▽29.




黒子君と仲良く手を繋いだままで
渡り廊下を歩く。

引っ張られてばかりだと本当に年上としての威厳も
へったくれりもなくなってしまうので

せめてと思い横に並ぶ。

渡り廊下は先程同様歩いても歩いても廊下と
体育館が連なる不思議な光景だ。

もちろん、体育館ひとつひとつ入れるかの
確認は怠らない。

すると、少し奥の方の体育館でガンガン音が聞こえてくる。
何かを叩くような音。


「ものすごい音がしてますね、あの体育館。」



『…うん。誰か、、何かいるのかもしれないね。』




繋いでいた手を離しゆっくりと体育館へ近づく。
先に黒子君が体育館が開くことを確認し
中を覗き見るとこちらを振り向き

こくりと頷く。


中は大丈夫ということだろう。


おそるおそる体育館のなかへと足を進め入ると
どうやら私が閉じ込められていた場所と同じ

体育館倉庫からバンバン、ガンガンと音が鳴っている。


ゾンビであったことを危惧し
少し倉庫から距離を取る。

声をかけてコミュニケーションをはかろうという
作戦だ。


「あの……っ「 ガンっ!!!!



黒子君が扉に向かって話しかけようとした瞬間
鍵がかかっている扉がガタンと音をたてて

バッターんと倒れる。

ドアはものの見事に枠から外れ
内側は殴ったような、蹴ったような痕で
ボコボコになっている。





私も黒子君も、驚いて立ち尽くしていると
中から聞き覚えのある声が聞こえハッとする。


「っよし。…開いたな。」

と虹村さんが出てて来たのだ。
誰が予測出来ただろうか。


「…僕は夢でも見ているんでしょうか。」




『夢、ぽいけど今見てる光景は夢じゃないね。』




どうしたら、いや、どうやったら
体育館倉庫のドアを蹴破れるというのだろうか。


「お?黒子となな!お前ら無事だったんだな。
 良かった…って、ん?どうした?そんな顔して。」

と心配そうに虹村さんは近寄ってくるが
チガイマス。
違うところで驚いているんです。



さすが昔やんちゃしていただけはある。


すると、私と黒子君がドアのことで驚いていることに
気がついたようで
あー、とばつが悪そうにしている。


「鍵がかかってたんで、ちょっと力付くでなんとかなるかなと
 思ってよ?」

と彼独特の口を尖らす顔。


「僕、始めてみました。扉蹴破る人。」

未だ信じられないと言った顔で虹村さんをみつめている。
虹村さんは、尖らせたまま
「凶暴さで言ったら俺よりタツヤの方が…」と
ゴニョゴニョと何かを言っている。

そうか確かに二人はロサンゼルスで
知り合いになっていたんだ、



とりあえず虹村さんと合流できて良かったと思うもつかの間
虹村さんがいたはずの体育館倉庫から
ガッタンバッタンと
鈍い音がしたあと、うヴっと呻き声が聴こえてくる。



『これ、よろしくないパターンだよね。』



と私が二人を見ると、二人も気づいているようで
頷き合う。

「押し込めておく扉も今はありませんし
 とりあえず体育館からにげましょう。」

と静かに踵を返すと一気に三人でダッシュする。
その音を聞き付けたゾンビ群は
一斉に向かってくるが、こちらの行動が速く
体育館の入り口自体を閉めてしまう。

「何か棒!」と虹村さんに言われ黒子君と虹村さんに
近場にあった木の棒を手渡す。
なれた手つきでスライド式の体育館ドアにつっかえ棒として
棒を差し込み開かないようにする。

だんだんと叩く音は聞こえるが、虹村さんの様に
蹴破ることはできないようだ。

いや、普通は出来ないのだが。



ゾンビが出れないことを確認し

三人で一息つくと
また長い廊下を歩き出す。

歩きながら、黒子君と私があったことを話しながら。




「はぁ?天窓から出ようとして落ちただぁ?」



今すぐ忘れてくれ、確かにそう黒子君に伝えたのに
彼は包み隠さず話してしまい
私は怒られている。理不尽な。


『だって、他に出られるとこなくて。
 虹村さんみたいに蹴破ることなんてできないし。』

そうだ、自分なりの最善策だった…はず。


「ちったぁ自分の立場を考えろっつってんだ。」
と、頭をこつんとされる。

「そうですね。僕も少しわかる気がします。」

まさか、味方だと思っていた黒子君に裏切られ
「え!」と言ってしまう。


「もし、あの時僕があの体育館に気づかなければ、
 天窓から出たあと先程のように

 大量のゾンビに一人襲われていたかもしれません。」




「黒子の言うとおりだ。」と納得する虹村さん。
言っている意味は分かる。
心配してくれていることも分かる。
けど納得はできなくて

『皆が過保護すぎるんだよ?私もなんとかなるよ?』


と言うと、嘘だろみたいな顔で二人がこちらを見ている。
失礼だぞ、おい。

すると、虹村さんが歩きながら私の頭に手を置く。
どうしたのだろうと顔を覗こうとすると
上を向けないよ力を込められる。



「今分からなくても、いつか分かる。
 お前が皆を心配してる様に

 俺や黒子、体育館にいるあいつらだって

 お前の心配してんだよ。」


何を虹村さんが伝えたいのか
分からなくて、

心配される度合いが皆過ぎるんじゃないかと思うが
それと、これと、関係があると言うのだろうか。

虹村さんの表情は見えないが
横から見えた黒子君の顔は

辛そうな、そんな顔だった。





それ以上聞ける雰囲気ではなく、
そのまま歩いていると


しばらく歩いた所にポツリと水場かあった。

良く部活動生が水を飲んだり青春の汗を流したりする
あの場所だ。
「汗は流しますが青春かどうかまでは分かりません。」

と真顔で突っ込んでくる黒子君は、無視しよう。



「にしても、気味わりぃくらい体育館しか
 なかったのにな。」


虹村さんも不信に思いつつ近づくと蛇口を捻る。
水は出るようだ。
にしても懐かしいな。
体育館や学校自体が懐かしいが
ゆっくりと見れる状況ではなかったし。

いや、今もなのだが。

屈んで見ると低いコンクリートの所にテツ、俺最強と
削られているような形で文字が書かれている。

にしても「テツ、俺最強…?」なんとも
端的というか、なんだか恋する少女の相合い傘のようだ。

ふと口にすると黒子君が驚いて此方にとんでくる。


『あ、これ黒子君のこと?』



「……はい、正式には青峰君が勝手に書いたんですが
 三軍体育館で居残り練習したあと
 ふざけあって彼がここに落書きを。」


公共物に落書きは良い子は真似しちゃいけません。
まあ、たが学生時期には良くあることか。
机に落書きとか、図書室にこっそり相合い傘書くとか。

え?、なかった?あったよ私は。



「これがここにあるということは
 あそこが三軍体育館ですね。」といい黒子君は
開けにいくも開かない。

「全員集めてこいってことか。」と虹村さんは
溜めたいきをつけいている。
確かに、なんともめんどくさいシステムだ。



水場を、戻ってくる際の目印にし
また歩き出す。

「今回は、天窓から出てこようとする人も
 ドアを蹴破る人もいなく静かですね…。」

さらっと毒を吐く黒子君。
「黒子てめぇ、」と虹村さんは顔をひきつらせてはいるが
慣れているのか怒りはしない。

そんなこんなしながら、開いている体育館を見つけ
警戒しつつ入る。


黒子君じゃないが確かに静かだ。


辺りを見渡すもとりあえずは、誰もいない。

私の時と虹村さんの時を合わせて
体育館倉庫の可能性後が濃厚なため、
前回は失敗してしまった距離を取りつつ

コミュニケーションをはかろうという作戦を開始しする。



『あの!誰かいますかー?』


静かな体育館ってけっこう響くと思うんだ。

すると、ガタンと音がなり少し緊張して後ずさる。
「ななさん、後ろへ」と黒子君が前に出てきて

私の後ろ側に虹村さんが立つ。

完全に秀徳の時の二の舞にならぬよう配慮してくれているのだと
直ぐに分かる。

…まあ、あれだけ怒ってたくらいだし。


「その声はななさん?俺です!伊月です!
 …無事で良かった。」

伊月君の声同時にガンと叩く音が聞こえる。
良かったと、駆け寄ろうとするも
駄目だと小声で虹村さんに止められる。

黒子君も、小さく頷くと体育館倉庫に向かって話し出す。

「伊月先輩、パンダの餌は?」

と、おもむろに問いかける。

すると伊月君は


「パンだ!!」と勢い良く叫んだ。






体育館は静寂に包まれる。







「……間違いなく伊月先輩ですね。」




『間違ないね、』

と納得しあう私と黒子君。


「ちょっと意味わかんねぇ。」


と、虹村さんだけ顔をひきつらせていた。 




とりあえず倉庫から出してあげないとと思い
伊月君と確認した所でドアと開けようと試みる。

黒子君いわく体育館内から鍵を開けるタイプで
中からは困難でもこちら側からなら
簡単だそうで。

なら私、天窓から出なくとも虹村さんみたいに
ガンガンしてれば黒子君に開けてもらえたかもしれない。

痛い思いしたのにな。




鍵を、開けると安堵する伊月君がいて
「流石黒子!ナイスパス!」と
満面の笑みだった。

黒子君は「伊月先輩が伊月先輩で良かったです。」と
分かる人から聞いたら若干失礼なことを
言っていた。



「まあ、俺には良く分からないが
 お前んとこのチームワークってやつか?」

と、まだ少し理解していない虹村さんに

『チームワークなんじゃないかな?』

と皆で笑いあった。













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