▽30.








「伊月先輩そこを動かないで下さい。」






それは、先程発見した伊月君が体育館倉庫から
足を出そうとしたときだ。

黒子君が制止の言葉をかける。

一瞬の事で驚きはしたが持ち前の反射神経で
ピタリと止まる所を見ると凄いなと思うも。


「おっ、と。驚いた。いきなりどうしたんだ黒子?」


首を傾げつつも、怒らず止まってあげている。

確かに原作でも怒ったところあんまり、
見たことなかったしな。と思う。

反して虹村さんは呆れつつ
「黒子はいつも突然で、あんま前置きとかしねぇよな昔っから。
 そんなんじゃ、伝わんねーぞ。」

と黒子君にダメ出ししている。


「つい…。」と黒子君は眉を下げる。
虹村さんは仕方なさそうに少し笑い黒子君を見ている。

まるで雰囲気だけでは保護者の様だ。


「わりぃな。俺があんたと同じ様に体育館倉庫から出た後
 そこからゾンビの大群が出てきてよ。

 今回も同じケースかもしれねぇ。」

 
かわりに虹村さんが説明すると、
少し顔を青くする伊月君。


しかし虹村さんと黒子君はわりと落ち着いていて
「ちょっと、動くなよ?」と、言うと
虹村さんがドアの近くに立ち鍵をかけれるように
スタンバイする。

後は、タイミングをみからい伊月君が体育館倉庫から出て
ゾンビが発生する音より速くドアを閉め鍵もかけてしまう。


予想通りガッタンバッタンと音がしだしたと思ったら
次第に体育館倉庫から
だんだん叩く様なけたたましい音が聞こえてくる。

ドアを殴り叩いているようだ。


その音だけでも十分に気味が悪く背筋に寒気が走る。


念のために体育館からも早く出よう。という話になり
なかば、逃げるようにして体育館を出た。



『…っ、あのゾンビ出てこないなか。』


私が息を切らしながら訪ねるも三人は息切れなど
もちろんしていなくて。
伊月君が私の背中を擦ってくれて
息を整わせてくれる。

「大丈夫でしょう。体育館も体育館倉庫も
 わりと丈夫そうでしたし、中からは鍵は開けられない。

 扉を破ってくるのは、もっと無理でしょうし。」

とにっこり笑ってくれている伊月君。
でも、ごめん。

蹴破った人、ここにいるんだ。と
心のなかで突っ込む。



「伊月君先輩…申し上げ難いんですが、
 あの体育館倉庫のドアは蹴破れるみたいです。
 …僕にはとうてい真似できませんが。」


黒子君が言いづらそう伊月君に言うと
これまた伊月君も「嘘だろ?」みたいな顔になり

「あー、、」とばつが悪そうに虹村さんが視線を反らす。


その状況は、なかなか面白くて。


笑ってしまうと「おいこら、」と虹村さんに
怒られてしまったが彼も本気ではないし
気にとめない。


とりあえずは、また廊下を歩きながら
今までの経緯を話していく。

その中で伊月君は普通に虹村さんのことを
感心していて
「黒子、お前んとこの中学の主将は何かしら
 凄いんだな。」と言っていた。

確かに、他校だった彼らには赤司君も虹村さんも
主将である一面しか知り得ない訳で

誰もこんなにキャラが濃いとは思っていないだろう。


『大丈夫伊月君。日向君…確かに濃さでは負けるかもだけど
 誠凛高校は全体的に存在感強いから。』



ぐっと力を込めて私なりに力説するも効果なく
「否定は出ませんが、僕も混ざっているかと思うと
 少し複雑です。」と黒子君。
「いや、存在感は薄い方だがな。」と虹村さん。

やっぱり、同年代の会話って感じがして
とてもなごむ。


しかし、置かれている現状としては何一つとして変わらず
各々溜め息がもれる。


「にしても、この永遠に続いてそうな渡り廊下と
 無数の体育館、、、気がくるいそうだな。」



ぽつりと呟く虹村さん。
皆もそう思うのだろ、困ったような何ともいえない
顔をしている。

『うん。分かってはいたけど
 もうどこにも現実味がないよね。』


渡り廊下以外を歩いてしまったら
どうなってしまうのか。

考えたくもないほど、体育館と渡り廊下以外は薄気味悪く
先が見えない。


「えーと、後は火神と日向だけか?」

少し考えるように。または空気を変えるかの陽に言う伊月君。
それに答えるは黒子君で
虹村さんは体育館の記憶を頼りに二人を思い出している様だった。


「はい。主将は大丈夫だと考えても火神君が
 大人しくしてくれているのが心配です…。」


確かに火神君はじっとしているタイプには見えない。

「思いだした、火神ってあれか。タツヤの。」
と虹村さんも思い出した様だ。

黒子君も伊月君も「そうです。」と言っているあたり
私が探索にいっている間に
異国の地で会った時の話をしたのだろうか。



そんな話をしていると
またもや入れそうな体育館を見つける。

しかし、なんと言うか確かに体育館からは
ダムダムと聞き覚えのあるバウンド音が聞こえていて

入るのを少し躊躇ってしまう。


「ゾンビがバスケでもしてんのか?」
と虹村さんは普通に言っているが
想像すると、怖いと言うよりシュールだ。

いや、シュール過ぎて怖いのか。



黒子君が慎重にゆっくりと警戒しながら体育館のドアを開く。


こちらも何があっても直ぐに対応出きるよう身構える。
当然のごとく今回も皆、拳銃を所持しているからだ。


だが、想像はいつも私達を裏切るもので
体育館にはドリブルをしつつレイアップシュートを決める

日向君がいた。





バスケしている日向。後方の体育館倉庫は締まっている。

普通に考えると、何だか色々と怪しくて
見つけれたことを素直に喜べないし
駆け寄ることもできない。


『えっと、ほんもの?』と、とりあえずは
確認してみるも向こうも考えていることが
通じたのか「まぁ、」とやや気まずそうに肯定する。


すると、黒子君が伊月君の時のように
質問を投げ掛ける。


「…主将、最近髪が伸びてしまったので
 切っていただきたいんですが
 これが終わったら切って頂けますか?」

と、唐突に髪を切ってくれと申し立てるのだ。
なるほど、伊月君の時といい
黒子君なかなかのファインプレーだ。

伊月君もそう思うのか黙っている。

虹村さんは頭にはてなマークが出ているが。


「唐突だな。…まあ別にいいけどよ。
 じゃあ、全部終わったら家来いよ。
 物は揃ってから。」

と日向君は再度バスケットボールをダムダムしながら
答える。
スリーポイントのラインから投げられたボールは
綺麗な弧をかいてゴールのネットに吸い込まれていく。

素直にそのシュートは綺麗だと思った。



「…間違いなく日向だな、」
そう一番始めに笑ったのは付き合いの長い伊月君で
その後に、そうですね。と黒子君が笑ったのだった。

いまだに良く理解していない虹村さんに
日向君の家は床屋なんだよ?と話すと納得するも、

「やっぱチームワークっつうのか、そういう信頼は。
 しかしよ黒子、水色が調べてるってのは
 考えなかったのか?」

と聞いていて
黒子君の見解では

水色君はキセキの世代と無冠の五将については
興味があり知っているだろうが
新設高の誠凛は詳しく知らないだろう。とのこと。

また、日向君も中学時代それなりに才能があったが
無冠の五将、キセキの世代に埋もれていた天才。

げんに一度高校はじめの頃は木吉君が誘うまでバスケから
離れていた訳だし。


「あと、賭けだったんです。
 水色君は一度体育館で霧崎第一の花宮さんのことを
 知っている風に話していて

 彼はあれで一応無冠の五将ですから
 知っているんだと思いました。
 ですが、その後何度か桐皇の今吉さんが話しかけても
 彼は知った風には話さなかったので

 詳しくは調べていないんだと。」


そう思ったらしい。
流石はシックスマン。

言動は抜かりなく見ていると言うことだろう。


「にしても日向ずっと体育館にいたのか?」
という伊月君に
「いや、始めは体育館倉庫で気がついて
 その後あの天窓から抜け出した。」と
天窓を指さす。

その言葉に私は
『日向君!!仲間!!』と思わず日向君の手を握る。

え!?みたいな顔で見てるけど気にしない。
後ろで黒子君とか虹村さんとか伊月君が何だか
呆れているような気もするけど気にしない!

そもそも、ドアを蹴破った虹村さんが一番
すごいんだからねっ!と心うちで思う。

「主将もそこまでだったなんて…。」と黒子が言っている。
伊月君はまあまあ、と宥めながら日向君へ近づく。

「まあ、ともあれ無事良かった。でも何でバスケしてたんだ?」






「あー、体育館倉庫から出たはいいが、、
 その後、体育館自体のドアが開かなくてよ。」


だから、仕方なく遊んでいたとのこと。


にしても、おかしい。
ドアは黒子君が、普通に開けていた。
黒子君も同じことを思っていたようで

「僕が捜し手だからでしょうか…。」
と、少し言い淀んでいて。


『確かにそうかもしれないね。けっこうこの世界
 きっちりしたルールで縛られてるし。』


今まで、黒子君がドアを開けていたから
気にしなかったが
そうかもしれない。


と、考えていたときだった。

既に体育館倉庫からでて体育館に日向君がいたことで
気にしなかったが

またもや体育館からバッタンガッタンと音がし出す。


「やべぇ!ゾンビだ!」
といち早く虹村さんが声をあげる。
「とりあえず体育館倉庫の鍵はかかっているはずなので
 体育館から早く出ましょう!」


黒子君の言葉で皆体育館から出る。
後ろで「スポーツする場所なのにな、ゾンビかよっ!」
と日向君が少し怒っていて
横で伊月君が
「ゾンビがスポーツするポーズ!キタコレっ!」

なんて言うものだから日向君の怒りが倍増し
「伊月、走るな。残れ。そしてやられろ!」


と言った声が響いたのだった。







急いで体育館を出てドアを締める。

とりあえずはこれで安心だと
一息つこうと思った、、、思ったはずだった。
廊下の奥からバタバタと走る音が聞こえる。

一人や二人の足音じゃない
かなりの人数だと皆で顔を合わせた時と



「お!黒子!ちょうど良かった!」


と火神君が走ってくるじゃないか。
しかも。後ろに大人数のゾンビを連れて。




『え、、えええええー!火神君、えええー!!?』

と叫んでしまった。
それはそれは大音量で。

伊月君や日向君は強ばった顔でその異常な状況を見つめていて。

それも、やはり一番始めに状況判断し
声をあげるのは虹村さんだった。
喧嘩という名の場数を、踏んでいるだけはある。



「お前ら!なな!とりあえず走れ!」



強く皆が頷くと一斉に走り出す。
後ろで火神君が「おい!ちょっと待てよ!…です!!」
と叫んでいるけど待てれるわけなく。


「火神君も、走ってください!」と
黒子君はなんとか叫び返していた。

いや、叫んだと言うよう声量ではなかったが。



すると伊月君が閃いたように話す。
「黒子!一応これで全員揃ったんじゃないか!?」

黒子君もその言葉に何か閃いたようで。
「…っ、!!三軍体育館!!」

そう言った黒子君の言葉はそのまま目的を示す言葉となり
暗黙の了解と言うか

おのずと皆、三軍体育館を目指したのだった。

いや、先程出会って経緯を話せていない日向君と
少し後ろで走る火神君には


不思議そうな顔をしていた。


















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