▽22.



帰り道は今回珍しく安全であった。

何かに追いかけられることもなく、
来た道を戻る。

問題だったのは

閉められていた防災用のシャッターは
上がっていなかったこと。

めんどくさがった瀬戸君により窓から出る。という
強引な帰り方ではあったが採用された。


大きな理由として、先程のゾンビとの逆鬼ごっこのおかげで
原君が転んで少し身体を傷めたからだ。


それに急いで帰ることに誰も反対はしなかった。




体育館に返ると何やら、わいわいと騒いでいる様な
声がし花宮君が一旦体育館入り口の前で立ち止まる。




『花宮君どうしたの?入らないの?』と
声をかけるも何か渋っていて

すると、原君が山崎君の背中ぐいぐい押して前に進み
先に体育館へ入ろうとする。

「おい!ちょっと、押すなよ!っておい!」
と抗議する山崎君は見事に無視されていて
少し可哀想にならなくもない。



「花宮こうゆう雰囲気の中入るの苦手だもんねー
 つーことで、ザキが先に入りまーす。」と
原君は山崎君を体育館に押し投げる。

花宮君はお礼こそは言わなかったが
黙ってそのあとに続くところをみると

本当に苦手なのかな?とおもってしまう。





皆の後を追い体育館に入ると
探索に行く前まで気絶していた虹村さんが起きていて
彼を囲むように
皆で話をしていたようだ。

霧崎第一の皆とその輪に近づくと

もちろん気がついてくれる訳だけども

予想外、、、と言うか驚くべきことが起きる。




こう、いつもなら開口一番に元気な黄瀬君あたりが
お帰りとしっぽ…いやいや
笑顔を振り撒いてくれるはず、なのだが。


一番オーバーリアクションをしてくれたのは
まさかの起きたばかりの虹村さんで


「……なな!」と輪をかき分け
ずんずんと近寄ると肩に手を起き念入りに怪我がないか
見ているようだった。



『に、虹村さん?』と
彼の意図が読めずとりあえず名前を呼ぶも返事はない。

変わりに来たのは質問の嵐。



「おい、なな怪我はねぇか?

 いや違うな、怪我したことは聞いた。
 もう、痛くねぇか?無理してないだろうな。

 霧崎第一…だったか?
 さっきの放送だと随分ヤバそうだったが
 問題ねぇな?」


虹村さんは置いてある手に力をこめる。

この様子に呆気にとられているのは私だけではなく
私も、近くにいた霧崎第一も、もちろんキセキの世代も
呆気にとられている。




『大丈夫。』そう私が答える前に花宮君が答える。




「ふはっ、誰と一緒に行ったとおもってやがる。
 怪我させる訳ねぇだろ。

 つか、お前虹村修造だろ?
 なんで、こいつのこと知ってる。」




ピリッとした雰囲気を露にする花宮君。




「お前、悪童の花宮か。
 なるほどな、いいオーラ出すぜ全く。

 わりぃが内容はおおかた赤司に話してある。
 後であいつにでも聞いてくれ。」


と、赤司君の方を顎でくいっと示す。
赤司君は赤司君で仕方ないですね、と言った

溜め息をこぼしていた。






『え!私には??!』


と、私も赤司君の方を見ると
少し困っているような顔をしていた。



「悪い。まだ、はっきりとは分からねぇんだ。
 俺と黒幕とで話してた内容での憶測でな。

 ま、でもそのうち分かんだろうよ。」

と虹村さんに頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。



「うしっ!改めて虹村修造だ。よろしくな?」


はっきりとした答えがもらえずヤキモキするも
にかっと笑われてしまえば
それ以上は踏み込めず
『秋山ななです。こちらこそ!』
と挨拶を交わしたのだった。




虹村さんと私と霧崎第一というカオスな状態で
皆の輪に戻る。



探索の結果報告だ。



「まあ、先ずはそっちの話から聞こか。」

やはり、と言うか花宮君に素直に物を言わせられる
唯一の存在であろう今吉君が切り出す。



物凄く嫌そうな顔を花宮君はするが
それでもちゃんと話す姿は後輩だった時の彼を感じさせる。


まず、今回の鬼ごっこのこと。
あと、黒幕と話したことで霧崎第一が
特段嫌われていると言うこと。

しかし、あくまでメインはキセキの世代だろうと
話していた。


あとは、今回鬼ごっこと言うことで恐らく
ゾンビには逃げることと襲うこと

相反する役目がプログラミングされており

結果としては全く逃げず襲い掛かってきたのだが。
しかし、その内容をふくめ
もしかすると設定した内容にも優先順位があるのかもしれない
と、花宮君は言っていた。



そこまで私は気づけなかったなぁ。




「なるほどなぁ。優先順位かぁ。」

と福井君が納得していて「どうしたアル?」と
横の劉君が聞いている。


「いや、始めにさ氷室が言ってたじゃん?
 えーっと、、反する設定もつくんなきゃいけなかったーとか。」



「確かに言っていたアルね。ラスボスって奴も
 致し方なくと肯定していたアル。」




「おー、そんで俺ゲームとか、まあまあするからさ
 こう…なんか違和感感じるんだよな。」


福井君は考える姿でうーん、と唸る。


「違和感?ですか?」


珍しく伊月君がずいっと前に出てくる。


「ああ、全体的に俺達に有利なんじゃないかなって。」




有利?自分のことでいっぱいいっぱいで
そんなこと考える余裕が無かったが…そうだろうか?


「いや!?俺等ぁ、殺させそうになったけど!」

とすぐに山崎君は抗議する。
しかし、伊月君はどこか納得していて。

「いや、でも確かに福井さんの言う通りかもしれない。

 確かに霧崎第一は特別厳しいものだったかもしれないが
 あとは、全てにおいて必ず倒し方、逃げ道が
 用意されているし
 なにより体育館と言う安全な場所を用意されているのは

 何より俺達には有利じゃないだろうか。」


確かに黒幕さんの話だと霧崎第一のことは特別悪意が
強そうだった。
ふむ。と考えている伊月君の後ろから
黒子君がにゅっとでてくる。


「そのことなんですが。」




「うわっ!黒子!おどかすなよ…。」と
恒例のことながら伊月君は驚いていて。




「すみません。
 あの、その事なんですが僕にも少し思うところがあって

 あの、僕ラスボス君のことを思い出した

 …気がします。」


黒子君の言葉に皆が一斉に黒子君を見る。


「まじか!黒子!」と火神君が驚くも
「最後やたら自信なさげだったけどな。」と
日向君は突っ込んでいた。




「それは、ほんまか黒子?」


と今吉君も驚いていて。皆が驚いている。




「はい。始め彼の声を聞いたときに
 聞き覚えがあるような気がして

 思い出そうとしてたんです。

 何度か各校のやり取りを聞いていてやっと
 思い出しました。」


「おそらく、ですが彼は元帝光中バスケットボール部
 三軍だったみ…「水色 要だ。」」




黒子君の言葉を遮ったのは虹村さんで黒子も
「気がついていたんですか?」と驚いていた。



「虹村さんいつから?」と赤司君も驚いている。


「赤司等が助けに来てくれる前に少しあの箱の中で
 直接あいつと話してて気がついた。

 まぁしかし、流石黒子だな。

 途中で退部した部員のことも覚えてたのか。」



感心した様に虹村さんは軽く笑みを溢す。


「元三軍ですから、しかも同じ学年となれば
 覚えますよ。

 ですが、主将も良く覚えていましたね。」


虹村さんは「あ?まーな。中学時代から危なそうな奴だったし。」
と言い彼の素性を知り得る限り話してくれる。


名前は、水色 要(みずいろかなめ)
元帝光中バスケットボール部三軍
頭のきれる奴ではあったが運動神経は並みの並み。

黒子君のように特化した特技もなく

良く三軍にいるような子だったと。


少し違うところと言えば彼は黒子君が一軍に入って少し
黄瀬君が一軍に入ったあたりで
二軍に昇格したにもかかわらずバスケ部を自ら退部した。


「俺がわかっているのは、こんくらいだ。
 今水色がどこの高校行ってるとかまでは知らねぇ。」


虹村さんの話が終わり赤司君が何か考えていて
その様子を今吉君等、秀才組が待っている。



「なるほど。虹村さんありがとうございます。
 水色要と言うと俺の知っている限り彼は……」


と、赤司君が話しているとキィーンとマイク音が鳴る。







噂をしたらなんとやらだ。









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