▽20.






「うわー、いかにもって感じで怪しいね。」


と原君はぷくぅーとガム風船を膨らましているが
焦っている様子は全くない。


現在、北棟1階廊下。

体育館で心配してくれている皆に行ってきます!と
声をかけ出てきたところまでは良かった、

うん。



そこから北棟の廊下に入った瞬間
防災用のシャッターがおりて帰路を断たれてしまったのだ。


しかも、ご丁寧に廊下には
第五ステージ開始、とかかれてある。


ステージクリアしないかぎりは出られないのだろうなと
思うも人間の適応力はすごい。
だんだんとこの状況に自分が慣れつつあった。


すると、臆することなく山崎君が「仕方ねぇから進むか」と
一番近くの教室のドアに手をかけ
勢いよくガラッと開ける。


「おい、無闇に開けるな。」と古橋君が注意するも
時既に遅し。「わりぃ、開けちった。」
なんて答える山崎君に古橋君と原君は「馬鹿だな。」と

口を揃えていた。

しかし山崎君は気にする素振りなく
教室の中にズンズンと入って行く。

怖い物知らずなのかな?と思っていると
「本当はビビり。馬鹿なだけだ。」と
こっそりと古橋君が教えてくれて少し笑ってしまった。


山崎君の後を追い古橋君と教室に入り
原君は瀬戸君を引きずりながら入っていく。

しかし、花宮君は何か考え込んでいて
なかなか教室に入らない。


『ん?花宮君入らないの?』


と、声をかけると
「入るさ、」と言い花宮君は入っていき
教室に入るなり瀬戸君を蹴り起こしていた。

何か思い詰めてる様に見えたが
私の考えすぎかな?と思い
教室の奥へと足を進めた。










『うん、、、ここまで来ると爽快だね。』



教室に入るとそこは大きい教室…というか
1階の教室部分がすべてのぶち抜かれていて
1つの空間と化している訳だが

雰囲気は教室、広さは8部屋分くらいだろうか。


「爽快というか、こりゃまたダイタンだな。」





「あっれー?瀬戸完全に起きたの?」



欠伸を噛み殺しながら瀬戸君は教室を見渡している。
原君は瀬戸君が起きていることに驚いていたが
「花宮に蹴られて起きた」と言っていて
さっきのことかな?とほほえましくなる。


私も教室の周りをぐるりと見渡して見ると
教室の奥のちょうど真ん中の方に

ポツンと宝箱があって。



海常の時もそうだったが
私はこう、向こう見ずな所があって1つのこと以外には

なかなか気が回らず、

先に皆に伝えれば良かったものの
迷わず宝箱の方へと小走りで近寄ってしまった。

それが失敗だった。

もちろん。小走りで宝箱へ向かう姿に
霧崎第一の皆は気がついていて


花宮君の切羽詰まった声が後ろから響く。

宝箱の手前まで近づいていた私は
えっ?と思い振り返るけれど見えるのは焦る皆の姿。


「おい!馬鹿っ!なな!!前!!」


焦る花宮君の姿を視界に捉えた瞬間
腹部に痛みが走る。

どうやら、宝箱に触れる瞬間に
先程まではいなかったゾンビが何処からともなく現れて
思いっきり私のお腹を殴ったのだ。


しかも、その弾みで軽く後ろに飛ばされてしまうも

古橋君にキャッチされて背中へ衝撃が来ることはなかった。




ゴホゴホとむせる私の背中をゆっくりと古橋君が
撫でてくれながら「馬鹿だな。」と心配の色を隠さず
優しいなと、思ってしまう。


花宮君も何も言わないがお得意舌打ちを
盛大に鳴らしていて

原君はガム風船を膨らませながら
ゾンビから目を離さず睨んでいる。

…前髪で表情は分からないが。

瀬戸君は何か考えているようだ。

皆それぞれ真剣な面持ちの中、山崎君だけは
一人パニック状態で



「うえええー!気持ちわりぃ!」

と、叫んでいる。


「ザーキー、ちょっと落ち着けよ。」

原君が宥めるも聞く耳持たずで

「いや!だって!あれ!だって!」


原君を横目でみながら私は
だんだんと息も整ってきたので
立ち上がろうとする。

少し雑にではあるが古橋君も手を貸してくれて
ありがとうと伝える。


すると恒例のチャイムが鳴り響く。




キーンコーンカーンコーン







「ちっ、遅いお出ましだな。ヘドが出るぜ。」

と花宮君が愚痴っていたが
聞かなかったことにしよう。






《第五ステージへようこそ。

 ここのは至ってシンプルです。
 そこにいるゾンビから宝箱を取り上げ

 “捕まえた”ら

 それで、貴女方の勝ちとなります。》





すっかり聞きなれてしまった黒幕さんの声。
しかし、今回は少し違和感を感じる。

なんでかいつもより黒幕さんが冷めている様に
感じるのだ。




「ふはっ!簡単だろとでも言いたいのか?」


と花宮君は恐れることなく悪態をついていて
すごいよの、一言に限る。






《簡単だと思いますけどね。
 ただ…今回は本当に殺しに行きますから
 覚悟はしてほしいです。

 霧崎第一…。ラフプレーが専売特許の
 皆さんは個人的に

 キライなので。》




と淡々と話す。




「あー、なるほどねー。それであんた今回冷たいんだ。」

と原君は納得していたが
焦ってはいない。強いていうなら山崎君以外は
焦っていない。





《もちろん、みんなキライなんだけど

 キセキの世代は
 焦がれるほどに憧れていて、、、キライなんです。

 君らは、また違うからね。

 じゃ、検討祈るよ。》と

そう言い残しマイクをぶっちんと切ってしまう。



「変態発言じゃね?」と瀬戸君は笑っていたが
いやいや、それどころじゃないよね?

と思うも


それからの花宮君の行動は早かった。


「山崎!お前はビビって使えないからななと
 一緒にここに残れ。

 まず、俺と瀬戸で宝箱を取り上げれる。

 そのあと、原と古橋でゾンビに触れ捕まえたと唱えろ。
 いいな?」



私は何も言われなかったが
遠回しに使えないといっているのか?ん?   


「分かった、だかどうして捕まえたと唱える
 必要がある?」



古橋君は作戦は理解をしたがと話していて
花宮君は理由を話してくれるそうだ。



「赤司等が第四ステージクリアした際に出た
 予告的な紙に今回

 次回は鬼ごっこ
 捕まるのはどっちか?

 と書かれてあった。

 そこをふまえてだ。
 おそらくこれは鬼ごっこをベースに造られていて
 さっきのあいつの話とゾンビの行動を見ると

 攻撃的であることと死なねぇ可能性がある。

 なら、ぶっ潰す以外でのやり方で
 ゾンビねじ伏せなきゃいけねぇからな。」

なるほど、それで触れるとこが必要なのか。



「なるほど」と古橋君と原君も納得する。

「りょーかーい。花宮と瀬戸ならまあ、間違いなく
 宝箱はゲットできんね、」と原君は話していて
古橋君とどうやって触る?
つか触りたくなくね?と二人で作戦を練っていた。

花宮君も瀬戸くんと何やらわいわい話していて
やる気だ。


私はおとなしく山崎君と、待機。


『大丈夫かな?』と山崎君に聞くと
「あいつら頭良いし大丈夫だろ。むしろ余計なことは
 怖くてできねぇー…」と山崎君は
ゾンビを見つめていた。

そうとう嫌なのだろう。ゾンビ。



「行くぞ。」


そう、花宮君が全体に声をかけ
霧崎第一の攻撃が始まる。












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