言えなかったけど

 はじめっから皆のこと知ってて大好きだった。

 だから、だから、、。』


泣いちゃダメだと思っていながらも
後から後から涙は零れて溢れる。



『だから…皆を守らせてほしい。』



涙は止められないけれど
私の本心であることには間違いなくて
力強く笑って見せる。



『それにこれが最後って訳でもないかもしれないよ?

 ここで会えたのが運命だとしたら

 また、運命だっておこるよ!
 だって、キセキの世代がいるんだから。』

と私が笑えば、
「馬鹿、俺も忘れんじゃねーよ。」と虹村さんに頭を小突かれる。
『忘れる分けないじゃ無いですか、』
と言えば満足そうで。



そして、もう一度深呼吸をして出来るだけ大きく声を出す。



『水色君!!聞こえてる?
 私は撃つから皆のことは絶対帰してね!

 そんで、水色君ももう一度目が覚めたら
 皆のバスケを直接見てよ!

 すっごく良くなったんだから!』



確かに皆、一度は道を反れてしまったけれど
このWCで物凄く良くなったのだから

どうか、中学の時だけで判断してほしくはない。


そんな願いを込めて拳銃をぎゅっと胸で抱き締める。

すると近くにいたさつきちゃんが、コツンと拳を私の拳をに
合わせ

「必ず会えると信じていますから私。」

とぐちゃぐちゃな顔をでにっこりと笑う。
それでも彼女は可愛くて横で

「ワシも忘れられたら寂しいわ。」と拳を今度は
今吉君がコツンとし茶化される。

「全くだ、キセキの世代じゃなくても奇跡くらいなんとか
 よんでやんよ!」
と若松君が近づいてきて若松君も拳をコツンとする。

ここから皆からの、拳コツンリレーが
始まるわけだが先ほどとは違い既に私の涙腺は崩壊しきって

もう、だらしなくもぼろぼろと止められない。

「すす、すみません。でも僕も必ず会えると思っています!」
と桜井君とコツン。

「良い女だな。ほんと。頭上がらねぇよ。」
と諏佐君とコツン。

つかつか、と近寄り
「お前はそんなんじゃ死なねぇ。俺が保証する。」
と火神君とコツン、力が強くて地味に痛いよ。

「当たり前だろダアホ。また会えるじゃねぇ。会うんだ。」
と日向君とコツン。『うん、。』と涙声で答える。

「そうよ!会うの!じゃなきゃ絶対許さないからっ!」
とリコちゃんとコツン。

「こんなときなのに、良い言葉が見当たらないな。
 ななさん信じています。」
と伊月君とコツン。

「そうだな。俺も信じてるよお前と俺らのチームメイトを。」
と木吉君とコツン。

少し離れた所から原君を引っ張って山崎君がこちらに来る。

「難しいこと分かんねぇけど、今あんたと話さないと
 後悔しそうだったら…えーっと頑張れ?」
と山崎君とコツン。

「ザキ引っ張んなし。っと。まあ、気長に待ってやんよーん、」
と軽く原君とコツン。相変わらず素直じゃない。

「お前には助けてもらった。ありがとう。」
と古橋君とコツン。凄くレアなんじゃないかと驚く。

「たまには残虐さも必要だぜ?」
と瀬戸君とコツン。『考えとく』と苦笑い。

「馬鹿だ馬鹿だとは、思っていたがここまでとはな。
 いいか?今回のこと忘れず戻ってこい
 ……なんて言うわけねぇだろ、バァーカ!」
と花宮君とコツン。もう馬鹿って言われてもこわくないもんねっ
と思う。けど、花宮君は照れてるのかそそくさと離れる。
代わりに笠松君がこちらに来る。


「待っています。ここで終わりだなんて
 俺は思っていません。…っ。」
と恥じらう笠松君とコツン。

「そうですよ、まだ俺達出会ったばっかりですからね。」
と小堀君とコツン。

「始めにも言いましたが俺とななさんは
 運命ですから俺も貴女との奇跡を待ちます。」
と森山君とコツン。

「…俺さマジさ運命とかさ信じねぇんだけど
 会えるって思ってる。」
と高尾君とコツンしようとしたら手をぐいっと引っ張られ
「…好きだぜ。」なんて耳元で言うもんで、えっ!と顔を赤くすると
「なんてなっ?」と身体を翻して戻っていく。
最近の子はませてるなぁ。

「最近はあーゆのが流行ってるアルか?」
と劉君とコツンとすると少し劉君は停止し
ん?と思うと再度引っ張られぎゅっとされ
「生きろ、」と、短くしっかりと言う。

「て!劉!…ええと劉が悪い。
 あれだ!あの、俺も奇跡を信じてっから!」
と福井君とコツン。

「ワシも信じとる!諦めは悪い方なんじゃ!」
と岡村君とコツン。


「I believe that I can see you again.
 You're the apple of my eye.」
と氷室君とコツン。
何て言ったのか?と思うと思うもふわりと微笑まれるだけ。
火神君に聞いたら「また会えると信じている。私の大切な人。」
と言う意味らしい。
スマートすぎる氷室君。

「そうね、ななさんがこれだけ頑張っているんだもの。
 私達もその気持ちに答えないといけないわよね?」
と実渕さんは少し憂いを帯びた妖艶な笑みでコツンとする。

「おう!俺もこれで終わりとおもってねーぜ!」
と豪快に根部谷君とコツン。根部谷君もいたい。

「俺も!俺も!これで終りじゃねーよなっ!これからだぜ!」
と葉山君とコツン。

「さっささと行け。それで直ぐに帰ってこい。」
と黛君とコツン。

ふと顔をあげると虹村さんに涙を指ですくわれ
軽くぎゅっと抱き締められる。

「…っ、結局辛い思いをさせちまうな。
 俺もなな、お前を信じてる、
 また必ず会える。その時に俺を頼れよ。」
そう言うと少し距離を取りコツンとさせる。

「そうっス。信じているっスからななっちも
 信じてほしいっス!俺達のキセキを。」

と黄瀬君が拳をコツン合わせたまま動かさず

「たく、だりぃな。待つのは嫌いなんだからよ
 さっささと、来い。」

と今度は青峰君もコツンと拳を合わせる

「お前は充分やってくれている、心配することなど
 ないのだよ。自信を持て。」

と緑間君も同様にコツンと拳を合わせる。

「ななちんいないとさー、調子でないんだよね。」

と紫原君も三人の手にコツンと合わせる。

「僕もななさんと僕達のキセキを信じています。」
と黒子君も皆の拳に自分のを合わせる。

「俺からはもう言うことはなくなってしまったね。
 だか、俺達は絶対だ。
 不可能なんてことはない。」
と赤司君が皆の拳の上に手を置き
それは、円陣を組む姿に近く赤司君は手をふりあげ
おろし皆でおーっ!見たいな感じで手を挙げる。

少し涙も落ちついて

皆には後ろをむいてもらう。

人が一人撃ち抜くところなんて割りとショッキングで
トラウマになると思ったからだ。


中には渋っている人達もいたが『お願い、』と言えば
渋々聞いてくれて。

振り向き様に虹村さんが
「俺はお前ともう一度会えることを知っている。
 一人じゃないからな?」と
囁いてくれて

勇気付けてくれているんだと思う。





皆が、後ろを向いたことを確認し
銃をかまえる。

目を閉じ考えることは皆のこと、自分の世界のこと。


こんな歳でこんなことになるなんて
思ってなかったなと笑みをこぼし引き金を引いたのだった。














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