▽19,










ぼんやりとする意識の中でピッピッと機械音が
頭に鳴り響く。

なんだろ、と思いつつも私の意識ははっきりせず

うっすらとしか前が見えないがどうやら
目の前ではかなりショッキングな状況だった。


そう、強いて言うならこれは、、、、幽体離脱?とでも
言うのだろうか。



病院の白い壁、医師、大切な人達、と私。


満身創痍な私の体は至るところに
包帯やガーゼ等が当てられていて
呼吸器もついていた。


重たい空気の中、医師が放った言葉は
あまりにも残酷で
私を現実へ連れ戻す。


その言葉を聞いていた周りの人も


それぞれ悲痛な面持ちで泣いていた。

私はここにいるのに、、、と言おうにも声がでない。

近づきたいのに近づけなくて

こんな状況になってしまってから
気付く伝えたいことも、もう伝えられなくて。






「残念ですが、恐らくななさんはもう……。」



そう言った医師の言葉だけが
やけに耳にごびりついて離れないまま

なんとか繋ぎ止めていた意識は遠退いてしまった。













▽▲









「おい!ななっ!なな!」




肩をゆさゆさと揺らせれながら
何度も私の名前を呼ぶ声がして目を開けると

心配そうな顔をしている宮地君と目が合う。

どうやら私の名前を呼んでいたのは彼のようだ。



少し身体を起こして目をしぱしぱさせるも

未だ視界はぼやけていて目を擦ろうとするも
横から宮地君に手首を捕まれ止められる。


「やめとけ、目が赤くなんだろ。」

と優しく目を撫でるように宮地君が触る。
触れられた瞬間、水っぽい物が伸び自分が泣いていたことに
気がつく。




『うわっ!ごめんね宮地君!』と
急いで彼の膝を見るも汚している痕跡はなく
少し安心する。






「寝てから直ぐにお前、魘されてたが大丈夫か?」


どうやら魘されながら泣いていたようで
なんとも恥ずかしい。


しかし、先程見た光景はどうにも夢の様に思えず
もしかしたら三次元に残してきた
自分の現状なのかもしれないと不安が襲う。

でも、自分は死ぬかも知れないなんて
彼らには打ち明けられる訳もなく

なんとか誤魔化さないとと笑ってみるが
苦笑い、、、になってるんだろうな。



『良くない夢見ちゃっただけだよ、心配してくれて
 ありがとう。重かったでしょ?』


まだ少し宮地君に寄りかかっていた身体を完全に
お越しお礼を言う。

赤くなってなければいいんだけど。と思いながら。



宮地君もそうかと深く追求してこない辺り

やはり皆より大人なんだなと
失礼ながらも関心する。





「なめてんのか?…重くねぇーよ。別に。

 ほら、ここ髪跳ねてっぞ。」




『え!嘘!?』と頭を撫でる。
何処かわからず全体手櫛をしてみるも、目の前で
笑っている宮地君を見る限り

直っていないのだろう。と

簡単に予測でき
もうっ!と怒るとも効果はなし、

もういいかなって諦めようと手を下ろしたとき
自分がさわっていた反対側を手櫛され振り向くと

高尾君がいて。

おそらく、寝癖を直してくれているのだと気付く。



「跳ねてんのこっちね?」と直してくれる。

そのまま顔を少し近づけると、耳元で
「思ったより顔色は良くなってて良かった。」
なんて言って頭をぽんと軽く叩く。

今絶対私の顔は赤いと断言できる。


『…っありがとう高尾君。そっち側だったとか
 気づかなかった。』




「いーえ!…にしても宮地さんマジでSっ気
 半端ねぇ。」

少し私から離れると怖れることなく 
先輩にチャチャを入れる高尾君は
実は大物ではないかと私は思う。




「あ?なんか言った高尾??」


しかし、宮地さんも負けずと青筋をぴきっと
いった感じで立て笑顔で睨んでいる。




「いや、別に宮地さん好きな子は虐めちゃうんだなっ、とか
 ゼンゼン思ってないっすから!」



「ばっ!!てめぇ、高尾!!木村!軽トラ持ってこい!
 今すぐ高尾ブッ殺す!」



と宮地君がいよいよ怒り出してしまい木村君まで
巻き込んでいる。
「今はねぇよ。」と冷静に木村君は突っ込んでるけど

つっこむとこそこ、か?


高尾君に至っては何故か爆笑。
「やべっ腹痛ぇ。宮地さんマジ純粋。」と言って
さらに宮地君の火に油をそそぐ。

私は話に若干ついていけず、傍観することに徹していると
話し合いが終わったのか緑間君が、戻ってきた。

ちらりと秀徳の皆を見るとため息1つつき
いつものようにブリッジを押し上げる。


「高尾やりすぎなのだよ。馬鹿め。」

と高尾君を止めに入るところを見ると
緑間君本当に高尾君のこと好きだな。と思う。


「あ!真ちゃんじゃん!話し合い終わったんだ。
 どうだった?」





「ああ、虹村さんは現時点ではいつ起きるか分からない。

 だか、何か重要な役割を割り当てられている可能性が
 高いのだよ。

 本来なら、ここは虹村さんを待ち情報を共有したのち
 行動にでるのが妥当であるが


 …しかし、今回は待たず先に探索に出ると言っている。」




緑間君の言葉に各々驚きつつも
さっきまで黙っていた大坪君が反応する。



「珍しい判断だな。通常ならここは待つべきじゃないか?」




「…俺も赤司に反対したんですが、霧崎第一の奴等が
 行くと聞かなかったのだよ。」




そう言うと少しもう訳無さそうに緑間君は私を見て
「もう少し休ませてやりたかったのだが。」と
言ってくれて嬉しかった。

なので『ありがとう。』と返すと
「礼を言われることではないのだよ。」と
ブリッジを押し上げる。


あ、顔が少し赤い。照れてるのだろうか。





どうやら緑間君が言うには
虹村さんが目を覚めるのを待つべきと言う意見が多かったが

いつ起きるか分からないものに時間は使えないと
霧崎第一が申し出たそうだ。

赤司君も彼らの申し出に悩みはしたが
間違ってはいないと判断し探索することになった。

しかし、それに伴い赤司君が1つ条件を出した。




帝光中のメンバーは体育館に残ること。

黒幕の人物を洗い出すため
虹村さんが起きたときに少しでも帝光時代の情報を
知り得てる
メンバーを残したいんだとか。


そもそも黄瀬君辺りは虹村さんが心配で
探索には出たくないと言っているくらいだ。

もしかしたら赤司君も同じ気持ちなのかもしれない。


その結果、次はキセキの世代が唯一所在していない
霧崎第一が探索にでることとなった。



場所は残っている北棟1階から。



気づけば残りもあと少しだ。と自分に気合いを入れ
霧崎第一の所に行こうと立ち上がる。


「なな。」



ふいに緑間君に名前を呼ばれて振り返る。


『どうしたの?』




「無理はするな。いいな。」



そう言う緑間君は目を反らすことなく
あんまりにも真っ直ぐ見つめてくるもんで
こっちが照れてしまう。

『わ、わかったから。』となんとか答えるも
口ごもってしまう。


「真ちゃんツンデレのくせして、たまに天然かましてくっから
 マジでイケメン。」
と、高尾君の声が聞こえて本当にと

心の中で強く同意したのだった。
















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