▽14,


「なんや、嵌められた気分で腹立つわ。」



体育館に入り今吉君がまず最初に言った言葉に
桐皇組以外はきょとんとしていたが
息を切らす桐皇メンバーを見て
なにか一大事かと入り口の方に集まる。

私は青峰君に下ろしてもらい、両腰に手をあて息を整える
彼の背中を擦っていた。

『ありがとう』と呟けば「おー」と返され
頭をぐじゃぐじゃと撫でられる。
全く今吉君といい、私結構歳上なんだけどな、と
思いつつもこんな年になり頭を撫でられる機会も減っていた為

嬉し恥ずかしい気持ちだ。




「校舎が燃えているのだよ……。 」


青峰君と、少し甘酸っぱい青春の様なことをしていると
緑間君が絶句した顔でぽつりと呟く。
「嘘!?マジで?」と高尾君も緑間君の横に行く。

「うっわー、マジで燃えてんね、」





「だから、そうだと言っているだろ。馬鹿め。」


驚いているのかちゃらけているのか、いつもの調子で
高尾君が話す。
それに対して緑間君は何とも言えない様子で。




「え?なになに真ちゃん?ショックなの?」と
少しだけ心配そうに高尾君が顔を覗くも


「そうゆうことではないのだよ。ただ、己の母校が燃えていて
 気分が良い奴も、そういないだろ。」



と、ぷいっと他所を向き体育館の奥へと引っ込む。

「素直に気分が悪いーって言えばいいのに真ちゃん。」と


笑いながら高尾君も戻る、


すると、動かずに待っていた秀徳先輩チームが
状況を確認しようとして緑間君に話しかける。


まず、

「燃えてたのか?」と聞く大坪君の言葉に

「ご覧の通りです。」と緑間君が答え

「答えになってねぇよ。轢くぞ!」と宮地君が怒り

「いや、宮地パイナップルで殴ろう。」と木村君が
提案していた。

意外と物騒なメンバーだ。
ちなみにこのやり取り中、高尾君はただひたすら笑っていた。



所変わって反対側では





「今吉さん。何があったんですか?」





驚きつつも、やはりというか冷静に赤司君は今吉君に
今までの経緯を聞いていた。
ほかの誰でもない今吉君に聞くところ流石だと思う。

赤司君と今吉君は二人で話し込んでいるようで
なんだか混ざりにくい。
どうしようかと悩んでいると、「ななさぁーん!」と
さつきちゃんが駆け寄ってくる。



「大丈夫ですか?大ちゃんに虐めれませんでしたか?」
と頭の先から足の先まで見ると
キラーンと目が光り何も言わず青峰君の方にズンズンと
歩いていく。

青峰君の所に着くと勢い良くさつきちゃんは青峰君のお腹に
グーパンチをいれる。


「ぐふっ!……さつき!てめぇいきなり何しやがるっ!!」


いきなり殴られてお腹を抱え凄い勢いでさつきちゃんを睨むが
さつきちゃんはさらにグーパンチをいれようとする。

流石に2回目は受けとめられていたが。


「何すんだ!…じゃないわよ!

 行く時に比べてななさんの着てるテツ君の
 ジャージが汚れてる!
 しかも、何か転んだような!」

さつきちゃんに言われてハッとし黒子君のジャージを見ると
確かに少し汚れていて急いではらう。



「ああ?それとこれとなんの関係があんだよ。」


馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに青峰君が顔を反らすが
青峰君は私を一度投げている。それもおもいっきり。
致し方なかったとは言え少し罪悪感があるのか
気まずそうだ。

うーん。実は嘘つくの苦手なのかな?青峰君は?


「嘘。大ちゃん嘘つくとき絶対目、見ないもん。」


流石、幼なじみ兼情報収集屋。恐るべしだ。

詰んでしまった青峰君は、ちっと舌打ちをすると
開き直る。


「しかたねぇだろ、床に穴開いたんだからよ。」

「あな!?」とさつきちゃんが叫ぶ。


「ああ。黄瀬が開けた穴。」

と、青峰君が言うと私はまずいと思い「青峰君」と声をかけるも
逆効果で焦る私に、さつきちゃんは確信を得たように
青峰君からあれよあれよと事情聴取をしている。

青峰君もここぞと言わんばかりに全て話し出す。
俺はむしろ助けたんだぞ!と言っていた。

全て聞いたあとに、それでも大ちゃんも悪い!と怒り
黄瀬君にもきーちゃんのあほ!と
彼にもグーパンチを入れる。

「痛いっス!」と言う黄瀬君に

またもや、さつきちゃんが1から説明していた。
もう何だか何処から突っ込んで良いか分からず
体育館の入り口に戻り腰を下ろす。




火はまだごうごうと燃えており、まだまだ消えそうにはない。
不思議と火は体育館少し手前までしか来ず
南棟しか燃えていない。


火を見ると人は落ち着くと言うけれど、何だか少し
悲しい気持ちになる。

体育館座りをし膝をかかえる。

そういえば、いろいろあって忘れてたけど私
車に跳ねられたんだった。
生きて帰れるのかな。とか。
このまま死んだら色んな人に迷惑かけちゃうな、とか。

そんなことをぼんやりと考えていると
頭上に影が現れる。ふと上を向くと最初の最初に
私のことを怪しんでいた花宮君が立っていて

ゆっくりと隣にすわる。



『……花宮君?』


声をかけるも無言の彼は私のように、ただ炎を見つめている。

花宮君もたまには物思いにふけるのかな?と
黙っていると彼らしくなくぽつりぽつりと話し出す。


「…あんたと同じ名前の女に昔、
 ムカつくことを言われたことがある。」


ん?話しかけてくれたと思ったらまさかの切り出しで
あほ顔をしてしまう。

そんな私の顔見てちっと、盛大な舌打ちをする。
しかし、同じ名前かぁ、紫原君とかがいってた人かな?






『…何て言われたの?』



「自分自身を騙すな。とか言ってやがったな。

 今思い出しても虫酸が走る。

 たが、忘れることも出来ない自分にも虫酸が走る。」




話してる最中、花宮君はこちらを一切見ないが
その顔は笑ってはいないのに、どこか優しげで。




「不安なら不安って言えばいいじゃねぇか
 馬鹿が馬鹿の頭で何考えたって

 結局は馬鹿な答えしか出ねぇーよ。」


そこまで、言うと花宮君はこちらを向き
指を私の目尻まで持ってくるとスッと涙をすくう。

自分でも気づかないうちに出ていたのだ。



『花、、宮、君。』



「………なんて、言うわけねぇだろ、…ばぁーか。」

花宮君はふっと笑いながら、それでも優しく言う。
彼のデレツンの名台詞であるのに
いつもの様な刺々しさはなく、
とても優しかった。

すると、原君がぷくっーとガム風船を膨らませながら
こちらに気付き近づく。
神業の様な速さで花宮君はてを引っ込める。



「あれー?花宮泣かせてやんの。
 どーせ、またキッツいこと言ったんでしょー。」


なるほど。通常な彼ならそうだ。
確かにきつい事を言って女の子を泣かせそうだ。


『いや!違うの!これはっ!…』と言うとパシーンと
頭を花宮君に叩かれる。


「うわっ容赦ねぇー」と原君の奥で山崎君が震えている。

「うるせぇよ。」と花宮君も体育館の中に戻ろうとする。
そうか、あんな自分チームメイトには見せたくないのかな?と
思うと少し可笑しくなり、ふふっと笑うと



「花宮に叩かれて頭でもいかれたか。」と瀬戸君が言う。
笑っている意味に気がついたのか花宮君は
「気持ち悪いんだよ!」と怒っていたが気にしない。



めげずに『ありがとう』と言うと


「叩かれてお礼を言うなんて本当におかしいと思う。」なんて
失礼なことを真顔で言う古橋君。





花宮君は

「ふはっ、めでたい頭だな。」と笑っていたけど




嫌みを言うときの笑みではなかったと私は思う。









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