▽10,


黄瀬君が教室のドアを少し開け廊下を確認する。



「どうやら通りすぎたようっスね。」


皆ほっと息をはくと各々動き出す。

教室の中を見てみないか?と言う小堀君の提案で
教室内の探索に入る。
笠松君と小堀君と森山君は黒板のある前方。
黄瀬君と私と早川君で後方と、別れて見る。

ふと、前方の森山君が呟く。



「あの、化け物たちは
 目が良くないのかも知れないな。
 あの状況で、この教室に入ってこないのは
 少し気になる。」

どうやら、先ほどの化け物のことで何か
引っ掛かっているようだった。


「どうゆうことっスか?」

「いや、ななさんと黄瀬が
 あの化け物を見つけたときに
 あいつらは、俺らの姿が見える場所に居たのに
 歩いていた。」

森山君の話に笠松君と小堀君も同意する。

「言われてみれば、確かにそうだな。
 俺達が走り出してから走り出してたしな。」


「そうだな。森山や笠松の言う通りかもしれない。
 ななさん陽泉組と探索に行ったときに
 出くわした奴と同じでしたか?」


『…見た目にそんな変わりはなかったと思うけど。』



ゾンビの姿を思い出してみるが、
肌などは爛れており違っていたとしても
ハッキリとは分からないかもしれない。

うーん、とうなり考えていると
早川君が宝箱を発見したようで皆を呼ぶ。



「先輩!たか(ら)箱見つけました!」

うん、ら行が少なかったので聞き取りやすい。

わらわらと、宝箱の周りに集まる。
やや小さめの全く何の装飾もない箱で
しかし、それもやはりと言うか
早川君には開けられなく

「わ(る)い」と言う早川君や
「すまねぇ。」と言うと
笠松君に大丈夫と言うと箱に手を宛て開く。
箱は問題なく開いたのだが、

開いた瞬間ひゅんと風を切るような音が
耳の横で鳴る。

一瞬何がおきたか分からず、
箱を開けた状況で固まる。
じんわりと肩が熱くなりふと己の肩をみると
じわじわと血が滲んでいた。

「ななっち!?」

と黄瀬君が直ぐに私から箱を遠ざけ
傷の様子を見ようとする。
どうやら、箱から小型のナイフ…
果物ナイフの様なものが飛び出してきてそれが
運悪く、いや運良く肩をかすめていったのだ。


森山君が宝箱の中身を確認するもナイフ意外の物は
入っていないようで珍しく少し怒りをあらわにしていた。


「くそっ、こんなトラップもあるのか!」


他の海常メンバーも、各々苦しい表情で。
何とも言えない空気が漂う。


『いっ、た。…びっくりした。』


思ったより傷は深くなく、
これなら我慢できる痛みだ。
良かったと胸を撫で下ろすも黄瀬君が
ややパニック状態である。


「ななっち、大丈夫っスか!?
 痛いっスよね?
 か、笠松先輩!どうしよう、
 血が止まらないっス!」


肩を切ってしまったが服をここで脱ぐ訳には
いかない。
黄瀬君はとりあえず己のタオルで
私の傷口を抑えてくれている。


「うるせぇ!騒ぐな黄瀬!
 ななさんそのまま傷口強く押さえたまま
 歩けますか?」


笠松君が少し申し訳なさそうに眉を下げる。


『大丈夫だよ。
 びっくりしたけど思ったより痛くないし
 傷もそんなに深くないと思う。』


そう言って笑って見せると、「わりぃ」とさらに
眉を下げる。

どうしたものか。
ここに居る誰もが悪いわけではない。
だが、責任感の強い彼らは
皆しゅんと肩を下げている様な気がする。

すると、森山君がいつもの調子で
私の手をとり膝まつく。


「ななさん、すみません。
 俺達の注意不足でした。
 ですが、次は必ず守りますから。


 …あと、傷が残っても俺が彼氏候補としていますから!」

と、前半すごく嬉しいこと言ってくれていたのに
森山君らしく、ふふっと笑ってしまう。
黄瀬君達もすかさずツッコミをいれ
その場が和む。

場が収まり一度、体育館に戻るかと言う話になり
皆で廊下にでる。もちろんゾンビに気をつけて。

教室を出る間際に、
いたずらっ子ぽくウインクしてきた森山君。


まさか、とは思うが場を和ます為のあの言葉を言ったのだとしたら



残念なんかじゃない。



本当にイケメンだ。



けれど、物事は平穏に
終わってくれるばすもなかった。

廊下に出ると先ほどまでは、
ただの、普通の窓だったものに
血文字で"第二ゲームスタート"とかかれている。
教室入る前はなかったのに。

その、文字を見るや否や皆が戦闘態勢にはいる。

その時に例によって学校のチャイムがなる。

“キーンコーンカーンコーン”  と



《ようこそ、海常高校の皆様。

 今回はね、期待を裏切って廊下をステージに
 してみたんだ。

 陽泉高校の人達には、ステージボスと
 ゾンビで追い詰めたかったんだけど
 上手くかわされちゃって残念。


 でも、今回のトラップは
 上手く引っ掛かってくれて
 嬉しいよ。


 じゃ、頑張って。ね?》



と、言い残すとマイクをぶちっと切れる。


皆の肩に力が入るのがわかる。
ちなみに私は黄瀬君に引っ張られて
皆が背中合わせで作った円の中に。

守られている。といった感じ。
申し訳なさが込み上げる。


「どうやら、これが紫原っち達が
 言ってたやつっスね。」


「あぁ、たが教室だと勝手ながら思って油断してたぜ。」


苦虫を潰し様な顔で笠松君が言う。
「全くだ。」と森山君
「気持ちはわかるが気を抜くな」と
小堀君が注意する。

それもそのはず


来た方向からとそうでない方向から大量なゾンビが
挟み込むようにぞろぞろとこちらに来ているのだから。


「で、笠松先輩。作戦とかあるんっスか?」


皆、先ほど陽泉君が見つけてきた拳銃やライフルを
構えているものの
目の前の数には意味をなしそうにはない。

あと、早川君は何故か拳銃の数がないことが理由に
ボクシングポーズで構えているが、殴れるのだろうか?


「……ねぇ。」


少し考えるも、素直に答える笠松君に少し
笑ってしまいそうになる。
けっして笑える様な状況ではないが、知らず知らず
皆のことをどこかで信じているのかもしれない。


「ですよねー…。
 俺少し良いこと思い付いたんスけど。」

と黄瀬君からのまさかの提案。

「何だ黄瀬。珍しいじゃねぇーか。」と
笠松君も驚いている。


「紫原っちの話だと割りと多い数でも手榴弾で
 倒せたって言ってのを思い出したんス!

 だから、ちょっと危ないかもっスけど
 両サイドに手榴弾を、投げて

 教室に入るってのは……。」


なかなか、ワイルドな作戦であるが確かに
今の現状を考えるなら一番妥当かもしれない。


「なかなか、危ない方法だな。ななさん
 走れますか?」


森山君が、ちらりとこちらを振り向き
心配してくれている

力強くもちろん。と答えると
森山君は申し訳なさそうに笑う。


「異論は無さそうっスね。」と黄瀬君が言うと
黄瀬君が持っていた手榴弾を反対側にいた
小堀君にひとつ渡す。
「先輩、頼みますっス。」と
「ああ、もちろんだ。」と
そう話す彼らはとても素敵で。
黄瀬君はゆっくりとカウントを始める。

「3、2、1、」

手榴弾のピンをはずすと勢い良く黄瀬君と小堀君が
同時にゾンビに向かって投げ直ぐ様皆で教室に戻る。出来るだけ奥にいけっ!と
叫ぶ笠松君の声と共に
大きな爆音と爆風に襲われる。
教室の廊下側の窓が爆風により無惨にすべて
がしゃんと割れて教室内に降り注ぐ。

咄嗟のことで理解するのに時間がかかったが
黄瀬君が私を正面から抱き締め教室の奥に
転がり込む。


「いってぇ…。」と笠松君と森山君に続き
皆が立ち上がる。
教室が、かなりひどい状況だ。

黄瀬君が少し身体を離すと「大丈夫っすか?」と
私の肩に、少し触れる。
どうやら先ほど爆発と走ったことと相まって
止まりかけていた傷口の血がまた、少しずつ
出ていたようで。



『私は大丈夫!黄瀬君が庇ってくれたから!
 それより、黄瀬君は?大丈夫?』


「俺は大丈夫っス!意外とジャージ丈夫なんスよ!
 公式様だし!」とのこと。

どうやら、皆も怪我はない様だ。




prev / next

[ back to top ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -