▽12,


体育館を出ていく前にさつきちゃんが
青峰君のジャージをつかんで揺さぶりながら
「絶対ななさんに無理させちゃだめだからね!」と
強く念を押してくれていた。

有りがたいけど
青峰君は凄く面倒さそうな顔していて
収集がつかなくなりそうだったので

ハイハイと、
今吉君が青峰君を引っ張っていたのが


約2分前。







『どうしてみんな優しいんだろ。』と
心で思ったつもりが、つい口走っていて「あ?」と
私の前を歩いていた青峰君が振り返る。

『あ、ごめん。一人言が口にでちゃった。』





「それ一人言って言わねーだろ。普通。

 …まあ、あれだな。
 知り合いに似てっからだと思うけど…」

そこまで言うと少し考える青峰君。




『紫原君やリコちゃん達にも言われて
 何かだんだんと
 気になってきたんだけど、

 ね、青峰君その子どんなこ?』



更に何か考えいるようにも見えたが
「………どんなっつてもな。お前より胸は小さい。」
の、発言により前言撤回しよう。
きっと何も深く考えないなこりゃ。
とりあえず、セクハラだからね!っと青峰君の腕を
軽くグーパンチで殴るも知らんぷりされる。






「確かに、似ているような気もしますし
 何だか初めて会ったような気がしないから
 話しやすいのかもっ…ってすみせん!

 気持ち悪いですよね!」

にこにこ話していたかと思う
といきなり顔を青ざめて
すみません!と、謝る桜井君。
表情が本当にころころ変わり見ていて飽きない。

「いや、桜井もうええから。秋山さん
 若干ひとるし。」と今吉君がフォローするも
「そうですよね!すみません!」の一点張り。

なかなか手強い桜井君。
こう見てみると一番の苦労人は何だかんだで
若松君じゃないかな?と少し思わなくもない。

そんな若松君がひとつひとつ
どの教室が空くか確かめており
どうやら、ひとつ見つけたようで
「ここ、空いてます。」と
声をかけてくれる。



教室のプレートには


生徒会室とかかれてあった。


まず、最初に入ったのは諏佐君と若松君。





「何だか廊下に比べるとかなり埃っぽいな。」

諏佐君は口元を抑えながら
教室の中をぐるりと見渡す。
若松君も少し顔を歪めていた。

「そうっすね。
 何か生徒会室ってわりには荒れてますし」



「なんや、でもこうゆう場所に
 ラッキーアイテムみたいなんが
 ありそうな気がするんやけどなぁー。」

そう言いながら今吉君も教室の探索を始める。
自分もぼけっとしてないで何か探さないとと思い
後を追い教室にはいった。
青峰君は後方をやたら気にしている桜井君にたいして
「おい、良置いてくぞ」とぶっきらぼうだけど声をかけつつ
教室のなかに入った。

生徒会室の中は大きめのソファーに机
生徒会長の机らしきものに小さめの給湯スペース

もはや、生徒会室というより校長室のようだった。

皆それぞれ散らばってあちこち探してみるも
手がかりになりそうなものは無く青峰君が探すのを止める。


「あーー、くっそ!何もねぇじゃねぇか!」と

探すのを止めると青峰君は
ソファーにどかっと座る。
すかさず若松君がバシっと青峰君の頭を叩く。


「おい!こら!青峰!
 先輩達がまだ探してんのにお前は!」



「いてぇな!」とか
「自分頑張りますから!すみません!」とか
「青峰!」とか何故か2人に桜井君がまざり
もみくちゃになっている。

今吉君がはぁー、と
溜め息をはいてこちらに近寄る。






『大丈夫かなぁ?あの3人…。』


「ほんま、しゃーない奴等や。堪忍な?」


私の頭をぽんぽんと叩き
今吉君は3人を止めにいく。


「お前らぁええかげんにせぇよ。」と
今吉君がちょうど3人を止めようとしたとき
青峰君の肘がソファーの後ろにあった
トロフィーにあたりガシャンと音をたてて落ちる。





「「「「「「あ、」」」」」」



「すすすすす、すみません!すみません!」

慌てて何故か桜井君が謝り出す。


「いや、桜井は悪くないやろ。」


お前が、お前が、すみません、お前が!と3人は
いまだに言い争いをしていて
いよいよ今吉君が呆れて
「もう、あいつら放置しよか。」と
止めることすらやめようとしていた。

あーあ、立派なトロフィーだったのにと
私はそれを手に取ると
ひらりと小さな紙が落ちる。
なんだろうと思い拾う。

雑誌の切れ端のようだった。

その様子に気がついた桜井君が「それは?」と
覗き込んで、さらにその様子に
青峰君と若松君も手と口を止め
こちらを気にしている様だった。




「秋山さんそれは何や?」


と、今吉君と諏佐君もこちらに集まる。


『トロフィーが壊れて、
 拾うと思ったらトロフィーから
 紙が落ちてきたんだけど。
 なんだろう?雑誌の切れ端みたいだけど
 1枚じゃ良くわからないや。』


はいっと、今吉君に手渡すと今吉君はじっ見ながら
考えているようだった。
珍しく青峰君も黙って考えていて、ぽつりと
「それ、月バスじゃね?」と言い出す。

隣で言い争いをしていたはずの若松君も
青峰君の言葉を気にしているようだ。


「何でそう思うんだよ、青峰。」





「いや、別に確証とかねぇけど
 その切れ端の角のマークが
 月バスのマークっぽいなと思ってよ。」


大きなあくびをしながら、
がっしがっしと頭をかく。
「なるほどなぁ。青峰の直感は当たるからなぁ。」
と諏佐君も納得している。

いったいどんな信用のされかたなんだ。青峰君。


「まあ、何にしろ手がかりになりそうやで。」

と今吉君がにやりと笑い皆で生徒会室を出た。

悪の親玉より悪どい笑みに見える…今吉君。
「秋山さん、顔に出てんで?」と
笑いかけられ、ひぃっと叫んでしまい
青峰君に笑われたが


気にしない、気にしない。






生徒会室を後にして廊下を進み
1つの教室の前で足を止める。
教室の窓に第三者ステージ開始とかかれてある。


「んだよ、教室入る前に
 わざわざご丁寧にご案内とは
 なめてやがんな。」

ちっと、舌打ちをしながら若松君は不機嫌をあらわにしている。

「な、なんにしても如何にもって感じで
 気味が悪いですね…。」



桜井君も近寄りたくはないのか少し教室と距離を取っている。
そんな中開けてみりゃぁいいじゃねぇかと男前にも
青峰君が教室に手をかけ教室を開けようとする。

「青峰、気を付けろよ」と諏佐君が心配するも
まったく気にしていない感じだ。

ガラッという特徴的なドアが開く音の代わりに
何故かカチッという機械音が鳴り
ドアは開かずびくともしない。
鍵がかかっているのだろうか。


「青峰、今何や機械音が鳴らんかったか?」

眉間に皺を寄せ今吉君が少し青峰君の方にいく。

「したな…。」と青峰君が呟いたときだった。
例のごとく

キーンコーンカーンコーンとチャイムがなる。
皆に緊張が走る。




《ようこそ、桐皇学園の皆さん。
 ふふ。そんなに緊張しないでほしいな?

 第三ステージまで良く来られたね。
 今回は少し面白くしてみたんだ。

 この、廊下の奥に宝箱をおいてある。
 それが今回の報酬としよう。
 もちろんトラップじゃぁない。
 
 信じるかは君達次第だけどね。

 じゃあ、頑張っ「ちょい待ちいや、」》


いつもの様にマイクを切ろうとしたであろう敵に
まさか今吉君が、待てと声をかける。
諏佐君と若松君、桜井君は驚いている。

それもそうだ。

「自分、俺の年下やろ。
 先輩のお願いは聞いとくもんやで。」







《…流石ですね。否定はしませんがどうして
 お分かりに?》


こちらの声が聞こえているのか
会話がなりたっていることにやや驚きつつ
今吉君の発言にも驚き、もう会話に
ついていくのに、いっぱいいっぱいだ。


「そんなん簡単や。
 気づいてやっとんのかどうか知らんけど
 自分、青峰らぁキセキの世代を呼ぶときは君付け
 俺らぁには、さん付けやんなぁ。

 体育館で氷室のこと氷室辰也さんと言うとったし。」


『凄い、全然気づかなかった。』といえば
「おそらく赤司も気づいとるやろうけどな」と
今吉君が笑う。



《そのうちバレるだろうとは思っていたので
 隠すきはありませんよ?
 ええ、キセキの世代と同い年です。

 ですが、それで何か分かりますか?

 ふふ、どのみち誰一人として助かるなんて

 思ってもらいたくありませんが。》と

いうとブチッと、マイクが切られる。


「意外と怒りっぽい性格なんやなぁ。しもたわ。
 もっといろいろ聞き出したかったんやけど。」

やれやれと今吉君は、言っているけれど
十分凄い。諏佐君も心配している。
いや多分諏佐君が一番今吉君を、

心配している様な気がする。

「今吉、無理するな。
 言葉のやり取りは確かにお前が
 一番この中で長けているが、
 その分目をつけられる可能性が
 あるんだからな。」





「わかっとる。」と笑った今吉君は
凄く自然な笑みで
ああ、やっぱり3年間
桐皇学園のバスケットボール部を
ここまで強く築きあけできた信頼と時間が
二人にはあるんだなぁと、


思った瞬間だった。



いつか、青峰君と桜井君もあんな風になるのだろうか。と。










prev / next

[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -