▽21.




まずは、瀬戸君がゾンビ右側前方へ移動し銃をかまえる。

ゾンビはそれに臆することなく瀬戸君へ近づき
殴りかかろうとする。



瀬戸君は瀬戸君で待ってましたと
言わんばかりに銃をぽいっと投げ捨てゾンビを
グーパンチする。
「やっぱ、素手が一番だろっ」と言っているあたり
銃はただの挑発だったのか。

パンチを見事に受けゾンビが一瞬よろける。

しかし、それでもゾンビは
危害を加えようと、今度は噛みつこうとしていた。

それをするりと瀬戸君は避けるも、
その弾みで今度はこちらが体制を崩してしまう。

それを見たゾンビはにたりと笑い

手を振りざして殴ろうとした瞬間

いつのまにか後ろに回り込んでいた
花宮君が瀬戸君の放り投げた銃を拾い
かまえていた。


バキューン、バキューンと2発躊躇いなく連続で撃つ。

1発はゾンビに命中し

もう1発は宝箱に命中した。

撃たれた衝撃で宝箱は
ゾンビの手を離れはコロコロと転がって行き
それを瀬戸君がキャッチする。


ゾンビはヴヴヴっと唸り声をあげ
撃たれたことの苛立ちか花宮君を狙おうと襲いかかるも

花宮君の右側に原君が回り込んでいて
その姿をゾンビが捉えたのか少し止まる。

瀬戸君はそんな原君に宝箱を
投げ渡していて原君は「ナイス!」と親指を立てる。



ゾンビに物を考えるも頭が有るのか分からないが




しかし、どうやら宝箱は重要視していないようで
一瞬原君を見たもののゾンビは
花宮君にしか興味なさそうだ。



「ちっ、おい!原!ちゃんと作戦立てたのか!?」


と狙われている花宮君は若干怒りぎみだ。


「えー、ざっくりと立てたよっ、と。」言うも
でも、宝箱に興味ないのは想定外だと
少し焦っていて

「てか、花宮こいつ、鬼の俺等から逃げるきねーじゃん!
 むしろ追いかけて来てんし!」

と原君は花宮君と走る。


「俺等を殺すこを優先してプログラミングされてんのかもな!」


花宮君は走りつつも撃つことをやめない。
それでも弾は外れず当たっていて。


その皆の攻防を原君は苦い顔で山崎君は見ていて。



「うえええー!あいつ撃たれても死なないとか
 まじ気色悪い、」



気持ち悪いと呟きながらも
私より後ろに後退しないのは天然か
もしくは少しでも守ろうとしてくれているのか。






『なんか、思ったより攻撃的なゾンビだね。

 大丈夫かな…、、。』



広い教室の中とは言え机や椅子もあるわけで
走り回るにも大変そうだ。

しかし走るゾンビは机も椅子もなぎ倒しながら
花宮君を追いかけていて



「花宮好かれてんじゃん。」と
のんきに瀬戸君は笑っていて
「笑ってる暇あったら銃よこせ!弾がもうねぇ!」
と、怒ることも忘れて花宮君は手をちょいちょいしている。



「ねー!花宮!あいつが触ってきた時に捕まったって
 いうんじゃダメなのー!?」

原君は少し息を切らし始めている。

確かに触れることが条件なら

最悪グーパンチされた
瞬間に捕まえたと唱えるんでもいいんじゃないか?
と私も思う。



でも、


「馬鹿が!それじゃダメだ!
 触れるのと、触れられるのじゃ意味が違う!」

と花宮君が叫ぶ。
大きな違いは無いが少しの違いで失敗したとき
取り返しがつかないからか

「必ずこっちから触れ!!」とつけ足す。




「えー!」と叫ぶも気を散漫させていたのが
仇となり、がしゃんと原君が机につまずいてしまった。

『「「原((君))!!」」』と叫ぶも二人を追いかけていた
ゾンビはにたりと笑い

原君に襲いかかる。



その時、「捕まえた。」と


後ろから古橋君がゾンビの肩を触る。


ゾンビは笑っていた顔をぎぎぎっと回し後ろを
向くも無表情の古橋君はカチャリと引き金を引く。



「残念だったな。お前の負け、だ。」



パンっと乾いた音をが鳴り響く。


「非現実的な世界とは言え後味は悪いな。」と
古橋君は銃をポケットにしまう。

撃たれたゾンビは先程まで花宮君が何度撃っても
死ななかったのに
あっさりと崩れ落ち動かなくなった。



「マジで最後ビビったし。古橋ナイス。」



原君は立ち上がり古橋君に近寄り肩に軽くパンチする。
花宮君も息を整えながら溜め息を吐く。




「つーか、花宮の言う通りだったな。」

少し離れていた瀬戸君も花宮君の方へと行く。
私も行こうと足を進めると
一緒にいた山崎君も「俺も行くから置いてくんじゃねぇ。」と

一緒に行く。


「山崎マジで情けねぇな」と瀬戸君のからかいに対して
山崎君は「そんなんじゃねーよ!」と否定しているも
顔は赤かった。



『皆、大丈夫?』


倒れているゾンビを出来るだけ見ないようにして
進む。



「大丈夫っしょ。それなりに鍛えてるし。」

と、背グーと伸ばす原君は先程までの緊張はなくなっていて
瀬戸君と花宮君は当たり前だと言わんばかりの
顔でこちらを見ていた。


「山崎はなにもしてないけどな。」と
古橋君は突っ込むことを忘れない。



「あ!?ちょっとビビってただけだし!
 ななのこと見てたしなっ!な?」

と山崎君の圧力に負け『う、うん!』と力一杯
頷くと満足そうに山崎君は「ほらな?」と
言い安心していた。



「馬鹿が、」と花宮君は山崎君の頭を小突いていたけど。




そのあと


私は原君から宝箱を受けとる。

何度か上下に振り中身を確かめる。
大きさ的にはちょうどバスケットボールくらいで
しかし重さは相当あった。


『うーん、大丈夫かな?』

振ってはみたものの良く分からず首を傾げると
「貸せ馬鹿。」と花宮君に奪い取られ
花宮君が確かめる。


しばらくして、花宮君が
「大丈夫だろ、ほら。」と宝箱を机の上に置く。



『おおー!ありがとう。』と言い宝箱を開ける。
花宮君が宝箱を撃っていたので
中身大丈夫かな?と思ったが少し傷がついただけで
貫通してはいなかった。


宝箱を開けると補充用の拳銃の弾と、
これたま恒例のパーツが入っていた。



瀬戸君がパーツをひょいとつまみ上げ念入りに見ている、

「これで大体のパーツは揃ってきたな。」


やはり、今までの拳銃のパーツの様だ。





『やっぱりこのパーツも今までの拳銃のパーツと同じ?』





「ん?ああ、たぶん同じやつだと思うぜ。」と
山崎君にパーツをぽいっと投げ渡す。


「わっ!あぶね!」と落としそうになるも山崎君はキャッチし
それをしまう。


その間に花宮君は使いきった拳銃の弾の補充をしていて
残りは持って帰るようにしまう。


「んじゃ、帰るか。」と原君は声をかけ教室を出ていこうとする。
皆も何だかんだで疲れたのか
黙って教室をでる。

ふと出ていく間際に古橋君が、ゾンビをちらりと見ていて
その手は少し震えているようにも見える。

たしか、ゾンビを撃ち抜いたときに
彼は「非現実的な世界とは言え後味が悪いな。」と
そう言っていた。


例え相手が現実的な生き物では無いと頭で理解していても
思うところがあるのかもしれない。


私は立ち尽くす古橋君の手を握り『大丈夫、行こう。』と
声をかけそのまま古橋君の手を引き教室をでる。


「俺の心配より原や花宮の心配をしてやれ。」

と古橋君に言われてしまい振り返ると
クスリと笑みを見せてくれて


何だ、ちゃんと笑えるんじゃないと思い私も笑う。



「いちゃついてんじゃねぇ。」と花宮君に
怒られてしまったが

『皆の心配してたの。』と強気で返しておいた。



「はぁ?なんだそれ。
 俺がありがとう。とでも言うと思ったか?
 んな訳ねぇだろ、ばぁか!」


ふはっ、と吐き捨てられた言葉に前言撤回してやろう。
古橋君?花宮のどこ心配するんだ?
全然元気だぞっ!と、きぃーとするも


「素直じゃないのは一緒か。」と

古橋君はなぜか呆れていて

余計に意味がわからなかった。















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