▽28.








「つか、意外と距離あんだな。」




一軍の体育館を、出てから少し歩いた所で
日向君が後ろをチラリと振りむく。

今回はかなりざっくばらんとした並びで
火神君、黒子君、虹村さん、うしろに
私、日向君、伊月君、だ。



『そうだね。地図で見た感じたともっと近かった様な
 気もするけど…帝光中が大きいだけかな?』




「地図持ってくれば良かったな、です。」


今のところ何かに襲われたりと怪しい雰囲気もなく
わいわいと穏やかに進んでいた、、はずだった。



しかし、前の二人…虹村さんと黒子が何故か
神妙な顔つきで黙っていて

何かを確認するように虹村さんが口を開く。


「なあ、黒子…おかしくないか?」  


虹村さんの言葉に黒子君以外は、え?とした顔になる。



「やはり、気づいていたんですね。」


黒子君は納得しているが

「おいおいおい、黒子、どうゆうことだ?」
と焦る日向君。
何だか火神君も顔色が青くなっている様な気がする。

「いや、少しおかしいなと思ってはいたんですが
 さっきから僕達、同じ廊下を歩いている様な気がするんです。」


同じところ、、、とは言うが景色は一緒なので
私にはよくわからない。



「やっぱりな。俺もそうだと思ったぜ。
 卒業してから二年たってっから自信がなかったが

 こんな遠くなかったはずだ。」



黒子君の言葉に虹村さんが肯定の言葉をのべ
いよいよ火神君が目に見えるくらい焦りだす。



「お、おい、こう、ゾンビとかそうゆうのが
 出てくるんじねぇーのかよ!」



あわてふためく火神君。



「火神君うるさいです。耳元で叫ばないで下さい。」と
黒子君はいつもと変わらない。
もともと、感情を表に出すタイプじゃないしね。


『火神君、怖いの?』

ちょっと意地悪かなと、思いつつ訪ねると
びくっっ!
と素敵なオーバーリアクションをとってくれる火神君。


「こここ、怖い訳ねぇだろ!ただ、姿が見えない系は嫌っつーか
 気持ち悪いっつーか……ああ!!いろいろあんだよ、、です!」

最後頭をぐしゃぐしゃにし、なかば頭をぐわんぐわん
している火神君に「それ、怖いって事だよな。」と
冷静に伊月君が突っ込む。


もちろん火神君は「ちげーよっ!」と否定するも
「はいはい。」と伊月君にあしらわれている。


『ふふ、火神君分かりやすいよね…って日向君?』


ふと横の日向君に目をやると
ここにも一人怖がっている子を見つけました。


「え?あ、ああ。そ、そうだな。はは、。」


会話が成り立たないほど怖いのか、心がここに有らず。

そんな様子を見ていた虹村さんが

「お前んとこのチーム、大変そうだな。」と
黒子君を憐れんでおり「まぁ…。」と
黒子君も黒子君で否定しない。

いいのか、日向君、キャプテンとして!
言われているよ!


でも、やはりこのメンバーだと少しわいわいとしてしまう
傾向があるようで暖かい空気が流れる。



しかし、それを冷たくさせる始まりの音は
いつだって突然やって来るものだ。









キーンコーンカーンコーン。









《…ようこそ、ラストステージへ。》








突然のチャイムにじゃれ合うのを辞め 
かわりに緊張の空気が漂う。




《最後は黒子、か。なんの因縁だろうね。

 僕と同じだった君が最後とは。》



同じだった。三軍だったときのことだろうか?



「確かに僕は三軍で赤司君に才能を見出だしてもらい
 一軍へ昇格しました。

 けど、それでも努力を怠った事はありませんし
 君のように誰かを傷つける、こんなやり方はしません!」


怒鳴る訳でもなく、取り乱す訳でもなく、

それでも強く言いきる黒子君に自ずと皆からは笑みが溢れる。


「黒子の言うとおりだぜ!こんなチマチマした
 やり方しやがって!出てきやがれ!!」


と、反対に火神君は怒鳴る。




《ふふふふ、あはははははは。

 全く、いったい何を言うかと思えば僕の批判かい?

 残念だけど、もう僕はそんな次元で生きて物を考えてはいない。

 じゃあ、ラストステージ頑張ってくれ。》





そう言うとブチりとマイクが切られる。

前々から思っていたけれど
やはり価値観、世界観、感受性がもうどこか
私たちとは違うんだと実感する。

とりあえず、チャイムが鳴ったからには何かが起きるはずだと
声をかける。も状況はすでに芳しくない。


『みんな、きをつけ…て…てええええええ!』



先程まではどうってことなかった廊下。
黒幕こと水色君のマイクが切れたとたん濃い霧が立ちこめる。


前の人がぼやけるほど。

とりあえずこのままではいけないと近場の人を掴もうと
てを伸ばすも空をつかむ。

誰かに「ななっ!」と名前を呼ばれた気もするが
目の前が真っ白になってしまい、最早確認すらできない。




とりあえず無闇に動くのは良くないと思いじっとしていると
だんだんと霧が晴れていく。

そこで、驚いたのが渡り廊下を歩いていたのに

私はどこかの体育館…の倉庫?の様なところにいたのだ。
お馴染みのマットや跳び箱などがおいてあるから
まず、間違いないだろう。



『んー、、開かないなぁ。』

とりあえず出ないとと思いガタガタと扉をするも
鍵がかかっているようで開かない。

扉に耳をあてるも静かであることを考えると
皆といた体育館ではないと思う。


『一人かぁ、、嫌だなぁ。』
独り言?危ない人じゃないよ?

モソモソと、周りを物色する。

因みに天窓があり、そこから入る小さな光でなんとか
辺りが見える状況で

『ん?これ…。』

マットの隙間に最初はゴミかと思った紙を拾うと
何かの雑誌の切れ端のようだ。



『桐皇と探索行ったときのに似てる…。』


これは一応何かの手がかりかも
と思い持っておこうとポケットに入れる。

他に怪しいものはなさそうだ。


よし!と自分に再度渇を入れ先程見つけた天窓を見つめる。
小さいけど私一人くらいなら出れそうだ。

跳び箱台の一部を崩し手をつく一番上の部分を
足元に置く。

『ふぅ。これでっ、登れるかなぁ。』



ふうふう言いながら物を使い何とか天窓へ
近づける、

それをみっともなく、よじよじと登れば
天窓に触れられる所までくる、

手を伸ばしスライド式の窓を開ける。

うん、鍵がかかっていなくて良かった。


無い筋肉をフル始動させ身を乗り出す。
なんとか、、、いけそうだ。

ひょこっと身体を出すと体育館に繋がっていて
予想通り誰もいない。


『降りる時のこと、考えてなかったな…。』
と、少し後悔しつつしかし降りない訳にはいかないので

意を決して、えいっと飛び降りると
ビターんと大きな音をたて落ちる私。

着地はもちろんのこと失敗だ。

痛みに悶えていると「…ななさん?」と
聞き覚えのある声が聞こえる。


はっと振り替えると、そこには黒子君がいて。



「凄い落ちかたしてましたが…大丈夫ですか?」

心配そうに手を貸してくれる黒子君。


『だ、大丈夫。っていつからいたの?』



「霧が濃くなってから直ぐに霧が晴れて気づいたら
 渡り廊下に僕一人になってしまい
 どうしようかと思った所にガタガタと物音がしていたので

 この体育館に入ったんです。

 そしたら、ななさんが見事に……落ちてました。」



なるほど、全部見ていたんですね。えぇ。



『うん、わかった。今すぐ忘れて。』


恥ずかしがる私に黒子君はくすりと笑う。
楽しがってるなぁ?と思い少し拗ねるも黒子君は気にしていない。



「ですが、困りましたね。」

と少し黒子君が考え出す。
確かに現状と黒子君の話しを、合わせると
皆とバラバラにされたと言うことか。
 

『たしか、今回宝探し…だったよね?
 皆が、、、宝ってこと?』



何とかを探せ!みたいな感じで皆を探す…ということか。


「その可能性は高いです。となると元の位置から
 動いていない僕が探し手、、と言うことでしょうか。」



『うーん。そうかも、、水色君キセキの世代には
 ただならぬ思い入れがありそうだし。』



ただ心配なのは残りのメンバーが、
命の危機にあっていないか
というところだ。




「そうと決まれば皆を探しに行きましょう。」

と黒子君が手を差し出す。

『うん。』と握手をするように手を握ると
そのまま握られ黒子君が、歩き出す。

ん?手を繋いだままで行くのかい?と思えば
前を向いて歩きながら


「ななさんを一番始めに見つけられて良かったです。」

と少し手に力を込める黒子君に
私は自分の顔に熱が集まるを必死で隠すも

ばれているんだろうなと黙って後に続いた。



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