▽26.




息が落ち着くまで高尾君がずっと背中を擦ってくれていて
正直安心した。


水の中は想像以上に冷たく
苦しかった。

そうこうしているうちに水はだんだんと引いていき

残りのメンバーもプール内に降りてくる。



『高尾君ありがとう。だいぶ落ち着いてきたよ。』

と笑いかけると「どーいたしまして?」と
満足そうに笑ってくれて
二人で微笑み合う。



近づいてきた皆も口々に大丈夫か?と声をかけてくれる。


心配ばかりかけさせて
申し訳なくなるも宮地君に「甘えとけ、」と
言われてしまう。

申し訳なさがそんなに顔に出ていただろうか?



「とりあえず上に上がるのだよ。」と緑間君に言われて
立ち上がるも少しふらついてしまう。

いけないと思い両足に力を入れるも
全くもって力が入らない。

少し水の中でゾンビと暴れすぎたか?と
反省するも時既に遅し…とはこの事だ。


すると、緑間君がぐっと腕を掴んでくれる。


「俺の伸長では肩は貸してやれないのだよ。」

ぶっきらぼうでは、
あるが彼なりに心配してくれているのだろう。

しかし、確かに彼の伸長では肩に腕を回した瞬間
私の身体ごと浮いてしまいそうだ。


プールの端まで来ると高尾君が
「真ちゃん、ちょーっと待って。…っしょ。」と
先に上に上がる。
上がったあとに下に居た私達にほらっと手を伸ばす。


何かを察したように緑間君は私をひょいと持ち上げ
高尾君へと渡される。


『みっ、緑間君!?重たい、重たいよ!!?』

焦る私は抵抗の言葉をあげるが
「鍛えているから問題ないのだよ。」
と、なんともまあ、緑間君らしい返答が返ってきて
私の抵抗の言葉は呆気なく却下された。


「真ちゃん、もっとさぁー。」と言いながら
高尾君は持ち上げられた私を受けとる。


「まあ、緑間らしいがな。」
そう言いながら笑う大坪君、

大坪君は癒し系だなぁと、こちらも笑みがこぼれてしまう。




完全に水が引いてしまったプールの真ん中
一番量の深い所に宝箱がポツンとあった。

ここで開けることもできるが

びしょびしょになってしまっていたため
とりあえず宝箱ごと体育館へ戻ることとする。

皆で歩いていこうとしたとき宮地君が
私の前にかがむ。
「ほら、」と背中を向けている所を見ると

背負う。と言うことだろうか。


『え!いいよ!服濡れてるし、何回も言うけど重いし!』


ぶんぶんと手をふる。

見かねた緑間君が「仕方のないやつなのだよ。」と
ジャージの上着を脱ぐとほら、と私に差し出す。

「黒子のを1回脱げ。」


そう、何気なく緑間君は言ったのだろうが
その言葉に、ぶっ!!と残りの四人は吹き出し
顔を赤らめている。

緑間君は何かおかしな事言ったか?みたい顔をしていて

私は本当に天然なんだなと思い
笑ってしまう。

まあ、年下相手に恥じらう事もないかと
一度黒子君の
ジャージを脱ぎ、
できるだけ水気が無くなるよう強く握り絞る。


「ちょっ、ななさん!!」


と高尾君は慌てていたが『大丈夫だよ、』と言うと
「いや、そうゆう大丈夫じゃねぇっす!」と今度は返される。

高校生と言っても、まだまだ初々しいなぁと
ほほえましくなる。


バサッと絞り終わったジャージの皺を伸ばす。
先ほどよりマシにはなったが
やはりまだ湿っていて。


いまだ屈んで硬直している宮地君見るあたり
おぶって行く気なのだろ。

このままだと宮地君も濡れちゃうしな、と
緑間君の好意に甘えることしようと緑間君を見ると
私にジャージを差し出した形で固まっていて

『緑間くーん?』と手を顔の前で振ると
はっと正気を取り戻し、物言う前に己のジャージを
私に押し付ける。

『ぶっ!』といきなりの事に変な声が出る。
前も見えやしない。

「し、真ちゃん!やべっ…マジうける!」
と、高尾君の笑い声が聞こえるとバシンと
頭を叩くような音も同時に聞こえる。

ごそごそと、緑間君のジャージに手を通し
『ありがとう、借りるね。』と言おうと顔を上げると
真っ赤色の顔をした緑間君と目が合う。


もしかして照れて、、いたのだろうか?
自分の言葉と、その結果に。


ぷいっと顔を反らされてしまい追求は出来なくて
でも、可愛いところもあるんだなぁと
笑ってしまう。


すると、高尾君が頭を擦りながら
「ななさん、それエロくね?」と言われて
自分を見ると、やはりと言うか
緑間君のジャージは大きく下を、履いていないようにも

……見えなくは、ない。


『…そうかな?』と面と向かって言われ
少し恥ずかしくなってしまう。
その様子を見た木村君が
「宮地やっぱり戻ったらそっこうで軽トラ貸すわ。」
と言っており「頼んだ、木村。」と目配りしていた。




「え、悪いの俺っすか?
 元を辿どれば真ちゃんが…「高尾おおおおお!」


と緑間君が、いきなり叫ぶものだから
「仕方ないやつらだな。」と笑う大坪君と
一緒にわらったのだった。












宮地君におぶってもらう形で体育館へと帰る。
宝箱は木村君が持っているので問題ない。


『ごめんね。ありがとう。重くない?』と道中
宮地君に確認するも「甘えろ、つっただろーが。」と
逆に怒られてしまう。

横で大坪君が「照れ隠しで怒るところは宮地の悪い癖だな。」
と豪快に笑っていて「うっせっ。」と照れいた。
なんとも可愛い。

みんな、可愛いなぁと声を殺し笑うと
背負っていた宮地君にはバレてしまい
「おいこら、笑うな。」と言われて更に笑ってしまったのは

仕方ない。


体育館前まで行くと
「おい、高尾開けろ、」と両手が塞がっていた宮地君は
顎ちょいっとし、ドアを指す。

「へいへい。」と言いながらも開けてくれる彼は
本当に優しい。

『みんな、優しいなー。』

と、誰に言うわけでもなく呟いたのを
緑間君は聞き逃さなかったようで



「…別に誰にでもという訳ではないのだよ。」




と、、言い残し我先にと体育館へ入る。
『え?、』と聞き直してしまうも
誰一人として否定せず体育館へと次々入っていく。


最後に残された私と宮地君。


「ま、そうゆうのとだな。」と
宮地君が言い体育館へと入った。









▽▲






まず、大変だったのは私が宮地君に背負われていることに驚き
また、私と高尾君が濡れていたことに驚いていた。

とりあえずこのままではいけないと

女子組に更衣室へとずるずると引っ張られて行く。


『あの、これ、み、緑間君のジャージ…』と
抵抗するも、だからどうした?と言わんばかりの
二人の顔に何も言えなかった。

ただ、体育館のほうで緑間君の前に仁王立ちしている
虹村さんが見えて心の中で緑間君の心中を察した。




所変わって更衣室、
私の前にもピンク美女が仁王立ちしております。


「いいですか!?ななさん!?女性たるもの
 自分の身体を大切にしなきゃ駄目です!!」

とげきおこだ、


「そうですよ?もう、傷も濡らして!」

と、リコちゃんも怒っている。



『か、返す言葉もございません。』



「もうっ!…でもななさんが無事で良かった。」
と怒った顔からふにゃりと笑う、さつきちゃんの笑顔に
うっと、心がうたれる。


私の肩の治療を行ってくれているリコちゃんも
笑っているような気がする。


「はいっ!ななさんできましたよ?
 あとは、着るものですけどとりあえずは、
 このまま緑間君のを借りて黒子君のを干しときますね。」

と余ってあるハンガーにかける。


『何から何までごめんね?』



あれよこれよと、色々してくれるリコちゃんと
さつきちゃんに申し訳なく頭垂れるも

ぺしん、と頭を軽くリコちゃんにはたかれる。


はたかれっぱなしだな、私。




「こうゆうときは、ありがとう、、ですよ?」


と言うリコちゃんにさつきちゃんも力強く頷き
3人で笑い合う。



こうゆう時間は大切だと思う。


ホクホクした気持ちで体育館へ戻ると
緑間君が体育館でのびていて
紫原君、黄瀬君、青峰君、黒子君はふるふる
震えているようにも見えなくは、、、ない。


「ちょっと、みどりん!?」とさつきちゃんが
駆け寄る、
私はリコちゃんに連れられるまま誠凛の方へ行き
すとんと座る。


『黒子君あれ。どうしたの?』


とりあえず状況確認をするも黒子君の、心ここに有らずで



「…主将の正拳が緑間君へ落ちました。」








『「え?」』と
思わず私とリコちゃんが聞き返す。

どうやら、更衣室でホクホクしている間に
今回の探索の話を共有していたようで。

その内容に納得が行かなかった虹村さんが
緑間君を怒った。というわけだ。


なるほど、こりゃ、あとで私も怒られるかもと
虹村さんの方を見ると

足元で倒れる緑間君を揺さぶるさつきちゃんに

「全く相変わらずてが早いね、シュウは。」と
何故か氷室君が止めに入っていた。












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