▽23.





《随分と素性がばれてしまったね。

 仕方ない、、な。》

とラスボス…こと水色君が話し出す。





「水色、お前いい加減にしろよ。」



虹村さんは私の前まで来ると水色君に対して
怒っている。
しかし、なんと言うか皆の怒りかたとは少し違い

主将、、、っぽいと言うのか。

親っぽいと言うのか。



《まさか、主将が僕のことを覚えていたなんて
 思いもしませんでした。

 スペシャルアイテムとして貴方に少し
 情報を与えようと話しましたが

 …まさか、名前までバレてしまうとは。》



怒ることと小馬鹿にする、それ以外の感情を
あまり見せることのなかった水色君は

珍しく後悔しているようなの声だった。



「まあな。
 こんな世界に引っ張り込まれるとは
 思ってなかったが…。
 俺も手ぶらじゃ来ねぇよ、こんなところ。」


と口を尖らす彼はイカツイ、、可愛い。





『水色…君?だっけ?
 どうして君はこんなことしようと思ったの?』




思わず出た言葉に、周りの皆は驚き心配してくれる。

「ちょっとななっち!危ないっス!」

と黄瀬君が声をあげこちらに近づこうと
来てくれるも
笠松君がそれを制止する、
「ななさんも子供じゃねぇんだ。お前もしっかりしろ。」


どうやら、笠松君は心配してくれているが
信じてもいてくれていて
二人に対して『ありがとう。』と笑っておく。



《どうして…?貴女には分からないさ。

 でも、もう終盤だからね。
 理由くらいは、すぐに分かるだろう。

 貴女には最後まで盛り上げて頂きたいしね。》



雰囲気的にマイクを切ろうとする水色君に
黒子君が叫ぶ。



「待ってください!水色君!
 あんなに努力家だった君がどうして僕達を!」



悲しみと苦しみと、そんな感情を含ませた黒子君の声に
水色君は
《後戻りはできないんだよ、黒子。》

とマイクを切ってしまう。 


少し静まりかえった体育館。
皆、思い思いの気持ちがあるのかもしれない。



しかし、先程水色君に言われた言葉が頭から離れない。


貴女には分からない、か。

確かに彼の気持ちもここにいる彼らの気持ちも私には
到底、理解できないのかも知れない。

各校と探索に行き、優しい彼らに心を許し
いつのまにか一体感、という仲間意識的なものが
自分の中にできあがっていたが

所詮自分は生きる場所の違う人間だと

そう切り捨てられた様な気分になり正直かなり落ち込む。


すると、虹村さんが正面に立ち手を私の頭の後ろに
手を回すと
そのままぐっと虹村さんの胸板へと押し付けられる。


もちろん、皆いる体育館で。

でも、悶々と悩んでいた私は皆がいるからだとか
そういうことを考える暇もなく
頭を撫でられる優しい手に
目頭が熱くなり涙がこぼれそうになる。




「今まで大変だっただろ?悪かった。
 来るのが遅くなっちまったな。

 必ず俺等が水色ぶん殴って元に戻してやる。
 だから一人で思い詰めんじゃねぇ。

 守ってやる。」


優しい虹村さんの声に行動についに涙腺は崩壊し
ゆっくりとでも確かに涙を流し泣いてしまった。



『ず、、ずるいな。虹村さんは。』


少し私と距離をあけると虹村さんは
笑顔でこちらを見ていて
己の袖口でぐしぐしと私の顔を拭ってくれる。

リコちゃんやさつきちゃん、女の子メンバーが
心配そうにこちらに駆け寄る。


「ななさん、あんなの気にすることないわ!」
とリコちゃんが。

「そうです!皆で守りますからっ!」
とさつきちゃん。




『ふふ、ありがとう。歳上がこんな頼りないなんて
 情けないね、大丈夫!私も皆を守るよ!』

と意気込むと二人から笑顔が溢れる。
するとリコちゃんがここぞとばかりに愚痴り出す。


「そもそも、他人の気持ちなんて分かるわけないじゃない。
 こっちも分からないし、あっちもこっちのこと
 分かるわけないでしょうに。」

と怒っていて慌てて日向君が止めに近寄る。


「止めとけって、カントク!こっちの声聞こえてんかも
 しんねーだぞ!」

さつきちゃんは、あはははー、と苦笑いしている。



「だって、日向君!考えたら腹立たない?
 キセキの世代狙いなら私達いらないじゃない!

 てことは、私達だって巻き込まれたようなものよ!」


と怒りは増すばかり。


「そうかも。」と日向君は納得してしまいそうになったが
「せっかくWC のお祝いにご馳走作ろうと思ったのに。」
と言うリコちゃんに日向君は顔を青ざめて

「いや?、部員をこんな危ないところに
 放っておけねーだろ?カントクとして!さ!」


と力説しており「それもそうね。」と納得していた。

「……お前のところの監督凄いな。」と
虹村さんは若干引いていて黒子君が「はい。」と
答えていた。フォローがないところがまた黒子君らしい。





▽▲







所変わって体育館、誠凛組とは逆方向、秀徳組。


「ねー、真ちゃんとこの元主将なかなかやるね。」


はーっと感心した様に俺が言うと
真ちゃんはちらりとななさんの方をみる。



「そもそも、虹村さんは真面目で
 厳しい人でありながらも、考えるよりも身体が先に
 でてしまう。そうゆう人なのだよ。」

だから、深い意味はないだろう。
良くあることだと真ちゃんは言いたげで
それにしたって、いきなりぎゅーとか勇気いんぜ?

まさか、真ちゃんみたく超がつく天然か?と思うも
そんな感じはしねぇーしな。

むしろ、こう、殴ってきた人は数知れず!
みたいな雰囲気だしなーと、考えていると


「しかし、それを差し引いたとしても
 彼女を大切にしていることは
 俺にでも分かるがな。 」

と真ちゃんはそっぽ向いてしまった。

なんだ真ちゃんヤキモチ妬いてんじゃん、と
思いにへらと笑みが出てしまうが、隠せない。


そんな、俺に気がついたのか真ちゃんは 
物凄く嫌そうな顔をして
「貴様も人のこと言えない様な顔をしているのだよ。」と

言われてしまい

あーそうか、俺も妬いてたのかもっと思い
もう一度ななさんを見る。

俺が笑顔にしたかった、、、?とか


なんか、俺ださくね?
ほんと、またまだ俺は餓鬼だなぁーと思い頭をかいた。









▽▲








所戻り、誠凛組と虹村さんとさつきちゃんとで
わいわいしていて
すっかり涙も引っ込んでしまった。


「ななさん、聞いてくださいよ!」

とさつきちゃんがうきうきしていて

「虹村さんったら目が覚めて話を聞いたあと
 ななさんのこと心配して体育館飛び出そうと
 してたんですよ!!」



おお…女子トークをするかのように、うきうきしているが
そっか、そんな心配してくれたのかと思うと
木吉君が「確かにあれはすごかったな!」と笑っていて

虹村さんは「ま、まあ。」と少し居心地が悪そうに
頭をガシガシしていた。


「でも、出られませんでしたよね?」と
伊月君が、少し気になるような事を言う。

『出られなかった?』


伊月君の代わりに日向君がこたえる


「ああ、なんて言うか透明な壁の様なものがあって
 虹村さんだけ出られないようになってたんす。

 皆で話した結果、あくまでも人ではなくアイテムとして
 
 この場に居合わせているから
 自分からはでられないんじゃないかって。」



『なるほど…確かにそう言われれば
 理にかなってる気はするけど

 だったら誰かが虹村さんを連れ出せば良いってこと?』


「まあ、その可能性が高いっすね。」



なるほど。やはり、かなりしっかりしたルールで
縛られているようだ。



『虹村さん、』


私が虹村さんを呼ぶと、ん?と虹村さんは
こちらを見て「どうした?」と聞く。



『私の知らないところで心配してくれてありがとう。』

と、微笑めば
少し照れ臭そうにおう。とかえされる。
しかし、そこには少し余裕さも感じられ大人だなっと

思った。









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